弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

上位下達の 所長を経なきゃ なれない?「高裁 部総括」

2024年06月16日 10時01分47秒 | 裁判

他方で、名古屋高裁部総括になったのは、吉田彩判事。
(写真)名古屋地裁部総括を3年余り務めて「上席」となった後、富山地家裁所長を2年余り務めてきた。通例の昇進ルートと見ることができる。むしろ、所長として3年目に入り、地域手当の異動保障期間が切れて富山市の3%に下がってしまっていたので「お待たせし過ぎたかも知れません」。
横浜地裁民事第6部(交通集中部)では同じ右陪席としてご一緒した。

私が問題にしたいのは、このような「通例の昇進ルート」自体の是非である。高裁部総括は、原則的に地家裁所長を経ないとなれないポストと見られている。実際にも、地家裁所長経験なくして就任した高裁部総括は極めて少ない。
高裁部総括の定年退官に伴う後任人事となるので、地家裁部総括の定期異動に合わせるのは難しく、地家裁所長と同様に不定期人事と位置付けた方がやりやすいという事情はあろうが、例外はいくらでもあり得るのは昨日も具体的な事例を示したとおり。

現在の地家裁所長は、基本的には裁判を担当せずに、司法行政官として、最高裁事務総局からの上位下達を徹底させる仕事に成り下がっている。逆に最高裁に物を申したのは、最近亡くなった、日本裁判官ネットワーク創設メンバーの安原浩松山家裁所長がおそらく最後であろう。私はそのような仕事ならばやりたくない。

地家裁所長として最高裁の方針への従順さを確認されてからでないと、高裁部総括として高裁判決を出させないという仕組みになっているのではないか、とさえ思わされる。


合議も組めない 相模原から 大抜擢の 部総括

2024年06月15日 14時18分31秒 | 弁護士任官

しばらく空席になっていた仙台高裁民事部総括と名古屋高裁民事部総括のポストが、相次いで埋まった。
私も以前から希望ポストとして挙げて来たのだが、異動の打診は一切なかった。
特に前者は、実質的には在職死亡した小林久起裁判長の後任であるから、人事当局も予定していなかったはずだ。適任者を誰でも選ぶことが可能であった。
そこで、先月末に仙台高裁民事部総括となった倉澤守春判事(写真)と私の経歴等を比較してみよう。
                竹内     倉澤
司法修習     39期              45期
誕生日   1962/10/29   1961/10/8
直前任地     津地裁部総括 相模原支部長
在任年数     3年2か月  0年11か月

これだけのデータからしても、かなり露骨な差別的人事と私には見えるのだが、いかがだろうか。
ちなみに、横浜地家裁相模原支部は、最も新しく設置された支部であるが、合議事件を行わないことになっているので、日弁連や地元市町村から問題視されている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/228384

したがって、相模原支部長は合議事件の裁判長すら行っていない。
他方、津地裁の唯一の民事部総括である私は、本庁でしか担当しない行政事件や簡裁控訴事件を含めて、常時百件前後の合議事件の裁判長を3年以上も務めている。
その一事をもってしても、全件が合議事件である高裁の裁判長として、どちらが適任なのかは一目瞭然だと思うのだが。


証拠の一角 崩れたならば 全面開示を 命じては?

2024年06月14日 09時32分55秒 | 裁判

今日の中日社説から

https://www.chunichi.co.jp/article/912820

この問題に関連して、私が最近思いついた再審ルールの改正案を披露したい。

最高裁白鳥決定が樹立した判例では、新規性のある証拠が提出された場合、新旧両証拠を総合して、新証拠の明白性の有無により、再審開始の可否を判断することになっている。

しかし、その具体的な判断は区々に分かれており、基準としては極めて不安定である。

そこで私案だが、新証拠の新規性が認められる場合は、検察官に公判未提出証拠の全面開示を命じ、その検討を経た上で、再審開始の可否の判断をしてはどうだろうか。

新規性のみで再審開始をするには法改正が必要だが、全面的証拠開示命令をするだけならば、現行法の下でも運用ルールとして可能と思われる。

死刑判決の決め手であったはずの歯型鑑定を崩したのに再審開始にならない名張事件、DNA鑑定を崩したのに再審開始にならない飯塚事件などの事例に接するにつけ、事ここに及べば、もはや全ての証拠を開示して決着を図るべきではないかと痛感させられる。

