花男の物置部屋 引っ越して3箇所目

備忘録的に食ったもん、読んだもん、聴いたもん等を書いてます。

森博嗣 S&Mシリーズを読了

2007-11-24 17:54:03 | 活字もすっげえたまには読むぞ
犀川創平と西之園萌絵によるシリーズ全10作品。

タイトルは・・・・

・すべてがFになる The Perfect Insider
・冷たい密室と博士たち Doctors in Isolated Room
・笑わない数学者 Mathematical Goodbye
・詩的私的ジャック Jack the Poetical Private
・封印再度 Who Inside
・幻惑の死と使途 Illusion Acts Like Magic
・夏のレプリカ Replaceable Summer
・今はもうない Switch Back
・数奇にして模型 Numerical Models
・有限と微小のパン The Perfect Outsider


それぞれの作品がどうのこうのと言うより、一連の物語として楽しんだ。大変面白かったです。

「すべてがFになる」で感想書いた通り最初の印象は「理系ミステリィ」。ただ、なんか段々読むにしたがって・・・・ミステリィな部分っつうのは主人公二人を縦横無尽に動かすための「シチュエーション」なだけじゃねえかな・・・と言う気がしてきたり。ある意味ラブコメだったりもする様な。哲学と言うか・・・天才二人の思想・発想なあたりには結構「惚れる」ポイント多し。花男個人はそこまで達観できていない(or 頭脳が弱い)が「そりゃもっともだ!」と膝を打つ事もしばしば。

謎やらトリックやらそう言ったミステリィ要素も、きっちり興ざめしないように、ちゃんときっちり。ここがゆるかったら二人のキャラは描ききれない。

脇では、国枝桃子が光ってます。最初と最後で真賀田四季も良い。

読み終えてしまった事が少し寂しくすらある。

別のシリーズにも二人はチラホラ登場との事。そのうち読もう。

現在は綾辻行人の「暗黒館の殺人」に着手した所。

両親について想い出した事

2007-11-24 14:35:35 | 分類なし
想い出した。迷ったけど・・・なんとなく吐き出したくて書く事にした。だらだらと・・・毒にはなるかも知れないけど薬にはならない話。読みたい人だけ読んでください。

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これが両親のすべてだった訳では無い。二人の死に際して思い出してしまった事を、内に込めないように書き出す事にした。

母親が死んだ朝。日曜の早朝だった。妹からの電話で目を覚ます。入院中だった母の容態が急変したとの連絡を病院から受けたと。半分寝ぼけた頭で、ともかく父の会社に連絡してから病院へ向かうようにと。

「お兄ちゃんは・・・?」と聞かれ、ややパニック状態で事態も飲み込めてなかったのか「今日予定があるんだよな・・・」。その日は朝から組合主催の「新春ゲーム大会」と言うのがあって、未だ会社でペーペーだった花男は人員確保のため強制参加させられる事になっていた。どうでも良い用事である。事態を飲み込めてなかった→本能的に事態を飲み込みたくなかったのかもしれない。

布団から出て数分、段々と事態が多少飲み込めてくる。母の病状については知っていたので、最悪の事態だろうと覚悟を決める。妹は知らされてなかったので余計パニックだったろうなとか思いながら新幹線に乗って母の入院する病院へと向かった。「新春ゲーム大会」への欠席の連絡は・・・・したかどうか覚えていない。

病院へ着くと、「もう家の方へ引き取られました」と言われる。「亡くなった」「ご遺体」等と言う言葉は使ってなかったが、「ああ・・・死んだのだな」と「最悪では無い事態への1%程度の希望」は消える。

家に着く。母親の遺体の横に座る。事態を把握でき無い。母の友人で花男の小学生時代の同級生の母親が泣き崩れている。嗚咽を吐きながら花男に抱きついてくる。それをきっかけに何かの箍が外れたように、自分の目からも涙が出続けてくる・・・・嗚咽も止まらない・・・そのあとは一切泣かなかった。と言うよりその後の事はあまり覚えていない。お通夜の時か、寒い板の間でずっと正座をして御焼香に来る人たちに挨拶をしていたので、酷く足が痺れ立てなかった事とか・・・「悲しくても足は痺れるんだな」・・・・当時新婚だった焼香に来た小学校時代の同級生夫婦の神妙な顔など、断片的な記憶以外は定着していない。

