南九州は梅雨明けだそうで、豪雨の傷跡が早く癒えることを祈っています。一方、このあたりは相変わらずの曇り空、雨も降るんだか降らないんだか分からないような
「まぁ、だれかさんと一緒でハッキリしないわ」
てな、イヤミまで誘う陽気です。
昨晩は『トレーン命日の禊ぎ』のおかげで、全くテレビを見ることもなく、震災の様子も見ずに終わりましたが、今朝、新聞を読んでみて、被害の甚大さに改めて驚いています。
被災者の方々のことはもちろんですが、「原発直下まで断層」との記事になんとも背中のあたりがゾゾッとしたのは、私だけではないでしょう。
首都圏の電力をまかなうため、首都圏以外の地域に発電所が多く設けられていることは、皆さんもご存じでしょう。そして、原子力発電所に関しては、東京電力営業エリアには一基も存在せず、全て他地域(新潟と福島)に造られています。
ここで原発問題を熱く語る気などサラサラありませんが、今回の震災で、仮に柏崎刈羽原子力発電所が閉鎖ということになった場合、こと電力に関して危機を迎えるのは、地元ではなく首都圏にあるという事実。中越沖の揺れが『長周期地震動』の影響で六本木ヒルズのエレベーターを止めてしまうのも驚きですけど、そのエレベーターを動かす電力は中越で作られていた事実。これも直視していただきたいのです。
私も含め、最近はどうも「自分の周りだけ、いや自分だけ、しかも目の前のことだけ良ければいい」的発想が全てに蔓延してきているように思えてなりません。
食糧問題しかり、年金問題しかり、温暖化しかり、ご近所トラブルしかり・・・・・・・・・
「金をやるから、原子力施設をおまえん所に造ってくれ。」
「金を落とすんだから、基地ぐらい我慢しろ。」
そして、そんな理不尽な要求をのまざるを得ないほど緊迫した地方財政・・・・・・・
なんか違うように思えてならないのですが。
まっ、何処かの校長みたいに、自校の予算を増やそうと、学力テストの不正を行うような行為をすれば、それを見た子供たちは「それも有りか」と思うのが当然だし、へたをすればその方が利口だったりする世の中が、今なのかもしれません。
しかし、各地での大きな災害を目の当たりにするとき
「自分たちは一人では生きていけないことを改めて悟れ」と、神様が忠告しているようにも思え、なんの力も持たない私達でも「非常識が常識に変わりつつある現状を見て見ぬふりは止めて、一人一人が身近なことに気を配ることくらいのことを、すべきなのだろう」とは思うのです。(むろん私は無神論者ですが。 笑)
あらら、何だか選挙演説みたいになってしまいました。
おそらく、昨夜トレーンのために空けたバーボンが、まだ残っているのでしょう。(被災者を思えば、じつに不謹慎ですね。)
さて、昨日7月17日は、トレーンだけでなく『レディ・デイ』の命日でもあったわけで、(忘れてませんよ、だって、先日『ドリーム・ガールズ』がらみで『ビリー・ホリデイ物語』を観たばかりですから)今日の一枚は、ビリー・ホリデイです。
生前に見合った評価を受けなかったというミュージシャンは、ジャズの世界にも多数います。ボーカルが苦手な私でも、ビリー・ホリデイもまたその一人であったことくらいは承知しています。それは当時の黒人ミュージシャンに対するアメリカ全体の評価にも起因するところが大であったのでしょう。
1959年7月17日、ビリーはニューヨークのメトロポリタン病院の廊下に放置されたままいました。黒人のまして麻薬患者の扱いは死を前にした状況でもそんなものだったのです。
さらには、葬式が済んでも何ヶ月もの間、墓石も立たず、そればかりか死後になって入ってきた莫大な印税を目当てに、それまでほとんど付き合いもなかった親類縁者がウジャウジャと集まり、争奪戦を醜く繰り広げたという、死んでまでも恵まれぬ生前を引きずったような哀れなものだったそうです。
唯一の救いは、死後二年目にダウンビート誌の「名声の殿堂」に選ばれたことくらいでしょうか。
ヨーロッパの記者たちは、もっと良く音楽を知っている。彼らは耳を持っていたわ。米国の記者や評論家は、ジャズの中でどんなことが起こったかを、10年もたってから気が付くのよ。
我が国では死んでしまうまでその価値を認めてもらえない。死んだ後に、始めて偉大な存在だったと騒がれ出すんだわ。(ビリー・ホリデイ)
まさに彼女の言うとおりだったのかもしれません。
今日のアルバムは、最晩年の一枚。正直、声はボロボロ、けして「いゃあ上手いねぇ」とは言えぬビリーですが、胸の奥底をかきむしるような感動を与えてくれるのは、まさに『レディ・デイ』彼女だからなのでしょう。
LADY IN SATIN / BILLIE HOLIDAY
BILLY HOLIDAY(vo) RAY ELLIS and his orchestra
1958年2月18~20日録音
1.I'M A FOOL TO WANT YOU
2.FOR HEAVEN'S SAKE
3.YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
4.I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL
5.FOR ALL WE KNOW
6.VIOLETS FOR YOUR FURS
7.YOU'VE CHANGED
8.IT'S EASY TO REMEMBER
9.BUT BEAUTIFUL
10.GLAD TO BE UNHAPPY
11.I'LL BE AROUND
12.THE END OF A LOVE AFFAIR