 


法曹界の「しくじり先生」岡口基一が「SPA!」と斬る

2024年06月13日 20時45分43秒 | 裁判

岡口さんの連載が始まった。


「事件は会議室で 起きてんじゃない」と 半分気付いた? 民事局

2024年06月11日 20時23分25秒 | 弁護士任官

最近の中日新聞の朝刊コラムから。

https://www.chunichi.co.jp/article/910141

全国の地裁からすべからく最高裁に参集せよと大号令が掛かる毎年恒例の会議の開催方針は、さすがにウェブ会議に改められつつあるようだ。
私の批判を聞き入れてくれたのかは不明だが。
しかし、本来は、法廷を休んでまで年に何日も費やすべき会議なのかどうかも、厳しい見直しが必要だろう。


傍聴動員 反面教師 言語道断 支離滅裂

2024年06月10日 08時26分11秒 | 裁判

先週日曜の毎日新聞
「松尾貴史のちょっと違和感」から

横浜市教委傍聴動員
「児童の人権」持ち出すずる賢さ
https://mainichi.jp/articles/20240602/ddv/010/070/009000c

おそらく横浜の市民オンブズマンが黙ってない!


「虎に翼」の 注目点は 石田和外を どう描く?

2024年06月09日 10時01分48秒 | テレビ

連載第3回から。

裁判官の「中立公正」とは…
実は“人をだます”のも仕事?
「現職の裁判長」が明かす“意外な実像”
(弁護士JPニュース)
https://www.ben54.jp/news/1211

朝ドラ「虎に翼」で、事情通の弁護士たちが心配している事がある。
それは、後の第5代最高裁長官となる石田和外(いしだかずと)が美化されるのではないかという点だ。ドラマで松山ケンイチ演じる桂場のモデル。
戦前に帝人事件で無罪判決を書いて気骨を示したのは史実だが、戦後は最高裁を右旋回させた張本人であった。
最高裁判事の入替えにより、公務員の争議行為を全面的に違法とする判例変更をし、ブルーパージすなわち青年法律家協会を初めとするリベラル派の裁判官の冷遇路線を敷いた。長期保守政権からの介入に対する組織防衛と動機を擁護する論調も見られるが、退官後の経歴を見れば、本人の極端な保守的傾向に基づくリベラル派の排除であったと見るのが正当であろう。
「極端な軍国主義者、無政府主義者、はっきりした共産主義者は、その思想は憲法上は自由だが、裁判官として活動することには限界がありはしないか」と宣うた事は有名だが、本人は「極端」ではない「軍国主義者」といったところだろうか。論外だ。
ドラマでは既に、寅子に女性は裁判官は採用しない旨を宣言する場面があり、美化はしないだろうと私は信じているが、今後の役割に注目である。


無上の幸福 双方のファン「中日×楽天」交流戦

2024年06月08日 13時25分45秒 | スポーツ

弁護士JPニュース連載2回目から。


「近鉄・オリックス球団合併」騒動から20年…
選手会を勝たせた“主任裁判官”決断の「決め手」になったものとは
https://www.ben54.jp/news/1203

昨日から明日まで名古屋のバンテリードームで中日×楽天の交流戦。
私は両チームのファンだから、どちらが勝っても嬉しい。


もしもAIに「良心」があれば「ヒラメ」などより ましだろうが

2024年06月07日 18時03分06秒 | 裁判

弁護士JPニュースで私の著書からの連載が始まった。
題材の取捨選択やタイトル・リードは担当記者を信頼して一任しているので、どの部分が読み手の心に「刺さった」のか、著者としても関心がある。

(連載1回目)
現職の“裁判官”が語る…
「法律と判例」があっても“生成AI”には裁判官が絶対に務まらない「決定的な理由」とは
https://www.ben54.jp/news/1197

アメリカでAIを裁判に活用しようとしたら、差別的な判断ばかりになったと報道されたのを見た記憶がある。
入力する情報にそういうものが無視できないほど混じってくるので、そうなるのは必然的だろう。
そもそもネット上は、昔の公衆トイレの落書きのように心無い匿名の者たちの誹謗中傷で占拠されている。

AIが顕名の良心的な投稿だけを参照してくれれば、よりましな判断にはなるだろうが、果たして「人間」的な判断をしてくれるかどうか。
何よりも真っ先に「人間」は地球上からいなくなるべき存在だと判断されてしまいそうで怖い。

そこにAI(愛)はあるんか?


