トニオ・クレーガー(19)
————————【19】——————————————
Die Sache war die, daß Tonio Hans
Hansen liebte und schon vieles um ihn
gelitten hatte. Wer am meisten liebt, ist
der Unterlegene und muß leiden,——diese
schlichte und harte Lehre hatte seine
vierzehnjährige Seele bereits vom Leben
entgegengenommen;
—————————(訳)————————————————
つまりトニオはハンス・ハンゼンのことが好き
だったのだ.ハンスのことを巡っては、すでに
いろいろ苦労してきていた.愛する側の人間は
敗者なのであり、苦労しなければならない——
この素朴ながら厳しい教訓はすでに人生経験か
ら14歳の心に受け入れられていたのだった*.
—————————《語句》—————————————————
Die Sache war die ~ :つまり~ということだった
うしろの die はdie Sacheを略したもの、
これに続いてdaß ~が来ていますが
Sache の内容を同格で表わしています.
英語でいうところの the fact that ~
~という事実
gelitten:(過去分詞) <leiden (自/他) 悩む、苦しむ
被害を受ける、
(病気に) かかっている
leiden はここでは自動詞.通常は自動詞で使
われることが多いようです.尚、三変化は、
leiden - litt - gelitten
und schon vieles um ihn gelitten hatte:
und と schon の間にdaß Tonio を補うとよい.
und daß Tonio schon vieles um ihn gelitten hatte
ハンスのことを巡っては、すでにいろいろ苦労
してきていた.
(過去完了なので、「それまで」と訳に
付け足しても可)
der Unterlegene:(形容詞の名詞化) 敗者
<Unterlegen (形) 負けた
形容詞の名詞化では男性、女性、
複数は「人」を表わします.
ここでの語尾eは男性弱変化1格語尾.
am meisten liebt:最上級ですが比較対象はハンスと
トニオだけです.
Wer am meisten liebt で「愛のあるほうの人間」
schlicht:(形) 簡素な、質素な
harte:(形) 困難な、つらい、固い、頑固な
die Lehre:(弱n) 教え、教訓、見習い修業
bereits:(副) すでに、(schon)
entgegengenommen:(過去分詞)
<entgegen/nehmen (他) 受け取る、
受け入れる
—————————≪文法≫—————————————————
*) この素朴ながら厳しい教訓はすでに人生経験
から14歳の心に受け入れられていたのだった.
受け身のように訳しましたが、対応する文は
diese schlichte und harte Lehre hatte seine vierzehnjährige
Seele bereits vom Leben entgegengenommen.
diese schlichte und harte Lehre は4格
「この単純で苦々しい法則の教えを」
seine vierzehnjährige Seele これが主格
「14歳の心は」
bereits vom Leben 状況補語
「すでに人生経験から」
hatte ~ entgegengenommen 過去完了
「受け入れていたのだった」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます