『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  195

2010-04-21 07:32:04 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 『おう、お前、朝の行事が終わったのか。いま、オロンテスと話し合っていたところだ』
 アエネアスの父の言葉であった。朝の行事とは、息子ユールスとの水浴、そして、朝の祈りのことであった。オロンテスからは朝の挨拶であった。彼は、ユールスにも声をかけた。
 『統領、おはようございます。ユールスおはよう』
 『おはようございます』 ユールスなりの丁寧さで返事を返した。
 『何です父上、朝早くからの話題は、、、』
 『うん、まあ~な。市井のことだよ』
 『ところで、オロンテス。今日昼から、耕作地のことについて打ち合わせをやらないか、種をおろすのを急がねばならない』
 『いいですね。その言葉を待っていました。手の者を三人くらい連れてきます』
 『判った。待っている。トリタスもいた方がいいか』
 『それは好都合です。この地方の気候のことも聞きたいと思っています』
 アエネアスは意志を決めた。静かに朝の風景を眺めながら考えを巡らせた。
 軍団の者たちを含めた市民たちの生活を早く落ち着かせてやりたい。そうでないと水面に浮かぶ根無し草である。大地に根ざした市民生活の実現へ踏み出す一歩について深く考えた。今がそのときであると強く感じた。

第2章  トラキアへ  113

2009-12-23 12:43:37 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 時は進み、陽は西に傾いた。激しく干戈を交えた戦野の中に戦死者の家族や友の姿があった。彼らの悲しみが、荼毘の煙とともに戦野に漂う風景がそこにあった。彼らに近づいたアエネアスは、心からの哀悼と慰めの言葉を贈った。
 パリヌルスとオキテスは、イリオネスとアレテスのいない戦場処理の指揮をして、今日の作業を終えた。
 『統領、今日の作業が終わりました。見まわれますか、如何されますか。』
 『よし、見まわろう。君たちに苦労をさせたな、パリヌルス。では、行こうか。』
 彼らは、戦場を一巡した。凄絶な戦いを制した戦野に歩を進めたが、彼らは、終始無言でひと言も声を発することはなかった。
 程なく、茜色の夕陽が照らす浜に着いた。オロンテス、浜頭たちは、すでに船上の人となっていた。乗船するアエネアスを船上の者たちは、盛大に喊声を上げて迎えた。
 『あともう一回、戦場の兵たちを迎えに来る船を仕立てる段取りになっています。オキテスが戦場点検の上、最終便で浜に帰ることになっています。』
 パリヌルスは、このあとのことについてアエネアスに伝えた。

第2章  トラキアへ  85

2009-11-13 06:51:18 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 アエネアスは、各隊を廻って兵たちを激励した。いずれの隊も、力強く鬨の声を上げ、アエネアスに答えた。
 各部隊は、静かに出立して行く。
 アレテスの隊は、狩猟に赴く風を装って、遠く迂回して、布陣地点を目指した。 パリヌルスの隊は、海岸ぶちを歩んで布陣地点を目指す。彼らは、軍装の上に漁師の格好をしている。
 最後にイリオネスが率いる隊が、長い隊列で布陣地点に向けて滞在地を後にした。彼らは、布陣地点まで、誰にも気づかれないように気を配り、急ぐことなく、木立、潅木の茂みに身を隠すようにして、歩調を忍ばせて歩んだ。
 アエネアスは、三人の従卒を従えて、予定戦場に向かった。従卒のうち二人は、戦場諜報の斥候である。知恵を絞った作戦計画であり、万全の陣形であり、必勝の攻撃手法でこの戦闘に挑んだのである。でありながら、勝てるか。望みを達することが出来るのか。このことを思い続けている心の中の一隅を覗き見た。しかし、戦場に着くころには、そのような思いは、どこかに消し飛んでいた。
 彼は、襲い来る眼前の敵との、闘いに集中できる自分を自覚した。彼は、無意識に握っていた握りこぶしを開いて、闇の中で、じいっと見つめた。そこに見たものは、虹色の光彩を放つ明日の風景であった。

