…数日後、
結子さんは、仕事帰りに、達也さんを見掛けた。
同じ時間帯に、同じ電車に乗るのは久しぶりだ。
話し掛けようか…。
…だけど、彼女がいるなら、気軽に話し掛けて迷惑じゃないだろうか…。
達也さんの後ろ姿を見つめながら、とぼとぼと歩いた。
…やっぱり、話し掛けるのはやめよう。
あらたまって彼女が出来た…という話を、彼の口から聞かされるのはつらい…。
わざと用事を作って、彼と同じ電車に乗らないように…と、本屋に入った。
特に見たいものもない…のに、本屋をうろうろする。
『恋のすすめかた』『恋愛入門』
なんとなく、こんなタイトルを目にすると、立ち止まってしまう。
『恋のマニュアル』
手に取った瞬間…、
「今日は、早いんだね」
「…え?」
達也さんだ。
達也さんが、笑顔で横に立っていた。
「達也さん!達也さんも、早いのね」
結子さんは、手にしていた本『恋のマニュアル』を
あわてて本棚に戻した。