JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

四万六千日

2007年07月10日 | a-c

今日はこんな時間の更新です。
それは何故か?
じつは今晩いつものバーのママと、同じく同店の常連さんと、三人での飲み会が控えてるものですから(笑)そうっと周りの目を気にしつつ、仕事場での更新であります。

7月7日は七夕、そして、昨日今日はたしか浅草浅草寺の四万六千日の縁日『ほおずき市』ではなかったでしょうか?
これも江戸時代から続く伝統行事ですね。私はもう何十年出かけていないことか。
あの赤いほおずきは「鬼灯」なんても書きますが、鬼の灯りと呼ぶには可愛すぎますよね。小さいときには実の中身を抜いて「ブーブ、ブーブ」鳴らしてました。今の子はそんなことしないんだろうなぁ。(笑)

四万六千日は暑さもさかり、混んだ蔵前通り歩くのは辛かろうから、参詣は舟にかぎると、いやがる連れを伴って馴染みの客が船着き場へとやって来ます。

落語『船徳』です。八代目桂文楽の十八番でありました。
道楽者の若旦那「徳」が、居候していた船宿の船頭姿に憧れて、よせばいいのに大川に漕ぎ出してんやわんや。じつに楽しい古典です。ぜひとも一度お聴きになってみて下さい。

「あれ?浅草に大川なんて川ありましたっけ?」
まったく、私がそっと分からないように更新作業をしているというのに、O君がのぞき込んでそんなことを、
「バカだねぇ、大川ってえのは隅田川のことにきまってんじゃん」
「あれ?隅田川は隅田川でしょ、支流かなんかですか?」
「え~~~い、めんどくせぇ、東京湾の河口から吾妻橋あたりまでを『大川』、浅草周辺を『浅草川』『隅田川』って言って、そのまた上流を『荒川』って呼ぶんだよ」
「へぇ~~そうなんだ」
そんな知識も落語が教えてくれたんでしたねぇ、
「若者よ、落語をもっと聞きなさい。」

さて、これ以上、隠れて更新するのもなんでしょうから、こんヘンで今日の一枚。
「CHET BAKER SINGS」のヒットに気をよくしたパシフィック・ジャズのオーナー兼プロデューサー、リチャード・ボックは、ポップな路線でもチェット・ベイカーは売れるとふんだのか、ストリングスを加え4曲を録音しました。さらにレギュラー・バンドで6曲、これを収録したのが今日のアルバムです。
「シンガー、チェット・ベイカー」を「CHET BAKER SINGS」と今日のアルバムで確実なものにしたかったのでしょうね。

ベイカー自身は、「シンガー、チェット・ベイカー」を、どう考えていたのか?
ある話によれば、1955年初頭には人気ナンバーワン・トランペッターであったベイカーは(ダウン・ビート誌、メトロノーム誌、いずれもトップ)、「男性ボーカル部門でも四位のナット・キング・コールに並びたい」などと言っていたそうですので、そう悪くは思っていなかったのかなぁ。だけど、「シンガーと見られたり呼ばれたりすることに、一時は強い抵抗があった。自分はトランペッターなんだ!ってはっきりと言ったこともある。」とも言っていますので、揺れる心がそこにはあったのだと推測できます。

このアルバムですが、ちょっとばかり商業主義的な要素が、露骨に現れすぎて、ベイカーの評価を落とした作品でもあります。歌が難しすぎたのか録音時間も大幅に延長して行ったものの、ベイカー自身、満足感を得られる内容ではなかったようですし、ボックが必至に編集したのでしょうけど、つなぎ目はめちゃくちゃ、録音・レベルも不安定、じつに雑な仕上げになってしまったのでした。
ともかく、このアルバムが「ジャズ界ではチェット・ベイカーなど真剣に取り上げる値打ちのあるアーティストではない」との認識を広めた問題の一枚だったことは確かです。

さぁ、ここまでこけ落とされたアルバム、あなたは今聴いてみてどう思いますか?

CHET BAKER SINGS AND PLAYS
1955年2月28日, 3月7日録音
CHET BAKER(tp,vo) BUD SHANK(fl) RAY KRAMER, ED LUSTGARTEN, KURT REHER, ELEANOR SLATKIN(vlc) CORKY HALE(harp) RUSS FREEMAN(p) RED MITCHELL(b) BOB NEAL(ds) FRANK CAMPO,JOHNNY MANDEL, MARTY PAICH(arr)[2,4,6,9]
CHET BAKER(tp,vo) RUSSFREEMAN(p) CARSON SMITH(b) BOB NEAL(ds)[1,3,5,7,8,10]

1.LET'S GET LOST
2.THIS IS ALWAYS
3.LONG AGO AND FAR AWAY
4.SOMEONE TO WATCH OVER ME
5.JUST FRIENDS
6.I WISH I KNEW
7.DAYBREAK
8.YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
9.GREY DECEMBER
10.I REMEMBER YOU

おまけ、
ボックがこのアルバムを制作しようと考えた最大の要因は、パシフィック・ジャズの市場調査で、ベイカーのファンの大半が若い女性で占められていたことにあります。
ベイカーのセクシーなTシャツ姿の写真をコラージュし、イニシャル入りのハートがあったり、ピンクのキューピットまで貼り付け、まるで古き時代の女子高生の部屋の壁みたいなジャケット・デザイン。う~~ん、心意気が感じられますね。(笑)