最近雨が多くなりました。
梅雨らしいしっとりとした空気が漂うようになりましたね。
さて今回から数回にわたって、
芸術的でありながらユーモアもたっぷりな、
滑稽新聞絵葉書世界の魅力に迫っていこうと思います。
馬の図
滑稽新聞は明治時代に
宮武外骨なる人物が発行した新聞です。
それはただの新聞ではなくヒネリを利かして、
面白可笑しく編集した記事をたくさん載せていました。
ブラックジョークのきつい内容でしたが、
逆にそれが大変な話題を呼んで大成功しました。
そして当時は絵葉書がブームになりはじめた頃。
絵葉書の可能性に目をつけた宮武外骨は、
滑稽新聞の別冊として
『滑稽新聞絵葉書世界』を創刊しました。
この雑誌は美しいカラー印刷の
イラストが30枚掲載されており、
それら全てが切り離して絵葉書として使えました。
絵葉書世界第15集
もちろん普通の絵葉書ではなく、独特のユーモアセンスにあふれており、
一言では言い表せられない魅力で溢れています。
大胆な構図と色彩で描かれたイラスト、
美しい浮世絵美人、斬新なデザイン画……
そしてお得意のブラックジョークをきかした、奇抜な絵葉書がありました。
百聞一見に如かず。まずはこの絵葉書をご覧ください。
鬼外福内 鯉の飛躍
こちらの絵葉書は二つとも滑稽新聞絵葉書世界です。
まず左の絵葉書を見ますと、
鬼の面の内側がお福さんになっていますね。
豆まきのかけ声である“福は内、鬼は外”を
そのままイラストにしていることがすぐ分かります。
直球な解釈を真面目なふりして、
ふざけて描くところが何とも可笑しいと思いませんか ?
そしてもう一つの絵葉書をご覧ください。
こちらは黒地に鮮烈な赤色の鯉が滝登りをしています。
とても明治とは思えないモダンなデザインは
現在も通じるものがありますね。
このような荒唐無稽と前衛アートが
両隣に存在する稀有な絵葉書雑誌でした。
これはひとえに編集者たる宮武外骨が大変な趣味人であり、
ユーモアと美意識を兼ね合わせた彼の人柄に、
有名無名に関わらず様々な人物が手を貸したことで誕生しました。
そのおかげで他には類を見ない、
バラエティ豊かな雑誌として存在することになりました。
さて次回も、滑稽新聞絵葉書世界を特集いたします。
お楽しみに!
次回は7月3日の予定です