JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

未だ呪縛の中

2007年07月17日 | a-c

台風に地震、この3連休はなんだか重く辛い休日になってしまいました。
昨日は新潟に住む友人K君のことが気にかかり、たまたま我が家に遊びに来ていたS君とともに連絡を取ってみました。幸いにも、皿数枚の破損とガスがストップしているくらいで、ご家族全員怪我一つ無いと聞き安心しましたが、台風、地震双方の被災者の皆様には、心よりお見舞いを申し上げるとともに、これからさらに大変な毎日に直面されることを思うと、ただただ「頑張って下さい。」としか言えない自分が情けなくてしかたがありません。

総理大臣始め、各政治家諸氏も、素早い反応を示されているようです。選挙のための人気取りでも何でもかまいませんので、被災者の方々に少しでも役にたつ対策の早期実行をお願いしたいと思います。



あなたから ほとばしる音楽は
空気のごとく 自在で
それ故に 貴重だった
私は 語り伝えるのだ
まだ見ぬ 子供たちに
むかしむかし コルトレーンという
音楽家が いました

お願いです 子供たちに
音楽を 理解する耳を
                (デボラ・ダミコ)

私がこのブログを始めて、早いもので三度目のジョン・ウィリアム・コルトレーンの命日を迎えました。
昨年は『海の日』、一昨年は『日曜日』と、休日にその日を迎えられたので、一日中コルトレーンに浸っておりましたが、今年は平日、これから新しいウイスキーのボトルを開けて、彼に一杯捧げながら酔いしれたいと思っています。

私がコルトレーンの音楽に陶酔し始めたのは、いわゆる「コルトレーンの音が聴こえないジャズ喫茶など存在しない」とまで言われた状況からは、すでに時は少し過ぎていましたが、それでも「ジャズ喫茶」はまだ全国に点在し、店さえ選べばその時代の風を感じることのできた最終期でもありました。
そして、一度、彼の魅力にとりつかれた私は、以降、現在に至るまで、彼の呪縛から解き放たれることは無かったのです。

私にとって、コルトレーンの魅力とは何なのか?

これが自分でもよく分かっていません。(笑)
しいて言えば「言葉では表せない、他人に分かってもらおうなどと思いたくもない、私の心だけに存在する感動や想い」てなことでしょうか。(分かりずれぇ~~~!)

何も知らない私が、他のジャズメンに関して「この時期はいいけど、この時期はぬぇ」なんて、偉そうに語ったりする時があります。
これは、目に見えた転換があて、音楽性が変わったりすると自分の好みを逸脱してしまうということが間々あるからです。
かのマイルスにしても、電化以降の演奏はほとんど聴くことはありません。

「おいおい、コルトレーンだってターニング・ポイントは間々あるよ」

たしかに、マイルス・バンド以前と以後、「A LOVE SUPREME」を最終ピークとするレギョラー・カルテット、さらにフリーへと傾倒していった「ASCENSION」以降。
ある意味、いたるところでターニング・ポイントが見えると言われればそうかもしれません。
ただ、仮にマイルスと比較するなら、破壊に新境地を求める者と、追求に境地と新地が現れる者という、大きな違いが私には感じ取れるのです。
故に、その流れの中に身を投じるとコルトレーンと同じとは言いませんが、自分なりに境地と新地をかいま見る疑似体験をも味わってしまい、ターニング・ポイントがターニング・ポイントで無くなってしまうみたいな・・・・じつに分かりにくい表現ですね。

音楽に対し、誠実で真剣で、それは時に過ぎてしまうほど真っ直ぐで、野心家で、しかもそれを貫き通してしまった魅力? やっぱり、よく分かりませんね(笑)、こんな言い方をしたら、まるで他のミュージシャンには「それが無い」みたいで・・・けしてそうではないんですよ。

ともかく、今年もまた彼の呪縛から解き放たれなかった私、
誰が何と言おうと、「オレはコルトレーンの全てが好きだ!」を今しばらく通させていただきたいと思います。

さて、今年は命日にこのアルバムを持ってきてみました。
私は「コルトレーンのアルバムでこれが一番好きだ」って人には、一度も会ったことがありません。(笑)

チベット密教の究極の呪文をタイトルに持つこのアルバムは、収録曲も同名の一曲のみ、約30分に及ぶその演奏を、皆さんはどう聴き取るのでしょう?
「OM,OM,OM,」あたりで聴くのを止めたって方、我慢して3分少々から始まるコルトレーンのソロを目を閉じて何度か聴いてみてもらえないでしょうか。(それでも「ダメだ」というひとが大半かもしれませんが・・・)
少しでも、胸のあたりがクイクイって絞り上げられるというか、身体がくねってくるというか、そこに逃げられない何かを感じたら、それですそれ、そこんところを味わってみてはもらえないでしょうか(笑)

OM / JOHN COLTRANE
1965年10月1日録音
JOHN COLTRANE(ts,ss) McCOY TYNER(p) JIMMY GARRISON(b) ELVIN JONES(ds) JOE BRAZIL PHAROAH SANDERS

1.OM

私は、雨が降って欲しいと思ったらすぐに雨が降ってくるための方法を見出したい。友人が病気になったら、私が何かの曲を演奏すればその病気が治るようにしたい。友人が無一文になったら、別の何かの曲を吹けばすぐに必要な金が彼のもとに入ってくるようにしたい。だが、どんな曲なのか、どういう道を辿ればそれを知ることができるのか、私には分からない。音楽の真実の力を、まだ人は誰も知らない。それをコントロールできるようになることが、あらゆるミュージシャンの目標だと私は信じている。(ジョン・コルトレーン)


セント・ピーターズ教会で追悼演奏を行うアルバート・アイラー

追伸、
コルトレーンの葬儀は、4日後の1967年7月21日、ニューヨーク、レキシントン街のセント・ピーターズ・ルーセラン・チャーチで行われました。カルヴィン・マッセイが 「A LOVE SUPREME」を朗読し、アルバート・アイラー(ts)が 「LOVE CRY / TRUTH IS MARCHING IN / OUR PRAYER」 をドン・アイラー(tp)、リチャード・デイヴィス(b)、ミルフォード・グレイヴス(ds)と共に、オーネット・コールマンは、チャールズ・モヘッド(ds)、デヴィッド・イゼンゾン(b)、チャーリー・ヘイデン(b)らと「HOLIDAY FOR A GRAVEYARD」を追悼演奏しました。
葬儀後、ロング・アイランド、ファーミンデールのパインローン・メモリアル・パークにジョン・ウィリアム・コルトレーンは埋葬されたのでした。

ちなみに、この時のアイラーの演奏は、超豪華(?)9枚組CD BOX「HOLY GHOST」の6枚目に、コールマンの演奏は、こちらはCD化されていないと思うのですが「HEAD START / BOB THIELE EMERGENCY」という2枚組アルバムにそれぞれ収録されています。興味のある方はどうぞ。