前々ブログで紹介した『しのぶちゃん日記-目が見えなくても、みんなといっしょ』を購入したのは出版年の1981年のことでしたが、口絵の写真頁(宮原洋一撮影)を眺めただけでどうやら丁寧には読んでいなかったようです。読了すれば本の末尾に読んだ日付と簡単な感想が記してあるはずなのにそれが何処にも見当たらないからです。
私は1972年に北区立滝野川第六小学校に新卒教師として着任しました。翌年の早い時期に雑誌『ひと』(遠山啓編集代表)が創刊され、わくわくした期待感を持ってそれを手にしたものです。『ひと』(現在廃刊)を出版したのが太郎次郎社でした。その冬休みには教師と親の教育講座「ひと塾」を太郎次郎社が開催したのです。私は意気込んでそれに参加しました。それ以来、太郎次郎社の出版する本はほとんど入手しました。その中の1冊に『しのぶちゃん日記』がありました。
■『しのぶちゃん日記-目が見えなくても、みんなといっしょ』平林浩、太郎次郎社、1981
■(ブックライブより)
障害をのりこえて学んでいくしのぶちゃんを囲んで、クラスの子どもたちもまた、ゆたかに育つ。彼ら三八名の二年間にわたる、授業を中心とした記録。朝日「天声人語」……教育の現場で日々、こういう心のこもった、ていねいな実践が続けられていることに敬意を表したい。
今回40年ぶりに通読して、これは凄い本だなとあらためて感心した次第です。けして手垢の付いた古びたものではなくて、現在まさに読み返す価値があり、教育の原点がここに秘められていると言っても過言ではない本です。現在この本を皆さんが手にすることができるかどうかわかりませんが、とりあえずブログを通して紹介したいと思います。
本は二部構成になっています。Ⅰ章は「子どもたちの四季」、Ⅱ章が「授業の中の子どもたち」。拙著『いちねんせい-ドラマの教室』(晩成書房、2005年)もⅠ章「学級づくり-こころとからだをひらく」、Ⅱ章が「授業のドラマ」です。つまり、教育実践記録を学級づくりと授業づくりの視点から捉えていることが共通していて、それは妙に納得できるのです。教師に求められるものは学級における人間関係づくりと毎日の授業を創る力量です。両者を同時並行で進めることによって教育は成立するものだと私は考えています。
「子どもたちの四季」というタイトルを見たときにすぐに思い出したのが鈴木孝雄著『一年生の四季』(草土文化、1977年)でした。孝雄さんは日本生活教育連盟(日生連)の実践的リーダーで、新卒時代に公私ともにお世話になった方です。妻の学年主任で、結婚式にも参列いただいたのですが、惜しくも若くしてお亡くなりになりました。
平林さんが勤められた和光小は日生連のメッカでしたので、孝雄さんとの実践の共通点は数多く認められます。そんなことからタイトルが似通ってきたのでしょうか。
『しのぶちゃん日記』を読んでこれは凄い本だと思ったところを列挙してみましょう。
・歩いて10分もかからない地域の小学校に入学を拒否された全盲の子を受け入れてくれたのは和光小でした。一時間半かけて通ったといいます。私立といえども一年生は38人学級、その中の1人がしのぶちゃんでした。
・平林さんは試行錯誤の連続で、1学期は実践の糸口がつかめず途方に暮れたといいます。実践上の困難さや悩みを率直に綴っています。名人芸を披露する実践記録ではありません。二年生の孫がこの本の目次を眺めて「しのぶちゃんはじゃまだ」と書いてあるのにびっくりしていました。「みんなは対等さを要求する」も読ませます。
・和光小の教師集団が平林実践を力強く支えています。和光教育は民間教育団体の粋を集めているようなところがあります。各教科のエキスパートの存在が実践を支えています。
・しのぶちゃんが描いたスイカやお話の絵が色鮮やかで素敵です。目の見えない子が字や絵をなぜこれだけかけるのか、その秘密が実践記録に詰め込まれています。
・写真は宮原洋一さんです。『ひと』の写真も数多く手がけた写真家で、子どもたちの表情を的確に捉えています。
・「劇をつくりあげる」実践も秀逸です。「ききみみずきん」(小池タミ子脚色)の劇づくりで子どもたちのこころとからだを躍動させています。
まだまだあげたら切りがない読みどころ満載の実践記録です。まだまだ図書館に所蔵されていると思いますので、是非手に取ってみてください。