大学生の頃、たまたま休みで実家へ戻っていた時、母が「ようやく貯金が○○円を超えた」と少し嬉しそうに言って来た。それほど大した金額では無い。中学校位まで、花男の家庭はどちらかと言うと貧乏だった。父の収入は貧弱だったし、結構何かって言うと理由をつけて会社を休んでいた。母親はある「資格」を持っていて、それまでも内職的にその系統で「ヤミ仕事」をしていたが、花男が中学校くらいから外で働き実務経験をつみ、しばらくして開業した。高校に上がる頃には母親の収入は父のそれを完全に超え、生活も安定していた。花男が私立大学なんぞに進学できたのもそのおかげだ。それでも家庭では父が一番偉かった。亭主関白だった。ただその貯金がたまった話をした時母が「お父さんには内緒よ、安心して働かなくなっちゃうから・・・」と続けたのが少し不思議で印象に残っている。実質の一家の大黒柱は母だった。思えば家事もこなしながら毎日の激務を家の二階に作った事務所でこなしながら・・・・そのせいで寿命が縮んだのかも知れない。

そんな母が居なくなってから、父は自分の家の財務状況を知る事になる。やはり「自分は金持ちだ」と勘違いしてしまった節はあった・・・大した額では無かったはずなのに。浪費するような事は無かったが、それを匂わす発言や行動もあったし、知人や親戚に金を貸していたりもしていた様だ。ただ、定年を迎えても父は仕事を辞めなかった。母の交友関係で賑やかだった家にも、そのうち母の友人達は訪れなくなったし、息子も娘も既に社会人だったし、仕事を辞めてしまったら寂しくて仕方なかったからかも知れない。それほど仲の良い印象は無かった父の兄弟達(花男は嫌いだった)と一緒に旅行に行ったりもしていたようである。一方母方の親戚達は癖の強い父方の親戚達に駆逐され寄り付かなく成って行った様だ。

父が死んだ夜・・・その日の昼。花男は父が倒れたと聞き会社を休み実家に戻っていた。入院は長引きそうだったし、そろそろ宇都宮に戻らなきゃな・・・と思っていた矢先。見舞いに行っていた自分と妹の前で、父が「お父さんはもうだめだから・・・」と話を始める。何でも元同僚に金を貸しているが、中々きっちり返さない。借用書がどこどこに入っているので、確認してきっちり取り立てるようにと言った話だった。「大丈夫だからそんな事言わないで」と妹と二人で言ったが、その日の深夜父は息を引き取った。花男が駆けつけたときは、心臓マッサージで強引に心臓だけを動かし続けている所だった。東京の男の家に泊まりに行っていた妹は未だ到着していなかったが、それが意味のある行為とは思えず「止めて頂いて結構です・・・」とマッサージの手を止めてもらう。

父が死んだことでは結局一度も泣かなかった。漠然と悲しい気持ちはあったが、リミッターがかかった様にある一定の所で感情の高まりは抑えられていた。施主だったせいもあり、バタバタしていたのが帰って良かったのかも知れない。式の後、各所にあいさつ回りなどをしている間も淡々と冷静だった。

父が言っていた「同僚へ貸した金」について妹が「どうしようか・・・」と言う。金額を見ると確か百万円に少し届かない額だった。「どーでも良いなあ・・・」と花男。でもとりあえず電話はしてみようかと、結局妹が電話をしてみる事にした。妹が「こんな事言ってるんだけど・・・」と電話口から花男に声をかける。父が死んだことを伝え借金の件を切り出すと「後幾らか貸してくれたら、借金を一本化できてそちらへの返済へ集中できる」と言い出した模様。この人はもうどうしようも無いなと、「もう忘れてくれって言いな」と妹に伝える。父の死の一連の中で何故か一番印象に残っているエピソード。父がこの人のことを親友のように・・・・何とかしてあげたいと思っていて、その後裏切られたなら少し悲しいなと思った。

そんだけ。