『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1233

2018-02-28 08:00:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 描かれている文言を読んだパリヌルスとオキテスは納得する。次いで、木板がアエネアスに手渡される。
 イリオネスが告げる。
 『木板に書き記してあるように、集散所とこれらのことを約した。我が方として、これに対応する体制を整備して対応していく。今日の会議は、この件についての会議である。一同解るな!』
 『はい!』
 このように言って一拍の間をとる、一同と目を合わせる。
 木板に目を通したアエネアスが口を開く。
 『ほう、イリオネス、集散所方もよく考えるな。商いをやっていく彼らには、俺らより一日の長がある。理解した。イリオネス、会議を進めてくれ』
 アエネアスの言葉を受けて、イリオネスが話し始める。
 『俺らは、この機会を、このチャンスをものにしていく!パリヌルスにオキテス、君ら二人は、ここに書かれているサービス内容を吟味して、採算性を考える、その答えを出す!次のステップは、オキテスとオロンテス、君らはその採算性を考えて、集散所と話し合って行事実行の段取り、手配を決定する。試乗会の催行等、あらゆる営業の機会を考慮して、担当すべきを実行する。マリアの集散所方へのアクションは、集散所に任せる。イラクリオン、レテムノンにおいての試乗会の開催を考える。エドモン浜頭、テムノス浜頭、この二人については俺が対応する。パリヌルス、例の仕様書きと図面の件だが、20組くらいを三日で仕上げてくれ。段取りと実行計画は、3日後会議を開いて決定する。それを受けて集散所と打ち合わせをする。それからオロンテス、今日の帰りに艇上で話した客の件だが、仕様書きと図面を渡して試乗日を打ち合わせる。話を集散所へ通してくれ。いいな!』
 イリオネスは手落ちなく指示終える。
 『了解しました』
 パリヌルスら三人が口をそろえて返事を返す。
 『俺は思う、機は熟している、チャンスを逃すことなく実行する。事は自ずから成る!疑うべからずだ!いけいけ、ドンドン!やれやれ、ガンガン!兜の緒を締めてだ。脚下照顧、一歩前進だ。冷静と謙虚を忘れずにやれ!』
 『今日のこの会議は、軍団長の指示会議である。一同、心して遂行してほしい』
 アエネアスのこのひと言で実行の幕を切って落とす。
 『ここまで話した事に質問は?』と、会議の句読点を打つ。
 『ありません。計画の実行に注力していきます』
 『では、話し合って決定した価格のことについて説明する』
 イリオネスは一同と目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1232

2018-02-27 08:59:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、売り場を引きあげる際の客との件を伝える。
 『ほう、そうか。ラッキーな話ではないか、物事が展開を見せる、不思議もある。そのような気がするな、不思議か?背中を押されている、引くに引けない、一歩、前へだ』
 『なんとなく、その成り行きを感じています』
 『そうか、オロンテス、機があれば、敏に動いて対処だ。チャンスだ!チャンスをものにしろ!俺からの至上命令だ!』
 『はい!解りました』
 『オロンテス、今日帰ったら、すぐ会議を開く。その準備をしてくれ。場所は、いつものように統領の宿舎の前庭でやる』
 『解りました』
 『業務を遂行する!何事も気持ちよく『はい!』と応えて着手する。この件に対しての体制を整える』
 『はい!解りました』
 『お~、オロンテス、よくできた!その調子だ。いいぞ!』
 イリオネスは、波の揺らす律調で考えるに集中する。
 『いけいけドンドン!やれやれガンガン!シッカリ!兜の緒を締めてだな!』
 イリオネスは、『脚下照顧』『一歩前へ』のスタンスで己の対処姿勢のありようを確かめた。
 浜に帰り着く。
 オロンテスは、今日の営業成果をイリオネスに報告する。
 会議の招集をパリヌルスとオキテスに伝え、会議の場を整える。
 業務が進展する、その様を独楽にたとえてみる、独楽の回転が澄んでいる、独楽がスックと立ちて回転している、よろつかせてはならない、回転を乱れさせてはならない。
 『その調子、回転を続けろ!』
 声を出して叫びたい、その心情で会議の場を整える。
 『この先、この状態で業務を続けていきたい、『冷静沈着』『真剣対処』俺のモットーだ』
 自分を確かめて、会議出席者の集まりを待つ、ほどなく、一同五人が会議の場に顔をそろえる。
 イリオネスが立ちあがる、一同に声をかける。
 『おう、一同、ご苦労!今日、この会議だが、進行役は俺が努める。いいな!』
 一同と目を合わせる。
 『俺の身体だが、常在戦場!常に戦場に身をおき、ことに対処している。感覚は研ぎ澄まされている、我が槍の一投は、たがわず的を射抜くだ。今、我らに飛躍のチャンスがおとずれている。チャンスものにする!』
 一同と目線は結ばれている。
 『今日、集散所で打ち合わせた結果を諸君等に伝える。今日の第一の課題は戦闘艇の客への引き渡し価格の決定。第二の課題はこれからの営業活動についてであり、第三の課題は我らが建造している船舶の品質の問題である。第一の戦闘艇の客への引き渡し価格は、これは集散所が決定することになる。価格は我らが集散所へ引き渡す価格とした。集散所が提示した価格は、我らに取って有利な価格であると判断しての決定である。その金額は後程一同に伝える。次の第二の営業活動については、戦闘艇の出来あがりの記念の売り出しをやることに決まった。それはこの通りである』と言って木板を一同に提示した。
 彼らはその木板に注目する、書き記してある文言を読んだ。
















































































































































