「中学校の現場から見た不登校」 ② 前記事の続き
▼それから、厳しい家庭環境の中で育って、暴れたら手がつけられない子どもがいたんです。
私が会いに行くと悪態の数々を吐かれました。それでもこの子に関わっていると、中学2年生の職場体験の前に、その子が「パン屋かな、ケーキ屋さんかな」と言ったんです。だから何とかその子でも行けそうなパン屋さんを探し出しました。それから話が出来るようになっていきました。
その後、校内行事でみんなと一緒にやる喜びを覚えたらしくて、3年生になったら積極的に動き始めました。そして落ち着いて生活をするようになっていきましたが、高校は中退しました。ですが、私は高校を辞めることは良いと思っているんです。その時に「自分は向かなかったんだから、次に行くんだ」と整理さえ付けば良いので、あんまり一カ所に止まる必要はないと思っています。何かあったときは一緒に考えて、次のことを考えようという「気楽さ」みたいなことは必要かなと思います。
▼また別の子は、先生とのトラブルで3年間全く行けてなくて、中学校に入学してきて、私が3年間担任をしました。とにかく、学校に来ると言葉が震えて出ないというか学校恐怖みたいなのがあって、学校に無理矢理連れて行くということが無理な生徒でした。だけど、中学を卒業したらどうする?ということは常に言っていかないといけないし、登校しないとどんなリスクを背負うかということも話をしながら、自分の将来を考えさせました。ですが結論はなかなか出ません。
3年生になって「高校に行きたい」と言ったけど、殆ど学校に来れてないので「続くのか?」と思いました。でも今は不登校でも、ずっとそうかは誰にも分からない。その子が行きたいと言う以上、応援をしてあげたいと思っています。
この子は3年間続いちゃったんです。その後は大学進学。びっくりしました。
▼次は、中学時代は休むことはあったが、うまく3年間来れた子の例です。
卒業後、私立高校に入学。しかし、その高校でいじめに遭い、半年ぐらいで「辞めたい」と相談がありました。
その時は、そのまま状況を見ながら高校をしばらく休んで1年留年する方法と、はっきりと自分はこの高校に合わないと判断して別の学校に転校する方法があるよと話しました。その後「転校したい」と言うので別の高校を紹介しました。その後は続いたみたいです。この子も看護系の大学に進んで今活躍しています。
この時考えたんですが、一人ぐらいそこの学校生活に合わないというのは、至極当然な事なので、もし合わなかったら違う環境の中、状況を変えてみるのも1つの手だと思っています。
▼それから、兄弟全員不登校の子ってよく聞きますよね。私が関わった家庭では、兄弟4人とも全員不登校でした。ただ、私が担任した下の子は人付き合いが上手な子で、ほぼ毎日迎えに行きました。私は日頃から、毎日家庭訪問するのは逆効果で良くないと言っていたんでが、その子の場合は朝から起こして学校に連れて行った方が良いと思ったので、ほぼ毎日家に行って声かけして、学校に来れる状況だったら一緒に行くということを続けていきました。この子は休みながらも3年間ほかの仲間と途切れることなく来てくれたんです。ただ、授業には出てなかったので、進路はかなり厳しい状況でした。この子もまた八代の高校にお世話になったんですが、なんと短大から大学に行くということで、びっくりしました。
▼それから一番最近のことですが、人と会うと緊張してしまって、正門まで来てても担任の先生と会っただけで急いで逃げ帰っていく子がいました。
私は「学校に来るのが嫌だったら、家に行って良いかなぁ?」と聞いたんです。最初は嫌がられましたが「いいよ」と言うから、その後は毎週その子の家で一緒に勉強をしました。
ある時、本人に「どうする?」と聞くと「大学に行きたい」と言うんです。私は「中学校も全然来てないんだけど」と言うと、「そうだけど、僕は行きたいんです」「それじゃ、将来どうしたいの?」「税理士とか・・」と、普通の人でも難しいことを挙げるんです。そして「税理士になるためには大学に行かないといけません。どうすれば高校に行けますか?」と聞いてくるんです。私は、それなりの勉強をしていかないと難しいよと返したら、「高校に行けるかは分かりませんけど、将来はそうしたいんです」と言うんです。その子は2年生の途中から学習ルームに来れるようになりましたが、教室に入ったのは3年間で3日間でした。
その子が「進学校に行きたい」と言いだしたので、(遠いけど)寮のある高校を紹介したんです。でも「寮は嫌だ」と本人が言うので、一緒に勉強を続けました。夏休みも自分から塾に行き始めました。この子は頑張り始めたら寝ないで頑張るんです。だけどそんな状態は長続きはしません。「頑張り過ぎじゃない」と言っても「この位しないと駄目なんです」と言って頑張ってしまうんです。そして12月に進学校に行きたいと言うので、集中的に勉強してきたんです。でもまだ厳しいと思っていたら、合格しちゃいました。でも、私もお母さんも通い続ける事は無理だと思ってたんです。
入学後は順調でしたが、だんだん休みが増えていきました。本人は、あと何日休めば危ないということを計算をしながら、いま頑張っています。現在高校2年生です。これからも相談をしようと話しています。