後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔751〕3日目、足を伸ばす人が少ない栃尾の雲蝶作品群、凄い彫刻が待っていました。〈雲蝶の旅 その5、最終回〉

2024年11月27日 | 美術鑑賞

   いよいよ新潟滞在最終日です。雲蝶の三大彫刻群を有する永林寺、西福寺、本成寺を堪能し、さて最終日は二,三箇所寄り道をして、早めに帰途につこうと思っていましたが、大きく予定を変更する事態が起こってしまいました。素晴らしい雲蝶作品群に出会ってしまったのです。

  まずは栃堀区事務所に電話連絡し、神社の入口を開けておいてもらうことになりました。貴渡神社(長岡市)へ直行です。
  地元の大きな神社ではなく、小ぶりの可愛らしい神社が目差す所でした。風雨から庇護したり、外部の人が入れぬように囲われていました。
  向拝の獅子や貘や龍、手挟の松の枝に停まる鳩と雀を見て、素人ながら、これは充実期の雲蝶の作品に違いないと直感しました。さらに素晴らしいのが「桑負いから機織りに至までの様子」です。優雅な曲線を多用した心温まる庶民の暮らしが活写されています。後期ゴシック彫刻の作家、ダニエル・マオホを想起させます。


  明るい日差しの中で、2人で舐めるように撮影させてもらいました。
  栃堀区事務所にお礼に出向くと、区長さんがいらしていろいろお話をうかがうことができました。その時にいただいたチラシを紹介しましょう。

  次に向かったのは、同地区の曹源寺でした。こちらも電話で連絡し、快く迎え入れてくれました。ご住職にご挨拶した後、お連れ合いが実に丁寧にいろいろ教えてくれました。
 広い畳敷きの間に欄間が8箇所ぐらい、そのうち2箇所は雲蝶作、他は小林源太郎作で、内陣には他の作家の作品もあまた掲げられています。
  東京出身のお連れ合いと親しく話を交わしました。贅沢な時間を共有できました。

  最後に向かったのは、秋葉三尺坊奥の院。
  雲蝶は烏天狗の3枚、源太郎が他の彫刻を担当した共同制作といわれています。金網に囲われているため、撮影は難しいのですが、いつの日か、許可をいただいて、入口の鍵を開けて中に入り、写真を撮りたいものです。
  紛う方なき雲蝶の代表作に違いありません。

  予定よりだいぶ遅れて帰途につきました。
 資料を読み直し、訪問し損なった社寺に気がつきました。
 次の国内旅行は、春頃、新潟から会津方面になりそうです。


〔750〕2日目、雲蝶最初の逗留地、本成寺とその塔頭、さらに五十嵐神社を巡りました。〈雲蝶の旅 その4〉

2024年11月27日 | 美術鑑賞

  越後路2日目、まずは開館直後で入館者無人の十日町市博物館に立ち寄り、国宝の火炎土器などを心安らかに堪能することができました。民宿のご主人の推薦の博物館でした。
  そしていよいよ本成寺(三条市)へ向かいます。
 雲蝶が江戸から最初に向かったのは本成寺でした。ここに長期滞在し、本成寺とその塔頭に多くの作品を残しています。残念ながら本成寺の作品はほとんどが灰燼に帰してしまいました。しかしながらその塔頭には多くの作品が現存していると聞きます。

  紅葉真っ盛りの越後路をマイカーで順調に走ります。


  黄葉が敷き詰められた本成寺境内にしばし佇みましたが、一転、拝観中止の掲示に我々は落胆するのでした。しかしここは元々焼け残った赤牛だけの拝観とか、それで500円とはなんでなのでしょう。たぶん他に見どころがいっぱいあるに違いありません。
 ならば気を取り戻して、雲蝶の墓を探すしかありません。しかしこれが難儀でした。ドイツのニュルンベルクでファイト・シュトースの墓探しの困難さを思い出しました。
  親切な寺の受付でヒントをもらい、ようやく探し出しました。

 はてさて、ここからが我らの旅の醍醐味、『越後の名匠 石川雲蝶』(木原尚)を頼りに6つの塔頭を巡ります。外観は自由に拝観可能という所が多く、感謝しながら撮影させてもらいました。「要連絡」のところは、意を決して、ラジオ深夜便で好評だった緑に門前で電話してもらいました。「東京から雲蝶作品を拝観しに来たのですが、拝観は可能でしょうか。」というのが電話のポイントです。
  ファーストアタックの蓮如院で「軌跡」が起こりました。快く迎え入れてくれた座敷には猿の置物と雲蝶の位牌が鎮座していました。撮影もオーケーということで感激しながらカメラを構えました。わずかですがお布施をして寺を後にしました。


 要住院は作品が出展中、青蓮華院は所在がわからず、蓮如院、静明院、久成院、本照院は訪れる人もなくゆったりとカメラを構えました。どこでも、雲蝶の技の冴えに圧倒されるばかりです。

  本成寺近辺では観光客らしき人に出会ったのは1人の男性と2人組の女性だけでした。穏やかな日和に充実感いっぱいの我ら2人でした。
  余勢を駆って同じ三条市の五十嵐神社に向かいます。近くの駐車場に車を止めて、急な坂を上って五十嵐神社に辿り着いたところ、明かりは付いているものの誰もいません。開け放した堂内に入るも雲蝶作品は見当たりません。しかし、よく見ると、壁のかなり上の方に3枚の欄間彫刻が見つかりました。獅子と鳳凰でしょうか、あとは暗さも手伝ってしかとは確認できません。

  しかし、満足してホテルルートイン見附に向かうのでした。

  2000年になってからの国内古寺古仏巡り、さらにはドイツを中心とした後期ゴシック彫刻巡り、そして今回の雲蝶巡り、それぞれに共通する出合いの新鮮さ、私たちを興奮させる何物かがあるなあと実感するのでした。