第2章  トラキアへ  61

2009-10-12 07:06:22 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 一行五人は、月の照らす海をエノスの浜に向けて急いだ。心は急いていた。五人はだんまり、無言である。ただひたすらに帰途を急いだ。海を泡立てる櫂の音だけが海面を這って消えていった。往路は、魚を釣りながらであったが、復路は、心急くままの漕走であった。見慣れてきつつある浜は、月の光で明るかった。
 浜に四つの人影を見た。四つの影は、見たことのある風体をしている。魚行商の四人が帰ってきていたのである。アエネアスは、早足で歩み寄っていく、彼らも急ぎ足で、こちらに向かってくる。
 『お前ら、無事に帰ってきたか。近くによって顔を見せろ。』
 アエネアスは、大手を広げて四人をかき抱いた。彼らの苦労を心情としぐさで、ねぎらった。アエネアスとアレテス、その部下の三人は、二人の浜衆に厚く礼を言って見送った。
 『アレテス、ご苦労であった。二人、一緒に来い。イリオネス、パリヌルス、オキテス、カピュスもいる。俺たちも予定している戦場の視察から、いま、帰ってきたところだ。話を聞く。』
 一同は、月の光を避けて、浜に上げている船影の闇に円陣を組んで座った。

第2章  トラキアへ  35

2009-09-04 07:00:45 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 『おはよう。諸君!異国の地で迎える朝はどうだ。深夜の敵の襲撃はなかった。何よりであった。』
 アエネアスの開口一番であった。居並んでいる彼らも、身体をゆすられることなく過ごした一夜で落ち着きを取り戻していた。
 『もう来る頃だと思うが、これから、浜頭連と話し合いをする。そのあと、我々の打ち合わせを行う。それともうひとつ、アレテスを探索に出す。我々は、当面、何をするかについて話し合う。皆、いいな。』 言い終わるのを聞いて、皆が肯いた。
 浜頭連の姿が見えてきた。浜頭が1名増えている。4人になっていた。
 一同は、顔を合わせた。
 『おはようございます、統領。よく休めましたか。このかんかん照りの下では、話し合いも落ち着きがありません。浜小屋に入りませんか。』
 『うん、よかろう。』 と言うことで一同は、浜のはずれにある、一軒の浜小屋に移動した。小屋の中に入る、小屋の中は浜風が吹き抜けている。涼感が感じられた。一同は、車座に座して話し合いが始まった。
 

第13章  木馬大作戦  20

2008-06-13 08:02:30 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 トロイ軍の将兵たちは、近近の戦闘のことを振り返っていた。夜襲攻城戦のこと、海峡管理隊への襲撃、連合軍は敗れるべくして敗れたのだ。俺たちは、戦闘に勝った、護りきったと勝利を実感していた。
 戦野を見て廻っている彼等の目にしたものは、城壁の櫓の正面、程遠くないところに何かを見つけた。
 『あれは、何だろう?』 『何っ!どれどれ。』 『何だ!あれは、、、。』 『馬みたいわ。』 『馬としたら、大きい馬ね!』 彼等は、向かう先を変えた。
 『行こう!』 『うん、行ってみよう。』 彼等は、一団となって歩き始めた。
 『すごいっ!これ木で造った馬じゃないの。』 『それにしても立派な馬ね!』
 『なんだ、木馬じゃないか。それにしては、でっかい馬だ。』 
 彼等は、木で造られた巨大な馬が立っているのを見つけた。馬の大きな目がじい~っと城の櫓を見つめていた。その馬は新しい木で造られており、刈り取りを迎えた麦のようにつややかに、こがね色に輝いていた。
 (木馬の腹胴は、22~23人くらい乗れるマイクロバスくらいの大きさで、それに頭と足をつけたくらいであったらしい思われます。)

