戦前の少女たちの憧れと夢が詰った雑誌『少女の友』。
少女雑誌の金字塔ともいえるこの雑誌では、
当時を代表する挿絵画家が多数活躍しておりました。
その中で松本かつぢは、中原純一と肩を並べる
人気挿絵画家だったのです。
聖夜
当時流行りのイラストといえば、
おしゃれで色鮮やかな衣装に身を包み、
繊細で夢見がちな様子の美しい少女の姿でした。
かつぢの描く少女は、柔らかな線と丁寧な描写された画で好評でした。
しかし叙情画のスターであったかつぢは、
次第に叙情画以外の絵も描きたくなったそうです。
叙情画の繊細な美少女は表現の制限があり、
画家の思うようにかけないという欠点がありました。
そしてかつぢが生み出したのが、「くるくるクルミちゃん」です。
「くるくるクルミちゃん」は大きなリボンをつけた
おしゃまな女の子が主人公の漫画で、叙情画とは打って変わった
ユーモラスで明るいキャラクターです。
クルミちゃん
子猫とピアノ
二頭身の可愛らしい風貌に当時の少女たちも、
「可愛い!」と歓声を上げたことでしょう。
あっという間に人気キャラクターになり、
まんがの連載は30年以上、グッズも多数販売されました。
当時の雑誌の付録を見ても豊富な種類のクルミちゃんグッズあり、
人気の程を窺い知ることができます。
絵葉書も多数発行され、クルミちゃんもどきの
コピー商品まで出回るほどでした。
その後の活躍は雑誌だけにとどまらず、
絵本やベビーグッズのデザインまで手がけるようになったのです。
クルミちゃん
人形と鳩時計
かつぢの大胆な路線変更のおかげで、
キャラクター人気のはしりともいえるクルミちゃんが誕生したのです。
自分の絵を通して人々に笑いと喜びとを届けたいと思っていた彼の願いは、
彼の才能と努力と共に実を結んだのです。
次回も素敵な絵葉書を紹介します。
お楽しみに!
次回は11月5日の予定です