蜜柑が食べられることもなく「たわわに実って」いる。
家の近くである。
このまま春を迎え、また冬に向かう。
例年の習いである。
蜜 柑
季節はずれの蜜柑が夕陽を照り返している
誰がもぎ取るわけでもないのに
こうして実をたわわにつける
鳥も食べず
人も食べず
だがしかし
豊かに実りの季節を迎え
人知れず終わりを告げる蜜柑
見向かれない寂しさをひっそりと
たたえて
蜜柑は孤高の精神を満腔に詰め込んで
夕陽を照り返すのだ
蜜柑は恥ずることもなく
決して怯(ひる)まない
蜜柑の孤高の精神は
誰も気づかない
誰も一顧だにしない
それでも蜜柑は
蜜柑であって
美しい唇に齧(かじ)られることを渇望している
誰も食べようとしない蜜柑にこそ
美が在って
甘美な時間をたたえている
それは
まるで時空を閉じる瞬間のように
今日昼ごろの雲である。
冬の雲ではないような・・・。
ところで、この蜜柑いつもある夜に掻き消える。
誰が収穫しているのか、それは知らない。
公然の秘密である。
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荒野人
家の近くである。
このまま春を迎え、また冬に向かう。
例年の習いである。
蜜 柑
季節はずれの蜜柑が夕陽を照り返している
誰がもぎ取るわけでもないのに
こうして実をたわわにつける
鳥も食べず
人も食べず
だがしかし
豊かに実りの季節を迎え
人知れず終わりを告げる蜜柑
見向かれない寂しさをひっそりと
たたえて
蜜柑は孤高の精神を満腔に詰め込んで
夕陽を照り返すのだ
蜜柑は恥ずることもなく
決して怯(ひる)まない
蜜柑の孤高の精神は
誰も気づかない
誰も一顧だにしない
それでも蜜柑は
蜜柑であって
美しい唇に齧(かじ)られることを渇望している
誰も食べようとしない蜜柑にこそ
美が在って
甘美な時間をたたえている
それは
まるで時空を閉じる瞬間のように
今日昼ごろの雲である。
冬の雲ではないような・・・。
ところで、この蜜柑いつもある夜に掻き消える。
誰が収穫しているのか、それは知らない。
公然の秘密である。
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