出逢った頃の君のまま

先生、早いね、１年たったよ。　先生の訃報が飛び込んできた日、私、美容院にいました。　今日も・・・予約してます。

何にも、ほんとに何にも変わってません。　バカみたい。嘘みたい。でもね、そう・・10日くらい前から、先生の命日近いなって思うたびに涙、流れてました。

先生信じないでしょう、私が泣き虫だってこと。　年のせいで涙腺が緩んでるんじゃないよ。　ずっとずっと前から泣き虫だった。

白衣をだらしなく着て、なんかスリッパみたいな履物はいて、「便利だぞ～」なんて言いながら、抜けた下の歯の隙間に煙草突っ込んで「手を使わなくても煙草が吸える」とかって、可笑しかったね。

日曜になると、ニューポートいう名のジャズ喫茶にいて、煙草くゆらしながら新聞読んでる、そんな噂話もまことしやかにとんでたよね。

生徒から貰ったバレンタインのチョコが教卓に山積みになって、今までで１番もててる・・・って、せっかくくれたからって・・・全部せっせと食べて虫歯になったとか、結構、先生の話っていっぱいあったんだよ。

学園祭の準備室で、なんで、あんなに一緒にいたんだろうね？　放課後、先生とお喋りしたくて行ってたのかな？　大学時代の事や、今思ったら教師と生徒っていう会話じゃないような話もしてたよね。

すっかり忘れてたのに。

すっかり忘れてたのに、思い出した途端に、涙の洪水だよ。

可笑しいよね、先生が元気だったら、きっとずっと忘れてた。　亡くなってから思い出しても遅いのにね。　息子がもう、初めて会った日の先生の年齢を超えてるのにね、先生の事を思い出す時には、私・・・18のままだわ。

父が亡くなって来年で13回忌、それでもやっぱり父の命日の前には涙が溢れるの。この分だと、先生の為にも、毎年泣くんだろうな。
もし、もしほんとに千の風になってるんだったら、あと少ししたら家を出るから、その時、ちょっとでいいから、わかるように吹いてくれませんか？

じゃあまた。