
お若い方が、初めての「茶杓荘り」(ちゃしゃくかざり)を稽古しました。
このお点前は由緒ある茶杓をご披露するときにしますね。
点前の最後に大切な茶杓を古帛紗に載せて、拝見に出すのですが、
その時に使われた古帛紗に目が行きました。
きれいな色の春らしい模様の古帛紗に、
「とても素敵な古帛紗ね」というと、
「はい、母が使っていたものです」と嬉しそうに答えてくれました。
お母様のお使いの古帛紗を、娘さんが受け継いで使うなんて、
お茶のお稽古を始めなければなかったこと。
お茶を始められる若い方にはそんなケースが多いです。
お稽古用のおなじみの茶杓より、
その古帛紗のほうが「由緒ありね」と思いました。
その方がお帰りになった後、裂地に目のない私ですから、
早速、裂地名鑑を持ち出してきて、
目に焼き付いたその素敵な模様の裂地を探してみました。
「鳥文」の部に見つけました。
裂地の名前は「昭光裂」(しょうこうぎれ)でした。
~鮮やかな橙色の地に、春爛漫と咲き誇る桜の折枝文と、
飛び交う金色の鳥文の図柄~
と説明がありました。
「昭光」とは、明らかに輝いていることを意味するそうです。
華やかでおめでたい文様で、若い方が持つにはお似合いですね。
私は若いころは地味好みというか、渋好みというか、
すぐに大人っぽいものを持ちたがったような気がします。
最近になって、反対にきれいな小物が持ちたくなりましたが。
小さな裂地にいろいろな歴史や思いが込められて、
お茶席の様々な場面で使われる。
古帛紗はつい目の行ってしまう魅力的な小物なのですね。