起訴されたなら 即「有罪」で 再審開始は 即「無罪」?

2024年06月06日 19時44分33秒 | 裁判

昨日の決定を今日の朝刊の社説で取り上げたのは、管見の限りでは、中日・東京新聞と京都新聞・徳島新聞・信濃毎日新聞。

〈社説〉飯塚事件の再審 司法の責任が問われる(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024060600089

普通ならば公開法廷の公判で証人尋問をやり直して、それこそ白黒つければいいのに、現行法の再審制度ではそうならない。
「再審開始決定≒無罪判決」というに近い、重い運用実態になっていることも、開始決定を躊躇させる方向に働くだろう。
やはり、再審法制の改正の必要性を痛感させられる。

(写真)折しも事件を題材にした映画上映中。

それにしても実に重い事案だ。

裁判官にとっては究極の「ハードケース」だろう。


講演録だと 読みやす過ぎて 誤記もスラスラ 読み飛ばす?

2024年06月05日 00時04分44秒 | 裁判

私の本に、さらに驚愕の誤記が発見されました。
29頁の③「しかし、死刑存置論は日本ではまだまだ少数派だ。」の「死刑存置論」は「死刑廃止論」の誤記でした。
これでは全く逆の意味になってしまいます。

私も出版関係者の誰も気付きませんでした。

申し訳ありません。


愛する三重でも 売れたらいいな「増刷出来」記者会見

2024年06月04日 08時36分11秒 | 三重

「裁判官の実情を知って
国提訴予定の竹内判事、著書出版会見」
(三重 - 毎日新聞)

https://mainichi.jp/articles/20240604/ddl/k24/040/139000c

昨日、津市で出版記者会見をさせていただきました。

民事部総括として4年目を務めている三重県でも是非、お買い求めの上、読んでいただきたいからです。

県内の書店の皆様、お取扱いをよろしくお願いします。

ちょうど、第2版の増刷が決まりました。


俗論・フェイクに 引きずられずに「ええ愛はあるんか?」AIに

2024年06月03日 12時51分45秒 | 裁判

現職の“裁判官”が語る…「法律と判例」があっても“生成AI”には裁判官が絶対に務まらない「決定的な理由」とは(弁護士JPニュース)https://www.ben54.jp/news/1197


故意による差別 問われる覚悟 あるのか? 人事担当官

2024年06月02日 18時22分23秒 | 裁判

「裁判をしない裁判官」は気が付いていないかも知れないが、既に局面は大きく変わっている。
「差別されている」と訴えられる前は「私は知らなかった」などと組織的「過失」論に逃げる事もできようが、訴えられた後は「故意」または少なくとも「重過失」による公務員の個人責任を問われる事になろう。
また、人事担当の公務員は、差別の張本人と名指しされて、裁判になれば証人尋問を受ける覚悟を要する。その時点でいかなる高位高官に付いていようと、判断をした張本人である以上は逃げられない。大丈夫なのだろうか。


連続悪手の「二手指し」しても 防衛できるか?「後手」引いて

2024年06月01日 15時35分44秒 | 将棋

前回に続く自戦解説の第2回。
https://blog.goo.ne.jp/gootest32/e/7bb83771c2a67662879918d74d7f3c16
5月は予想に反して3手しか進まなかった。
対局場を仙台に移し、長考を強いられていた後手は、天命により急遽設定された特別ルールにより2手連続で指した。
先手の私からはどう見ても悪手としか思えないが、感想戦ではその意図を尋問してみたいものだ。
これを受けて、先手は満を持して、約半年も前から予告していた1手を放った。今のところ評判は上々だ。
後手は、今度は対局場を名古屋に移して長考に入っている。名古屋でも2手指すことができる巡り合わせになりそうだが、そのチャンスを活かせるかどうか。
そして、7月に入ると、双方の応酬で局面が激しく動き出すことになりそうだ。序盤の山場がやってくる。

(写真)謎が謎を呼ぶ名古屋高裁本庁の裁判官配置。

定年間近の2部の長谷川恭弘裁判長が、前任者の新潟地裁所長への転出によって空席となった1部の裁判長を兼ねている。