三十年以上稽古に使ってきた茶入れの紐が、
一か所傷んできて、ちょうど結ぶあたりが、切れそうになりました。
糸でかがって補修しながら使っていますが、
皆さん「どうか私の時に切れませんように」と恐る恐る使っています。
おかげて紐を結ぶ力が抜けて、優しい結び方になったような。
いつだったか、
もう一つ、何か違う稽古用の唐物写しを手に入れようと思った時、
商売っ気のない道具屋さんに、
「お稽古用は一つで十分ですよ」と言われて、
それもそうかと買わずじまいでした。
それ以来この茄子の茶入れが、ずっと活躍してくれました。
皆さんの稽古も進み、出番多くなり、使いが激しくなって、
裂地は何処も痛んでいませんが、紐が擦り切れてきました。
仕覆の裂地は「鎌倉間道」です。
なんでもそうですが擦り切れるまで使ったということは、
残念というよりも、満足感でいっぱいになりますね。
「さてこの仕覆に引導を渡すのは誰かしらね」
なんて楽しんでいても、皆さんには気を使わせてしまいますので、
次の代の唐物写しの茶入れを用意することにしました。
初めての時は何も考えずに、稽古用にと選んだのですが、
今度は少しドラマのある「大名物」の写しをと、
唐物文琳、「本能寺」写しに決めました。
今は五島美術館所持になっている本能寺文琳は、
信長に滅ぼされた、越前の戦国大名朝倉 義景から、
織田信長に伝わった漢作唐物の大名物です。
銘の由来は信長が京都本能寺に寄進したことによるとか。
その姿を写した茶入れで、「ご伝来は?」と楽しむのも良いものかと。
仕覆の裂地はもちろん、私の好きな「朝倉間道」です。
新旧の唐物写しの茶入れを、
お点前によって使い分けて楽しみたいと思います。
もちろん古い方は恐る恐るですが。
紐が切れたら、紐だけ取り替えることにしてもと。
初お目見えは何時にしましょうか。
今考えているのは、近々挙行する予定の、真の許状の引次の時に、
なんて言ったって、私が点前で初使いしようかしらと思っています。