一見何の関係もないような睡眠習慣、肌の健康、ストレスレベルですが、実は複数の点で相互に関連しています。例えば、よく眠れない日が続くと、ストレスホルモンであるコルチゾールが増えやすくなりますし、逆に、ストレスを感じているとコルチゾール濃度が上がり、寝つきが悪くなったり、朝までぐっすり眠れないといった問題が起こりやすくなります。こうしてコルチゾール濃度が上昇すると体内の炎症が増加することから、ニキビ肌や敏感肌を招きやすい状態となり、アレルギー反応のリスクが高まります。また、コルチゾールは、滑らかで健康な肌を保つタンパク質を分解してしまいます。
Clinical and Experimental Dermatology誌に掲載された研究によると、毎晩7〜9時間の睡眠をとった参加者は、5時間以下の参加者よりも肌に潤いがあり、紫外線に対する自己防衛力と回復力が高いことがわかりました。肌の再生は、そのほとんどが睡眠中に行われます。皮膚細胞は夜間の方が速く再生され、肌に弾力やハリを与えるタンパク質であるコラーゲンも生成されます。
睡眠不足やストレスでコルチゾール濃度が高くなると、コラーゲンやエラスチン(コラーゲン同士を結びつける働きがあるタンパク質)の分解が進み、慢性的なストレスに伴う小ジワや表情ジワにつながるのです。このような影響を考えると、慢性ストレスや不眠症が肌の老化を早めても不思議ではないでしょう。
とはいえ、あきらめることはありません。睡眠、肌、ストレスのサポートに有望な天然成分のサプリメントがいくつもあり、ストレスの軽減、睡眠の質向上、健康な肌の維持が図れます。
睡眠の改善に最適なサプリメント
今日のように多くの睡眠補助サプリメントが市場に出回る中、自分に合った製品を見極めるのは難しいかもしれません。そこで、睡眠補助が期待できるサプリメントを選ぶ際にポイントとなる天然成分をご紹介しましょう。
睡眠補助といえばメラトニン
メラトニンは、おそらく最も認知度の高い天然の睡眠補助サプリメントですが、それには理由があります。
メラトニンは、多岐にわたる睡眠の要素を改善することが多くの研究で明らかになっています。その一例として、複数の研究をまとめた分析では、メラトニンが子供から大人まで年齢を問わず睡眠の質を向上させ、入眠までの時間を短縮し、総睡眠時間を増加させることがわかりました。(注:日本国内のお客様へ:メラトニンを含む製品につきまして、iHerbでは2ヶ月分まで購入が可能です)
睡眠の質向上に効果的なバレリアンルート
睡眠障害対策としてよく使われるバレリアンの根は、不眠症に効果があることで特に知られています。
睡眠を改善する可能性があるバレリアンにはリラックス効果もあり、天然の抗不安剤と呼ばれるほどです。
この植物の根には鎮静作用があり、花は香水の原料とされてきた長い歴史があります。バレリアンルートに含まれるバレレン酸には、脳内のγ(ガンマ)-アミノ酪酸(GABA)の分解を抑える働きがあることがわかっています。GABA濃度が低下すると、睡眠不足や不安を引き起こすとされています。
質の高い睡眠を目指すならレモンバーム
レモンバームは、不安を和らげ、不眠症を改善するとして古くから使用されてきましたが、その秘密はこのハーブに含まれるロスマリン酸の鎮静作用にあると考えられます。
ある研究でレモンバームとバレリアンルートを併用したところ、被験者の睡眠の質が大幅に改善されたことがわかり、別の研究でも、レモンバーム摂取群は落ち着きが増し、覚醒度が低下したと報告されています。このような効果はいずれも入眠能力の向上につながると言えるでしょう。
レモンバームは、サプリメントとして摂取する他に、気持ちが安らぐ美味しいハーブティーとして飲んでも良いでしょう。
肌の健康に最適なサプリメント
皮膚は人体最大の器官であり、外界から体内を守る防護壁でもあります。特に、ストレスレベルが上がりがちの現代社会では、睡眠の質が低下しやすいため、肌をしっかりケアすることが大切です。
健康な肌作りに定評のあるシアバター
究極の保湿剤とも呼ばれ、肌の健康に最適な外用剤の一つとして評価の高いシアバターは、アフリカ原産のシアバターノキの種子を原料としています。
シアバターの抗炎症作用は吹き出物や切り傷などの治癒に役立つと考えられます。研究によると、シアバターは、腫瘍壊死因子(しゅようえしいんし。腫瘍細胞を壊死させる作用のある物質)、インターロイキン(免疫応答の調節に関与する物質)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2。細胞の炎症組織や腫瘍組織で発現して炎症反応や組織の修復に関与する酵素)などの炎症マーカー(炎症指標)を有意に減少させます。
抗酸化物質を多く含むシアバターは、肌の老化を遅らせる効果があると言われています。
シアバターは全身に塗布でき、乾燥肌や肌荒れを和らげるのに最適です。
健康な肌を保つとされるキンセンカ
キク科の植物で、カレンデュラまたはポットマリーゴールドとも呼ばれるキンセンカの花から抽出されるエキスには、肌へのさまざまな効果が期待されています。アメリカ南西部から中南米にかけての地域を原産とするキンセンカは、かつてスペインの探検家らがアステカ王国から原種の種子を持ち帰り、スペインに設けた花壇で栽培したのが始まりと伝えられています。
