あたしは女優よっ！

ガレージ代の集金は毎月2日。
もともとはガレージの持ち主である、このあたり一帯の土地持ちのHさんが一軒一軒借りている家を回って集金していた。
しかし、我が家近辺も住み着き・・・かれこれ30年近くになってHさんもかなり高齢になっていたのだ。　100軒以上回るのはなかなかに骨が折れる。

それに、共働きや急用で2日に留守、という家も増えてきた。
そんな時、誰かに託けて置くのがならいとなり、だんだんとCIAさんの元に、という道が出来ていった。
彼女、そういうお世話ごとは大好きなのだ。はっきり言えば、必要悪・・・いや、違うな、鬱陶しいとこもあるけど、居てもらえば非常に便利という側面もある。

で、来月分のを持っていく期限が近づいてきて。
どうしよう？というのは多分、新聞報道を見た人ほとんどの気持ちだったろう。
持って行かないというのもいかにも事件を知って気を使ってます、みたいだし、かと言ってこんな時に普通に持って行っても無神経なのかも、とか。

でも結局私は、普通に持っていくほうを取りました。
ちょうど、ちょっと具合の悪い足首を診てもらいに整形に行こうと思った日、お出かけの格好をして、ガレージ代を通帳にはさんで。
天は我に見方した？　家の前でまさに買い物から帰ってきて自転車を止めようとしているCIAさんに遭遇。　私はいつもの通り『毎度～』なんてへらへら声をかけてお金を渡し・・・『お願いしま～す』と。

彼女も後ろから声をかけられて・・・ん？？ってな感じで振り向かざるを得なかったし。毎度～の時には既に彼女の前に通帳差し出してたし。
「どこ行くの？」「うん、ちょっと足が痛くてね、整形まで」「気ぃつけや」「はいな～」これだけの会話を交わす。まっ、いつも通り。多分声の調子もいつも通り。
振り向いた彼女の目が少し腫れぼったいな、とは思ったけれど、黒のサングラスは私の表情は隠してくれる。

角を曲がって、ちょっぴり大きな息を吐いた。
あ～セーフやった！

今月だけ乗り切れば来月はもう、薄れてるよ。なんとなく希望的観測だけど。
人のうわさも75日なんていうけど、そんなに長く持たないね、私の実感では。
このことから、私は何を学べばいいのかな？と夢芝居。