蝉の鳴き声が賑やかですね。
雨上がりのムッとした熱気が、
いかにも日本の夏らしいです。
さて今回はいよいよ滑稽新聞の中枢とも言える、
お色気ギャグとアートについてお話いたします。
滑稽新聞は皮肉とユーモアを持ったコメントと挿絵で、
権力や世論を茶化して記事を盛り上げておりました。
その茶化し方として、人が恥ずかしがるお色気を選んだのです。
お色気好き、というとやはり世間的にあまり良い印象を持てません。
特に明治時代は道徳的配慮に大変厳しかった時代であります。
しかし彼はわざとお色気を好きだと公言して、
世間が驚く“癇癪と色気”を題材にした雑誌を刊行したのでした。
尻の衝突 なべぞ画
取り澄ましている人々の鼻を明かして、
雑誌を面白おかしく演出したかったのでしょう。
至る所にお色気や笑いをちりばめておりました。
そのため記事のネタになった人から顰蹙を買いました。
彼は名誉棄損やその他諸々の罪状で、何度も控訴されたのです。
ですが同時に様々な人々から高い支持を得ておりました。
雑誌の増刊号だった絵葉書世界にも、ナンセンスギャグがたくさんあります。
横町の評判娘
例えばこの床屋で髪をセットしている女性。
一見何てことはない普通の後ろ姿です。
しかしよく見ると右端から男の手が伸びて、娘の項をそっと撫でています。
よくある風景を一部切り取るだけで、フェチズムを感じさせる一枚です。
電車の釣革 なべぞ画
こちらはさらに冗談がきついもの。
電車の中で一人の美人が、釣革につかまっています。
周りの男たちは掴まるふりして、彼女に触れようと手を伸ばしています。
澄ました美女と男のちょっとヤラシイ顔がとても面白いですね。
また大人気だった理由は、単なる色物雑誌だっただけではありません。
笑いと色気を支えた挿絵には、芸術センスも溢れていたからです。
夏座敷
編集者であった宮武外骨が、世に蔓延る不正や権力に憤慨していました。
しかし同時に芸術を鑑賞して楽しむ心があったのです。
彼は芸術や骨董品の含蓄も深く、専用の情報誌まで作るほどでした。
そして彼は古いものだけでなく、新しいものにも積極的でした。
当時流行だった絵葉書のコレクターでもあったのです。
絵葉書の芸術性と面白さを熟知した彼だったからこそ、
個性的でハイセンスな絵葉書雑誌を世に送ることができたのでしょう。
*お知らせ*
絵葉書資料館にて新しい企画展を開催致します。
◆滑稽新聞『絵葉書に秘められた世界』展 ~明治時代の粋なアート~◆
開催期間は、平成21年9月3日~12月26日です。
滑稽新聞絵葉書世界の素敵な絵葉書が沢山展示する予定です。
お近くに来られた際には是非お立ち寄り下さいませ。
さて次回も素敵な絵葉書を紹介いたします。
お楽しみに!
次回は9月4日の予定です