読む日々

テーマばらばらの読書日記

いつか陽のあたる場所で

2010-08-18 | 
乃南アサ「いつか陽のあたる場所で」

連作短編集です。刑務所から出所した29歳の芭子と41歳の綾香を中心に巡る物語。

芭子はいいお家のお嬢さんだったのにホストにいれあげ、お金を作るために昏睡強盗を繰り返しつかまり、7年の刑期を終えて家族から絶縁され、亡くなった祖母が住んでいた谷中の古い一軒家で生活を始めます。

刑務所で親しくなった綾香は、夫の10年に及ぶDVを耐え出産、しかしその子供に危害が及びそうになった時、とうとう夫を殺害してしまい、5年の刑期で出所。

どちらも、出所後は独りぼっち。近くに住み、二人で支えあって暮らしています。

その中、ご近所の頑固じじい夫妻や地元の警察官などがおせっかいながらも親身になってくれたり、芭子は家族とのやり取りで傷つきながらも、自分が家族を失ったのではなく、家族が娘であり、姉を失ったんだ、と気付いたり、心境の変化も順を追って描かれています。

江戸を舞台にした人情物の短編集の現代版、といった感じで、おもしろかったし、続きがあればぜひ読みたいです。

満足度80

ソウルで逢えたら

2010-08-17 | 
松岡圭祐「ソウルで逢えたら」

有名な作家さんなのに、今回が初読です。

一言で言うと「おもしろかった」

闇金に800万の借金を作ってしまった明恵が、何故か韓国に職を求めて赴き、そこで架空のアイドルの身代わりをさせられます。

その真相が推理小説っぽかった位で、あとは主人公の成長物語と読めました。

韓国の慣習等、そこここにちりばめられていて楽しかったです。
一度、行ってみたいな・・。

あと、明恵と母親、明恵と息子(小1)の、韓国の芸能事務所社長とその娘の親子の愛情にもホロリとさせられました。

満足度80

ビッグベビー

2010-08-16 | 
「ビッグベビー」沖藤典子

題名から想像した通り、介護のお話でした。

この作者の方は、働く女性に向けたノンフィクション作家じゃなかったかな、若い頃、よく著書に気持ちを救ってもらった記憶が・・とあとがきを見たら、やはりノンフィクションで、女性問題、介護問題をテーマにされて来て、取材で知った事を小説の形にしてみた、とのこと。

主人公は東京に住む60代の女性。北海道で父亡き後、長男夫婦と暮らしてきた母が、長男を早く亡くし、今回長男の嫁が急死したことで、92才の母親をどうするのか、から始まるストーリーです。

長男夫婦の子供(主人公の姪)は、祖母を押しつけてきた叔父叔母のせいで母親が早死にした、とかなり恨んでいるし、残った三人の兄弟もそれぞれ事情を押し付け合い、結局主人公が東京へ引き取ります。

またこの母親ってのが相当の人で。主人公は若い頃、理不尽な扱いを受けてて愛がないし、それぞれの言い分もそれぞれの立場から描かれてて、どうにもならない八方塞がり状態。
でも母親を引き取ったことで主人公は変わっていきます。

うちも8年前、姑が倒れて、結構バタバタしたりくやし涙を流したりした経験があり、とっても考えさせられました。
介護者に対して愛があるかどうかは大きいけど、愛があればあったで追いつめられていく人もいる事が読んでてわかりました。

12年前の本で、まだ制度が充実しておらず、我が家は介護保険制度後だったことが救いでしたが、そういった制度の事も主人公の夫を通して詳しく説明されていて、なかなかタメになりました。

ストーリーもリアルで無理がなく(さすがノンフィクションの方です)とってもよかったです。

満足度85

絵本3冊

2010-08-15 | 絵本
「はちこう<忠犬ハチ公の話>」いしだ たけお え/くめ げんいち ぶん

言わずと知れたハチ公のお話。先日、ハリウッド版をテレビでやっていて、そういえば去年、息子と観に行って二人で泣き、勢いで20年前の仲代達矢が上野教授役をやった時のDVDも買って(20年前も、映画館で観たんですけど)また大泣きした事を思い出していたところに図書館で目に入ったので息子と読みました。絵の場面場面が仲代版の映画の場面を彷彿とさせるので、ちょっとウルっと来ました。子供にハチ公を教えるにはちょうどいいボリュームです。子犬時代のハチ公が可愛過ぎ。満足度80

「なくなったあかいようふく」村山籌子 作/村山知義 絵/村山亜土 再話

戦前の作家さんと絵描きさんご夫婦が書いた本書の原画が2000年に見つかり、息子さんが「母ならこう書いただろう」とお話を再度作ってできあがった本とのこと。

にわとりさんが買った赤い洋服がなくなり、犬の探偵が調査、最後見つかってめでたしめでたし、というお話ですが、絵がとーーーっても いい感じです!古い感じは一切なくて、にわとりの描き方もおもしろいし、洋服もいい感じ。電話が昔の壁に向かって話す電話機なのが時代を感じますが、それもまたいい味が出ていて。この画のポスターとかあるなら買いたいくらいでした。お話もおもしろかったです。満足度85

「ピーターの浜べ」サリー・グリンドレーぶん/マイケル・フォアマンえ/川島亜紗やく

あとがきやら説明やらがなく、舞台がどの国かよくわからないですが、たぶんイギリスで。
タンカーが座礁して、ピーターが大事にしていた浜辺が重油でメチャメチャになったのをお父さんやボランティアの人と水鳥を洗ったりして綺麗にします。綺麗になった後も、石投げをしようと石を掴むと手に黒いヌルヌルがついたりして・・という、もしかして実話?と思えるようなお話。子供が海が好きなので、海に関係する物語をよく借りてます。これは、文明社会は大変なことも起こるけど、でもそれもまた人々が力を合わせて出来る限りの事をして乗り越えましょうね、という教訓話、なのかな意図はよくつかめなかったです。満足度70

ラブリー・ボーン

2010-08-12 | 
アリス・シーボルト著/片山奈緒美=訳「ラブリー・ボーン」

隣家の男にレイプされ殺された14歳のスージー・サーモン。
天国から家族や、ボーイフレンドや友達や犯人や警察を見守り、それを見守りつつ(死んでるけど)心が成長していくスージーの視点から語られる物語。

ちょっと前に読んだ「青空のむこう」とよく似ていました。でもこっちは大人向け。

スージーが亡くなった後の家族の崩壊っぷりと再生の様子が胸にずきずき突き刺ささります。そして自分だけが取り残されたように感じてしまうスージーの心もせつない。

母親は担当刑事と不倫した挙句、たぶんそんな自分を許せなくて家出しちゃうんですが、こう書くと「最低」な母親に思えますよね。でも、母親の気持ちもすごくよくわかって、涙・涙です。

父親の、家族に対する深い深い、とっても深い愛情には、また文句なしに涙ですし。

犯人以外は悪人がいないお話でした。

解説が斉藤由貴で、それもびっくり。そしてそこで語られてますが、作者の方は実際のレイプ被害者だそう・・。

「生きる」って事、「家族」って事、「死後の世界」について、色々考えさせられました。

満足度90