カワトンボについて
県立生命の星・地球博物館主催の「最新のカワトンボ属の分類について」という講座に参加してきました。
今まで1種とも2種とも4種とも言われていたものが、DNA解析と外部形態の比較から2種(ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボ)に区分されたとのことです。
また、伊豆半島~富士山北部にかけては両種の中間的要素を持つ、交雑由来と考えられる一群(種としてはアサヒナカワトンボ)がいるそうです。
この3つのグループを見た目で区別することはとても難しいです。
成虫の場合、関東ではもともとヒガシカワトンボとよばれていたものなので大きさに差はありません。
縁紋の大きさや翅先の丸み(具体的には不明)が違うのですが、見せていただいた標本ではわかりませんでした。
また、ヤゴの場合は尾鰓で見分けます。
先端が三角形状に尖がって突出するのがニホンカワトンボ、わずかに突出し丸くポチとしているのがアサヒナカワトンボ、その中間的なのが交雑由来群です。(言葉では伝えにくいです。)
生態的な比較では交尾直後にアサヒナカワトンボは翅を開きますがニホンカワトンボは開かないそうです。
喜ばしいことに県内にはこの3つのグループが生息しています。
教えていただいた県内分布にストック画像を当てはめてみました。
ニホンカワトンボ? オス 橙色翅型 2004年4月30日 神奈川県
アサヒナカワトンボ(交雑由来群) オス 橙色翅型 2006年7月3日 神奈川県
ニホンカワトンボ オス 透明翅型 2006年5月29日 神奈川県
アサヒナカワトンボ(交雑由来群) オス 透明翅型 2006年6月29日 神奈川県
アサヒナカワトンボ? オス 透明翅型 2005年5月25日 神奈川県
ニホンカワトンボ メス 2005年4月28日 神奈川県
アサヒナカワトンボ(交雑由来群) メス 2005年7月19日 神奈川県
う~ん・・・?やっぱりどれも同じにしか見えません。
こうなると分布調査が行われていない地域での種の特定は想像の域をでませんね・・・。
最後に両種のオスの橙色翅型と透明翅型の性格を教えていただきましたので紹介します。
面白いことに同じ翅型なら種は違っても性格は同じだそうです。
橙色翅型は体がでかく縄張りを持ちメスが来るのを待ち構えて交尾をします。
産卵警護もします。
透明翅型は体が小さく縄張りを持たないので何かのどさくさに紛れて交尾をします。
産卵警護はしません。
縄張り争いがないので長生きするそうです(余分なエネルギーを使わないから)。
そんな性格から別名スニーカーと言われているらしいです。
海に戻らないサケのオスを思い出しました。
初めて聞く話ばかりでとても有意義な2時間でした。
ありがとうございました。
2007年12月18日追記:DNA解析に基づく新仮説により和名を変更しました。
2006年11月18日 神奈川県