読む日々

テーマばらばらの読書日記

鷺と雪

2010-05-07 | 
北村 薫「鷺と雪」を読みました。ベッキーさんシリーズ3部作のラストです。「ベッキーさんシリーズ」という呼び方は耳にしていたけど、もっと軽い内容かと思い手が出ずにいましたが、偶然図書館で前作「玻璃の天」がスッと目に入り、そのシリーズとは知らずに(図書館だと帯がないですから)借りて読んでみたら、すごくおもしろい!でも、背景等はわかったので、第1部は読まずに先に第3部を読んでみました。

読んでみて思った事は・・やっぱり第1部、読めばよかった

第3部のラストは2.26事件の幕あけで終わるんだけど、どうやら始まりは5.15事件の頃だったようで。英子とベッキーさんの物語ではあるけど、それと同時に日本が暗闇に向かっていく時相を描いている本でもあったんだな、と気付きました。

「玻璃の天」は、謎解き自体がおもしろくて、あまり気付かなかったです。が今回は謎の事件の方はかなり平和というか、どうってことなくて、時代や当時の上流階級のお嬢様の生態の方がよくわかっておもしろかったです。

実際あった歴史上の事実とか、現代も語られているジンクス(三越前のライオンに誰にも見られずまたがると受験合格・私が高校の頃、新潟でも流れてた)など、「本当のこと」が上手に背景となっていて、すごく興味深かったです。

前作と合わせて感じた事は、平和な上品な暮らしをしていた戦前の日本人が、本当にあと少しで天と地がひっくり返るような事態に遭遇する歴史の残酷さ、です。

不景気などは人々も実感としていただろうけど、まさか数年後に戦争がはじまり、東京まで空襲を受け、日本に二発も原爆が落とされ、敗戦、価値観が一斉に変わる・・なんて事を想像していた人などいないはず。

そう思うと、今、不景気だけを実感して生きている私たちの身の上にも、想像できない事態がそのうち起こってきたりして・・・とか考えると怖くなりました。

今回は前作と合わせて、でのおもしろさで、満足度90