現役の教師や教師を目指す人に読んでもらいたいと思います。そして自分だったらこうしたいと反問しながら読んでみるのもお勧めです。
私は1972年に北区立滝野川第六小学校に新卒教師として着任しました。翌年の早い時期に雑誌『ひと』(遠山啓編集代表)が創刊され、わくわくした期待感を持ってそれを手にしたものです。『ひと』(現在廃刊)を出版したのが太郎次郎社でした。その冬休みには教師と親の教育講座「ひと塾」を太郎次郎社が開催したのです。私は意気込んでそれに参加しました。それ以来、太郎次郎社の出版する本はほとんど入手しました。その中の1冊に『しのぶちゃん日記』がありました。
■『しのぶちゃん日記-目が見えなくても、みんなといっしょ』平林浩、太郎次郎社、1981
■(ブックライブより)
障害をのりこえて学んでいくしのぶちゃんを囲んで、クラスの子どもたちもまた、ゆたかに育つ。彼ら三八名の二年間にわたる、授業を中心とした記録。朝日「天声人語」……教育の現場で日々、こういう心のこもった、ていねいな実践が続けられていることに敬意を表したい。
今回40年ぶりに通読して、これは凄い本だなとあらためて感心した次第です。けして手垢の付いた古びたものではなくて、現在まさに読み返す価値があり、教育の原点がここに秘められていると言っても過言ではない本です。現在この本を皆さんが手にすることができるかどうかわかりませんが、とりあえずブログを通して紹介したいと思います。
本は二部構成になっています。Ⅰ章は「子どもたちの四季」、Ⅱ章が「授業の中の子どもたち」。拙著『いちねんせい-ドラマの教室』(晩成書房、2005年)もⅠ章「学級づくり-こころとからだをひらく」、Ⅱ章が「授業のドラマ」です。つまり、教育実践記録を学級づくりと授業づくりの視点から捉えていることが共通していて、それは妙に納得できるのです。教師に求められるものは学級における人間関係づくりと毎日の授業を創る力量です。両者を同時並行で進めることによって教育は成立するものだと私は考えています。
「子どもたちの四季」というタイトルを見たときにすぐに思い出したのが鈴木孝雄著『一年生の四季』(草土文化、1977年)でした。孝雄さんは日本生活教育連盟(日生連)の実践的リーダーで、新卒時代に公私ともにお世話になった方です。妻の学年主任で、結婚式にも参列いただいたのですが、惜しくも若くしてお亡くなりになりました。
平林さんが勤められた和光小は日生連のメッカでしたので、孝雄さんとの実践の共通点は数多く認められます。そんなことからタイトルが似通ってきたのでしょうか。
『しのぶちゃん日記』を読んでこれは凄い本だと思ったところを列挙してみましょう。
・歩いて10分もかからない地域の小学校に入学を拒否された全盲の子を受け入れてくれたのは和光小でした。一時間半かけて通ったといいます。私立といえども一年生は38人学級、その中の1人がしのぶちゃんでした。
・平林さんは試行錯誤の連続で、1学期は実践の糸口がつかめず途方に暮れたといいます。実践上の困難さや悩みを率直に綴っています。名人芸を披露する実践記録ではありません。二年生の孫がこの本の目次を眺めて「しのぶちゃんはじゃまだ」と書いてあるのにびっくりしていました。「みんなは対等さを要求する」も読ませます。
・和光小の教師集団が平林実践を力強く支えています。和光教育は民間教育団体の粋を集めているようなところがあります。各教科のエキスパートの存在が実践を支えています。
・しのぶちゃんが描いたスイカやお話の絵が色鮮やかで素敵です。目の見えない子が字や絵をなぜこれだけかけるのか、その秘密が実践記録に詰め込まれています。
・写真は宮原洋一さんです。『ひと』の写真も数多く手がけた写真家で、子どもたちの表情を的確に捉えています。
・「劇をつくりあげる」実践も秀逸です。「ききみみずきん」(小池タミ子脚色)の劇づくりで子どもたちのこころとからだを躍動させています。
まだまだあげたら切りがない読みどころ満載の実践記録です。まだまだ図書館に所蔵されていると思いますので、是非手に取ってみてください。
現役の教師や教師を目指す人に読んでもらいたいと思います。そして自分だったらこうしたいと反問しながら読んでみるのもお勧めです。