エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

水たまり

2017年11月24日 | ポエム
にはたずみ・・・である。
俳句の世界では「にはたずみ」と云う。
漢字一文字で表記できるのだけれど、このパソコンではさっと出てこない。
おそらく、標準が違う。
検索すれば出てくると思うけれど、面倒なのでやめる。
因に、今ぼくが愛用している「ポメラ」ですらさっと変換できた。



水たまりに映る世界は、逆さまだ。
だから、次元の違う世界だと錯覚してしまう。

水たまりは、鏡ではなく異次元への入口。



念ずれば、無き母にも会えるかもしれない。
会いたくなると、ぼくは星空を見上げる。

ぼくが勝手に決めた「母の星」があるからである。







「深落葉その下にあるにはたずみ」







次元が違うと云う事は、溜まらなくロマンでもある。
じっと、いつまでも眺めていたいのだけれど・・・。
「変なおじいさん!」と見られてしまいそうで、少し日和ってしまう。

齢を重ねてしまったら、もう人目は気にしなくてよいのだと思うけれど。
男の子の性分が何処かに残っていて、恰好をつけてしまう。



居住まい、どころではないよね!
にはたずみ・・・美しい語感である。

今日は句会の日。
主宰の手ほどきを頂ける、月一回の貴重な日である。


     荒 野人

柿簾

2017年11月23日 | ポエム
朝方、ぼくの部屋から吊してある柿がシルエットで浮かんでくる。
朝の陽射しの凛冽さが、柿を生き生きと映すのだ。

ぼくの机は、本と書類と・・・書きかけの原稿と、そして句帳で溢れている。
従って、朝方の凛冽の光の中でしかお見せできない。



そろそろ、干し始めて10日を過ぎる。
吊るし柿らしくなっている。

もう、優しく揉んであげないと変に堅く干し上がってしまうらしい。
で、家人がほしものの後に優しく揉んでいるらしい。







「朝の陽や色まで透す柿簾」







朝方の光の中で、一人じっとしていた。
句が下りてきたのだけれど、上等な句にはならなかった。

今日は夕方、富士山を見に出かけようかと思っている。
ビルの狭間から見える富士山は、大きく見える。

それが楽しみである。


     荒 野人

柊の花

2017年11月22日 | ポエム
ひひらぎの花、である。
ひそ、と咲いているのである。



今年は、あまり咲いていない。
なんとも素晴らしい匂い、がする。



とりわけ、この木は花の付きが悪い。
かなり大きな木だったけれど、花はほんの数輪だった。

そうだとしても、ぼくは納得していたのだけれど・・・。
帰宅途中、とんでもなく花の多い柊と出会ってしまった。



これである。
匂いが突然鼻孔を襲ってきた。

それはそれで、嬉しい。







「ひひらぎの何を憚りしんと花」







今年もひひらぎの花と出会えた。
その嬉しさが、何よりも心を軽くする。
足元の軽さも加わって、ぼくはうきうきと帰宅したのであった。



      荒 野人

秋の終わりに

2017年11月21日 | ポエム
この歌を聞きたくなる・・・それが秋。
いままで、何人かの「落葉松」をアップしてきたけれど・・・。



下村雅人氏のこの曲は素晴らしい。
伸びやかな声、好きなテナーだ。





下村 雅人  "落葉松"  真島 圭(ピアノ) 野上 彰 詩/小林秀雄 曲






小林秀雄氏のこの歌は、からまつを余すところ無く歌い上げている。
その感性は流石、である。



この感性から、現在の音楽会を背負う逸材が育った。
さもありなん!
である。







「しんとして秋の終わりの昏き森」







誰も、この秋の終わりを止められない。
それが良い。



この道を歩いた。
ちゃんとした道ではないけれど、放牧牛を追う人たちが歩く。
深くへと進む場合、車も入ってゆくらしいのだ。

轍の跡が、目に眩しいのである。
でも・・・本当はこの道は歩いてはならないのだ。
迂闊の深い森に入って、熊にでも出会ったら大変である。
去年は、八ヶ岳の麓でも熊が出没したのである。

冬の厳しさこそが、人を覚醒させる。


      荒 野人

石蕗の花

2017年11月20日 | ポエム
石蕗の艶艶とした葉の青さ。
なんと云う事も無い花だけれど、季節を鋭く告げる。



痛くはないけれど、切り込むように知覚させてくれる。
そうした存在感が、石蕗の花にはあるのだ。







「石蕗の花深き森から風の来る」







印象としては日陰に咲く花だけれど、実は陽射しを浴びている姿は美しい。
葉と茎を、こっそりと頂いて川を剥き・・・。
そしてあくを適度に抜き・・・。
秘めやかに、食してみたい。



そんな物好きがいても良い、でしょう!
石蕗の花を、よくよく眺めてみると良い。

素晴らしく、寒風に抗している。


    荒 野人