第13章  木馬大作戦  16

2008-06-09 07:46:05 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 陣を撤退する将兵たちの軍船は、風に押される、懸命に櫂で漕ぐ、船足は速かった。彼等は、この作戦が失敗した場合には、最後のトロイ総攻撃は行わず、故国への帰途に就くことになっているのである。
 濃い藍色の空が白んでくる。抜け殻の陣営を伝令兵が走り抜ける、その抜け殻の陣屋に、諸施設の残骸に火をつける、そのときの訪れをおそしと待ち構えていた。彼等は緊張の極みである。偽計の撤退、詐略の撤退、これを目にするトロイ軍の思惑が気になった。最後の役務に就いている彼等は、大きな結果を得るために大きな犠牲を払う、この作戦の成功を強く、強く思った。10年前の開戦以来、初めて、胸に湧き上がった勝利への強い思いであった。
 夜は明けきった。東の山の頂きに陽の昇る気配を目にした。彼等は、いっせいに火を放った。各陣屋や諸施設の残骸には、火が点きやすいように細工がしてある上に、よく乾いていた。火は勢いよく燃え上がった。10キロメートルにも及ぶ、船陣が、陣屋がいっせいに火を噴いて燃えた。煙も立ちのぼった。

第11章  権謀術数  40

2008-05-02 08:06:23 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 軍団が引き揚げたあと、自軍の将兵のいなくなったスカイア門辺りの城壁の下に二人の男がいた。オデッセウスとデオメデスである。彼等は、今日の激戦で倒れた戦死者中に自分たちも戦死者を装って、夜の更けるのを待った。二人にとって、待つことこそ闘いであった。長い宵闇も真っ暗闇の夜と変わっていく、今宵は月はない、忍び込みに、もってこいの条件であった。夜は深くなった。(今様時間にして夜の10時ごろと思ってください。)二人は周囲に気を配って、むっくりと起き上がった。オデッセウスは、石垣の低いところを知っていた。二人は、その地点より城市内に潜入した。パラデオンの神殿に急いだ。
 難なく神殿に忍び入った。ヘレンは、神殿の女官に眠り薬の入った蜂蜜を飲ませ、眠らせ、二人の来るのを待っていた。パラスアテナの神像は三体あり、そのうちの一体だけが本物である。ヘレンは、それを知っていたのである。ヘレンなくして、この作戦の成功は有り得なかったのである。
 オデッセウスとデオメデスは、神像の盗掠に成功した。トロイ市民の民意を削いで、萎えさせ、動揺を与えて、市民感情を奈落の底に突き落とす。彼等は、もうトロイの明日はなくなると思い、民意は萎えるであろうと予想していたのである。

第1章  二つの引き金   7

2007-03-23 09:52:33 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 オデッセウスとメネラオスは、旅立ちの支度を終えて外に出た。アンテノールと小者たちは言葉を交わすことなく、諸事をてきぱきとやっている。馬は、2頭準備されている。二人は、アンテノールに、目としぐさに感謝の気持ちをこめて、息で礼を言った。
 夜明けまで、一刻である。別れを告げた二人は、馬上の人となり、門を出ると、南の方向にむかって、馬を叱咤して急いだ。夜が明けるまでに、トロイから、出来るだけ遠くに、行けるところまで行くことが、生きて帰国することの条件と思えた。

 註 書状と帰途の略図等は、古代文字の線状文字Bで書かれていたと思ってください。紀元前1450年頃から1100年頃まで使われたらしい。それから、200年位後のギリシア文字の出来るまで、口による伝承の時代であったと思われます。

アルツハイマー型認知症の超超早期発見に関して 9

2007-02-15 08:31:45 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 内嗅皮質の萎縮変化を察知した時点における対処こそ、健脳防衛のタイミングだと思います。アルツハイマー型認知症にならないことを優先課題として、とりくんでいただくことを強く思って止みません。