![]() | ノルウェイの森 下 (講談社文庫) |
村上 春樹 | |
講談社 |
村上春樹 著 : ノルウェイの森(下)
を、読みました。再読
主人公の僕の喪失感は、癒える事はなかった。
死んだ親友の恋人だった直子も
僕との恋に溺れる事なく、病に蝕まれてゆく。
同じ学部の変わった女の子、緑との時間に生気を取り戻しながらも
簡単に癒えることのない心の傷を抱え
僕は大人の階段を、少しづつ登って行く。
30年ぶりの再読。
ぶっちゃけ、ほぼ初めて読んだと言っていい作品だった。
30年の間に、実は加筆しまくっていて、オリジナルからは
全く離れた違う物語になってしまったんじゃね?と訝しむ程に新鮮だった。
30年前の私は、まだまだ幼くて
主人公の僕にイライラしていたのを覚えている。
バリバリ文系のお坊ちゃんで、理屈っぽくって、スカしてて
みんながよく言う、ハルキのスタイリッシュな文体って
こういう、イライラする文系男の物言いの事を言っているんだと思っていた。
そういう目の前にいたらイライラしそうな、自分と同じ年の男の恋の物語なんかに
全く興味が無かったけど、一世を風靡した大ベストセラーだったし
仲のいい友人が大絶賛で貸してくれたので、頑張って読破した。
まだまだ子供で、この本を面白くないよって、沢山の人に言ってゴメンねハルキ。
主人公の僕は相変わらずスカした野郎だったけど、大人になった今では
理屈っぽいのは、どちらかというと理系男子だって知っているし、
彼も幼いだけで、それ程悪い奴でもなかった。
ワタシも僕もまだ子供だったんだね。
30年前から、何も変わってない物語を読んで
自分がこんなに変わった事を知るって、なんだか不思議な気分。
だからやっぱり、本は読み続けた方がいいんだな。
最近読まなくなってて、コレはやっぱりいかんな。
明日読む物語を、散々にこき下ろしても、
77歳のワタシは涙を流して読むかもしれない。
何十年か生きてて、変わらないつもりでいる自分の、
変化のバロメーターにも読書はなり得るのだな。