今年は去年にまして一段と熱い気がします。
肌を少しでも守るために、日傘を常に携帯する姿が、
どこへ行っても見かけるようになりました。
さて滑稽新聞絵葉書世界は
実にバラエティ豊かな30枚のイラストで構成されています。
美しいもの、滑稽なもの……
どれを手に取っても一朝一夕では培われぬ、
プロの技がしみ込んでおりますね。
それもそのはず。
その殆どは仕事の減った浮世絵師や
美人画家たちよる、アルバイトだったそうです。
明治になって浮世絵は少しずつ廃れていき、
絵師たちも生活してくために
新聞雑誌の挿絵の仕事を手掛けるようになりました。
宮武外骨は浮世絵の関心も深く、雑誌も文だけなく
ビジュアル面での面白さも必要だと考えておりました。
そのため多くの絵師に協力を頼み、
読むだけでなく目も十分楽しませる
娯楽雑誌を創り出したのです。
屋形船で芸者遊びとは
うらやましい
とはいえあくまでアルバイトのため匿名での掲載が多く、
詳しい経歴も本名もわからない者が殆どです。
その中で有名な竹久夢二と、
正体不明の画家・墨池黒坊を紹介いたしましょう。
待ちかね
竹久夢二はこのブログでも何度か登場し、
大正ロマンを代表する画家として、
今でも大変な人気があります。
この絵葉書では待ち顔の女学生が
はやる気持ちを抑えて、ベンチに腰掛けております。
夢二独特の和風美人が抒情的で、素朴な魅力に溢れています。
こちらは明治に『滑稽新聞絵葉書世界』
にて発表されたイラストです。
当時すでに彼の描く挿絵が
あちこちで話題になり、注目を浴びておりました。
その後彼は大正の抒情画と結びつき、
押しも押されぬ人気芸術家となりました。
墨池黒坊・座れる美人
一方、大胆で鮮烈な構図と繊細でインパクトのある色彩。
日本伝統の浮世絵の中に、洋風の匂いを
漂わせる作風で強烈な印象を残す絵葉書があります。
墨池亭黒坊の絵葉書は、『滑稽新聞』にてデビューし、
たちまち人気画家となった浮世絵師です。
色黒だったことから黒坊と名乗った彼は謎に満ちております。
墨池黒坊・燈火可親
デザインセンスや確かな技術力を持ち合わせているのは
一目瞭然ですが、特定する本名も経歴も一切不明。
彼の正体はまさにペンネーム通り、墨で真っ黒に
塗り潰されたかのように分からないのです。
しかし浮世絵の伝統と西洋的な感覚が融合した、
彼のユーモアと美意識に溢れるイラストは、
見るものに強烈な印象を与えます。
現代のわたしたちが見ても斬新な絵葉書は、
明治のハイカラを代表するデザインと言っても過言でないでしょう。
さて次回も素敵な絵葉書を紹介いたします。
お楽しみに!!
次回は8月7日の予定です