毎年この時季になると鎌倉の妙本寺を訪れる。きっかけは小林秀雄の「中原中也の思い出」というエッセイで、海棠の花の散るさまを描いた一場面がある。それで、彼らが見た風景を追体験してみたいと思い、毎年花の時期を狙って訪れることにしている。
総門をくぐるとうっそうとした緑に包まれた参道が続く。
やがて階段が見えてくる。その上が二天門である。
陽光に映えるもみじの若葉が美しい。
境内の桜は既に満開であった。その向こうの花海棠も見頃を迎えている。朝の9時前なのでまだ人影は少ない。
実は今見ている海棠は、小林達の見たものではない。彼らの見たものは既に枯れてしまい、現在のものはその後植えられたものらしい。
私の近くで花を見ていた人が、「これは桜の一種かしら?」と言っていたので、私は横から「これは花海棠ですよ」と教えてあげた。海棠は桜と同じバラ科ではあるが、サクラ族ではなくリンゴ族である。
この寺の中心である祖師堂には立派な彫刻が施されている。
これはこの地に住んでいた比企一族の供養塔。源頼朝の嫡男である頼家の後見人であった比企能員は、鎌倉幕府において北条氏に対抗する有力御家人であったが、北条氏によって滅ぼされてしまった。(比企の乱)
これは源頼家の息子である一幡の墓。墓と言っても骨は納められていない。比企の乱の焼け跡で見つかった彼の着物の一部が埋葬されている。それで「一幡君の袖塚」と呼ばれている。
どうです。鎌倉へ来られた際は妙本寺にも立ち寄ってみて下さい。
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