ゴールデンウィークはどこも大変なにぎわいでしたね。
せっかくの長い休みも、行楽地へ遊びに行って、
くたくたにくたびれた方もたくさんいらっしゃることでしょう。
こんな時はゆっくり音楽を聴きながら一息つくと疲れも癒されます。
さて今回は一風変わった絵葉書を紹介いたします。
荒城の月,赤とんぼ、月の砂漠……
今でも教科書に載り、誰もが一度は耳にしたことのある歌。
どこか懐かしさを感じさせる歌曲が、大正時代にいくつも誕生しました。
当時はラジオがようやく顔を出した頃で、
テレビなんて影も形もありませんでした。
現代のマスメディアの代わりに、活躍していたのが絵葉書です。
絵葉書はただ単にイラストを印刷するだけでなく、
世間を賑わせた事件や流行中のものなど、
常にホットな話題をいち早く取り入れました。
絵葉書は臨場感溢れるイラストや写真を通して、
情報を発信する役割も担っていたのです。
その中に、流行歌を発表する絵葉書がありました。
エプロン・手鏡
「流行歌絵葉書」と呼ばれるこの絵葉書には、
たいてい繊細で少し寂しげなイラストが描かれました。
流行した哀愁漂わせる歌詞にぴったりな、
抒情画が好まれたのです。
そのため実に多彩な作家が、
流行歌絵葉書に取り組んでおりました。
たとえば、今でも歌われ続けている、
有名な「ゴンドラの唄」という歌曲があります。
大正4年に誕生したこの歌は当時から注目度が高く、
夢二を始め様々な作家の手によりヴィジュアル化されました。
夢二
ゴンドラの唄
戻らぬ時間を懐かしみ、時には悔いるこの繊細な歌は、
一世風靡していた抒情画にピッタリな題材だったのでしょう。
どのイラストも美しいイメージで描かれております。
さて、大勢の人々が手掛けた
流行歌絵葉書にも、代表する作家がおりました。
流行歌絵葉書の中で一番中心に活動していたのが、
山田まがねという抒情画家です。
まがねは「月刊まがね画集」という、流行歌を中心とした絵葉書セットを
実に60種以上も刊行し続けた、流行歌絵葉書の大御所でした。
まがねが特に力を注いだのは、当時輸入された歌曲を和訳したものや、
クラシックに日本の歌詞を創作したものを紹介することでした。
山田まがね
ピアノをひく少女・2
西洋で歌われたものをあえて日本に舞台を変えて、
その感傷的な傷つきやすい内面を
繊細な線によって表現したのです。
歌詞のイメージをより分かりやすくしたことで、
人々の心を掴んだのでした。
現代では歌番組が始終流行を紹介し、
曲をイメージしたビデオクリップが
町中いたるところで流れています。
今や音楽は聴くだけでなく、テレビなどを通して
見て楽しめることも大事な要素になりました。
流行歌絵葉書は音楽と視覚的イメージの融合を試みた
先駆者といえるかもしれません。
さて、次回も素敵な絵葉書を紹介します!
お楽しみに!!
次回は6月5日の予定です