「昭和二十年夏、女たちの戦争」 梯 久美子著
戦争当時に青春時代を送った5人の女性へのインタビューをもとに書かれた本です。
作家の近藤富枝さん、家事評論家の吉沢久子さん、女優の赤木春恵さん、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さん、
作家の吉武輝子さんの5名。
若い頃の日常が戦争、というのは想像がつきません。死が普通に隣にあるという感覚が、どれだけの物なのか、今の日本で暮らしていたら実感を持つ、なんていうのは不可能かと。
でもこの本を読んで、過酷ではあるけれども精一杯生き延びてきた女性達の人生が「本当の事」なんだな、と
想像ではあるけれどもある種の実感を持って迫ってきました。
当時は若い男性は全く残っていなくて、愛し愛されたい年頃なのにそれが叶わない、と近藤さんがおっしゃってます。それは不幸なことだ、と。確かに10代後半から20代の頃なんて、友人と会えば恋
の話ばかり何時間もしていたなあ、と思うと、その相手すらいない、というのは確かに不幸ですよね。
吉沢さんは医師の婚約者を戦病死で亡くし、彼の遺志を少しでも継ぎたいと、栄養学を学んだそうです。それが今の仕事に繋がっているって凄いです。新聞のエッセイも読んでますが、若々しい軽やかな文章を書く方ですよね。そんな辛い過去があったなんて。
赤木さんはもっと大変で、満州で終戦を迎えて、引き揚げの苦労を味わいます。幼い姪を亡くしたり、兵隊にとられていた次兄と満州で再会し、やっとの思いで連れ帰ったのにすぐに亡くなってしまったり。夫を亡くした義姉の再婚を後押しするために実家で甥を育てる決意をしたのに、義姉の再婚相手は亡くなってしまい、でも戻ってきても甥は実の母親には心を開けず、自分のせいだ、と苦悩したり。
緒方さんは終戦後から留学したりして、自分のペースで学問や仕事に力を注がれたようですが、戦争がなかったらどうだったのか・・。
吉武さんは一番読んでて辛かったです。ここにもちょっと書けないです。
戦国時代のお話もそうですが、どうしても男性中心の描かれ方が多い中、その裏には女性の人生にも多大な影響があるはずで、
そこにスポットをあて、なおかつ実際に修羅場をくぐりぬけてこられた方達の体験は とっても重かったです。
涙なくしては読めない本でしたが、読んでよかった。