故郷へ恩返し

故郷を離れて早40年。私は、故郷に何かの恩返しをしたい。

お互い三人分

2016-02-24 09:47:34 | よもやま話

昭和記念公園の橋の下のさざ波を描きました。
自然の風景でも、水辺はとても魅かれるものがあります。


老人と若者がいます。

年寄りが若者に威張って言います。
私は、貴方の三倍の人生経験がある。

若者は反論します。
私は、貴方より三倍長く早く走れるし、荷物だって貴方の三倍は持てますよ。
と負けてはいない。

若者は、いつしか疑問を持ち始めます。
学校では、勉強を教えてもらえる。
友達と温かいものを共有できる。
でも好きなことをやりつづけられない。

老人は、どうしてこうなったのか疑問を持ち始めます。
よかれと思って、一生懸命生きてきました。
会社に尽くし、家族と共に生きて来た。
今や、私は必要とされているのだろうか。

互いに接点がないように見える老人と若者です。

老人は、話している間も草取りをします。
若者は、その草を始めは蹴散らしていました。
自分にゃ関係ない。

若者は、小さな花に目が留まりました。
自分が好きな彼女に見せてやりたいと思いました。
老人は、構わず抜いていきます。
若者は、何をするんだと集めていきます。

荒れ地の草がきれいになりました。
若者は、一つの花束を手にしていました。
お互い顔を見合わせて、互いの満足な顔に見入ります。
何じゃろなと二人は笑顔になりました。

老人は、会社では人事部に勤めていました。
若者は、これからの自分の行く末を案じていました。

今どきの若者は、あれが足りないこれが弱いと嘆いて、
多くの時間を費やして、教育プログラムを作ってやらせてきました。
つまり企業戦士を作り上げてきた鬼教官だったのです。

若者に聞きました。
何がしたいんだと。

若者は、何がしたいか分からない。と答えました。
毎日学校に行っているけど、今やっていることの意味がわからない。
自分は、やりたいことがあるけど親は反対していると。

そうかと老人は若者に笑顔をむけました。
そうなんだと、若者は老人に少し拗ねるような笑顔をむけました。

やってみればいいじゃないかと、老人は無責任に若者に言いました。
でも、やりたいのは何で、どうしてか話してみれば良いと。
若者は、どうせわかりゃしないだろと、話し始めました。

老人は、黙って聞き入っています。
若者は、出来るだけ正直に今の心境と自分の描く未来像を話し始めました。

老人はうなづいています。遠い昔、自分も同じように悩んでいたなと目を細めます。
黙って聞いている老人に、何だこの爺いと興味を持ち始めました。
誰も聞いてくれなかった。両親も自分の考えを押し付けるだけで聞いてくれなかった。

どうして、やる前から出来ないと自分で壁を作るんだと若者に言います。
その壁がわからないんだと、若者は言います。

やってみれば、壁は見えてくるよ。そして一つづつ乗り越えるしかないんだよ。
と老人は、心の中でつぶやきます。
なんだか気持ちが少し楽になったなと若者は思いました。

老人は、若者の三倍の優しさがありました。
若者も、老人の三倍も夢がありました。

自分が持ち合わせないものを、老人と若者はそれぞれ持っていました。

山椒が ぎろりとにらむ ほたるかな

2016年2月24日


コメント
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