ライバル 10

2022-05-24 12:01:20 | 日記
…数日後、

結子さんは、仕事帰りに、達也さんを見掛けた。

同じ時間帯に、同じ電車に乗るのは久しぶりだ。

話し掛けようか…。

…だけど、彼女がいるなら、気軽に話し掛けて迷惑じゃないだろうか…。

達也さんの後ろ姿を見つめながら、とぼとぼと歩いた。

…やっぱり、話し掛けるのはやめよう。

あらたまって彼女が出来た…という話を、彼の口から聞かされるのはつらい…。

わざと用事を作って、彼と同じ電車に乗らないように…と、本屋に入った。


特に見たいものもない…のに、本屋をうろうろする。

『恋のすすめかた』『恋愛入門』

なんとなく、こんなタイトルを目にすると、立ち止まってしまう。

『恋のマニュアル』

手に取った瞬間…、

「今日は、早いんだね」

「…え?」

達也さんだ。

達也さんが、笑顔で横に立っていた。

「達也さん!達也さんも、早いのね」

結子さんは、手にしていた本『恋のマニュアル』を
あわてて本棚に戻した。