キンセンカには抗菌、抗真菌、抗炎症作用があり、米アリゾナ州の砂漠に住む先住民をはじめ、世界各地の治療師によって、吹き出物、傷、皮膚炎、湿疹、ニキビ、乾癬(かんせん。慢性皮膚疾患)など多様な皮膚症状を鎮めるために用いられてきました。
ある研究では、キンセンカにSPF(紫外線防御指数)効果があり、天然の日焼け止めとして役立つ可能性があることがわかりました。
また、キンセンカは肌質の改善にも有望で、肌のハリと潤いを促進することが研究で示されています。
美肌作りに欠かせないとされるレチノール
レチノールはコラーゲンの生成を活発にする働きがあるため、肌の若返りを図る上で格好のサプリメントと言えるでしょう。
また、レチノールは皮膚の血管新生を促すことから、肌色を整え、肌の修復に必要な栄養素の流れをスムーズにするのに役立ちます。
また、レチノールは、加齢性色素斑をはじめとするシミを目立たなくすることでも知られています。さらに、肌を引き締める効果もあるため、目の周囲の肌を滑らかにして引き締める目元ケアにもお勧めできます。
なお、レチノールは日光感受性を高める性質があることから、必ず夜に使用しましょう。
ストレス対策として最適なサプリメント
ストレスがピークに達したと感じるような時でも、毎日の習慣として自然にサポートすることで効果が実感できるでしょう。そこで、ここからは、自然なストレス管理が楽にできる代表的なサプリメントを挙げていきましょう。
ストレスサポート効果が注目されるアシュワガンダ
アシュワガンダ(学名 Withania somnifera)は、インドやアフリカの他、地中海地域にも自生するアダプトゲンハーブ(ストレスに対する適応力を高めるハーブ)であり、体がさまざまな形でストレスの副作用に対処できるように助けます。
アシュワガンダは、主なストレスホルモンの一つであるコルチゾールを低下させる働きがあると考えられています。コルチゾールが上昇すると、体重増加(特に腹部)、高血圧、不安感・抑うつ気分を引き起こしやすくなります。
ある研究では、慢性的なストレスを感じている成人がアシュワガンダのサプリメントを摂取したところ、非摂取群と比べてコルチゾール濃度が最大30%も減少したという結果が出ています。
ストレス反応の改善に期待できるマグネシウム
マグネシウムは、多くの生体プロセスが正常に機能する上で欠かせないミネラルですが、心臓の健康や筋肉の機能に関してはよく取り上げられる反面、ストレスをサポートするサプリメントとしてはそれほど話題に上りません。
マグネシウムとコルチゾールは逆相関関係にあり、マグネシウムが多いほどコルチゾール値が低くなることが研究で明らかになっています。ストレスはマグネシウム濃度を低下させますが、ストレスに適切に対応するにはマグネシウムが必要です。
マグネシウム欠乏は多くの人が抱える問題でありながら、自分では気づかないケースが多いようです。マグネシウムは豆類、ナッツ類、葉野菜などの植物性食品に多く含まれているものの、食品加工の過程で除去されやすいのが難点で、加工食品を摂りがちの現代人の食生活においてマグネシウム欠乏の大きな要因となっています。
不安、不眠、イライラなどはマグネシウム欠乏のサインです。マグネシウムはその大半が骨などの組織に貯蔵されているため、欠乏かどうかを判断するのは難しいかもしれません。というのも、血液中に含まれるマグネシウムがわずか1%程度のため、血漿(けっしょう。血液のうち血球を除いた液体成分)中のマグネシウム濃度だけでは正確に診断できないからです。
マグネシウムは、GABA受容体と相互作用し、その鎮静作用をサポートすることでストレス対策に役立つ他、興奮性化学伝達物質であるグルタミン酸を調節したり、快感ホルモンと呼ばれるドーパミンの合成に必要なミネラルでもあります。このような作用はいずれも、ストレスに対して体が健康的に反応するように促します。
正常なストレス反応を助けるラベンダー
地中海沿岸を原産とするラベンダーは、他46種の顕花植物とともにシソ科ラヴァンドラ属に属します。
ラベンダーは気分を落ち着かせるハーブとして広く知られていますが、その鎮静作用には科学的根拠があります。研究によると、ラベンダーは不安感を和らげ、睡眠の質を高め、ストレスやうつ病の予防にも効果があります。
さらに、ラベンダーは副交感神経系に影響を与えることもわかっています。副交感神経系は、呼吸のリズム、心拍数、ホルモン分泌など、ストレスに関連する体の生理的プロセスを制御します。ラベンダーは、心拍数やアドレナリン濃度を低下させることで、呼吸の速度を下げる効果もあると考えられます。
エッセンシャルオイルとして吸入する他、ラベンダーはクリームやローションとして塗布したり、栄養補助食品として摂取することもできます。
まとめ
睡眠、皮膚、ストレスが、実は体内で生じる生物学的プロセスのネットワークで互いに関連し合っていることを知って、目からうろこが落ちたという方もいるのではないでしょうか。
適切な睡眠とストレス管理を心がけることが健康な肌の維持につながります。同様に、よく眠れるようになるとストレスが減り、ストレスが減ると睡眠の質が上がりやすくなります。
健康と長寿を目指すには、睡眠、皮膚、ストレスという3つの重要なポイントをサポートすることが大切です。天然成分のサプリメントには、健康的な睡眠、肌、ストレス対策に安全かつ確かな効果が数多く期待できるでしょう。