10年前の会報より
報 告
二度目の立花高校見学
石井嘉寿絵
不登校支援を打ち出している立花高校を見学に、七月八日に数名で福岡まで行ってきました。この学校は、在校生の八割が不登校経験者というだけでもかなり珍しい学校ですが、中の空気もかなり〝普通〟ではありません。普段校長室は、生徒たちが自由に出入りし、校長と気楽におしゃべりをしたり、とても和める場所になっているようです。校舎そのものは古くて、あまり開放的な感じのしない四角い建物ですが、その中で出会う先生や生徒の皆さんは、みんな丸い表情をしていらっしゃいました。
立花高校は、ここ六年間で生徒数が倍に膨れ上がり、定員をオーバーする勢いです。その原因には、不登校の数がいっこうに減らないという悲しい現実もあるでしょうが、この学校の持つ〝本来の魅力〟が世間に理解されてきたという事実もあると思います。それは「どんな子でも受け入れる」という姿勢です。そのためにちょっと恐い感じの子どもたちが集まり、以前はとても世間の評判が悪かったのだそうです。でも、今では「どんな子も元気になる学校」として認知されるようになってきたのでしょう。私はそのことを確認してきました。
一年前、初めてこの学校を訪問した時、ちょっと目つきの鋭い女の子がいたのですが、その子と偶然、この日また会うことができました。彼女は見違えるほど、優しい笑顔のかわいい少女に変身していたのです。私はその事実を確認できたことで、この学校の姿勢、日々の生徒への取り組みをまのあたりにする思いでした。そのことを校長に伝えると、こんな返事をいただきました。
「彼女は、おっしゃる通り素晴らしい変貌です。すごく視野が広くなり、その結果周囲に気を使いすぎて疲れ果てるとても心優しい彼女です。よく校長室にやってきてはパズルに没頭してエネルギーを充電しています。頼りにされる子は、それを受けて重くなるんですよね」と。全ての生徒の名前を覚えている校長ならではの言葉だと思います。
子どもが芯から安心できる場所が学校の中にあり、そこに信頼できる人がいるのです。「一人ではない、孤独ではない」ということを確認できる場所があるということが、どれほど子どもを勇気付けることか。もちろん、校長一人で出来る事ではありません。他の先生方も、とても素敵です。そして、幸せそうな顔をしていらっしゃいます。そんな事をある高校の先生に話したら「立花の職員会議に座ってみたい」とおっしゃいました。そして私は「ここでの高校生活を味わってみたい」と思いました。実際、そういう気持ちでここに入学し「何ら後腐れなくさわやかに退学していく子」がいるそうです。
生徒が幸せになれば、先生も保護者も幸せになれるのです。こんな学校が熊本にもできるといいなぁという想いが、痛いほど胸に溢れる一日になりました。