『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1231

2018-02-26 08:00:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昼食を終えた二人がパン売り場に戻ってくる、売り場にはトミタスが待っている。
 オロンテスがトミタスに声をかける。
 『おう、トミタス殿、ご苦労。待たせましたかな』
 『いえ、そのようなことはありません。約束の文言を書き記した木板を持参しています。目を通していただければ幸いです』
 トミタスが文言がかかれた木板をオロンテスに手渡す。
 木板には、例の両刃の斧の焼印がある。書かれた文言に目を通すイリオネス、約束事が領域の広い言葉の文言で綴られている。
 手渡される木炭、イリオネスは、丁寧にサインを入れる。
 『トミタス殿、サインいたしました。木板を渡します。ハニタス殿によろしく伝えてください』
 『ありがとうございました』
 トミタスが売り場を去っていくイリオネスとオロンテスがこれを見送る。イリオネスは、キドニアにおける今日の仕事を終えた。
 業務を終えたイリオネスがオロンテスに話しかける。
 『なあ~、オロンテス。キドニアの集散所の歴史はどれくらいか知らないが、ある水準で商取引の手法をルーチン化している。今日の会談は、それに乗せられたというか、乗ったというかはわからない。生かさず殺さずではなく、相手を生かす共存の姿勢がうかがわれるところが憎い。物事をやる!成果が大きな結果を生むように仕組まれている』
 『そうですか』
 『会談の成果が我らに取って有利に展開したことは確かだ。利益を得るという目で見ると成果が確かである。そのあたりが重畳あるといえる。あの文言は、船舶を商っていくうえで必須の事柄が書き記してある』
 『そうですね。会談内容と結果は、我々にとってよかったと考えられます。軍団長の勘働きが冴えていました』
 『お前、なかなかほめ上手だな。誉める!それは相手を活かすということだ。このあとお前とオキテスが中心になってこの業務を遂行する。解ったな』
 『了解いたしました。明日、明後日のパンの受注も受けました』
 『そうか、それは重畳!俺は一足先に岸壁のほうに行く』
 『解りました』
 イリオネスは、岸壁へと向かう。
 オロンテスは、ここのところの好調なパンの売れ行きに気をよくしている。今日も持ち来たパンのすべてを売りきる。
 最後の客から、明後日のパンの予約を受けて、売り場を閉じようとする。
 客から声がかかる。思いがけない話である。
 『チョッと、尋ねるがよろしいか?船の事だ。船の試し乗りがしたい!出来るかどうかだ。四日後にその打ち合わせに来る。その都合を決めておいてくれ』
 『はい!解りました。打ち合わせの件、了承しました。お待ちしています』
 『おう、では、その時にな』
 客は言い残して去って行く、オロンテスは売り場を閉じる、帰途に就いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1230

2018-02-23 08:30:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 集散所の部屋をあとにした二人は、パン売り場に向けて歩を運んでいる、立ち止まる。
 『おう、オロンテス、今、頃合いは?』
 『はい、そろそろ昼めし時になります』
 『そうか、売り場によらずに広場へ行く。一緒に行こう、スダヌスが待っている』
 『軍団長、先に行ってください。売り場を見て、パンを持参して広場に行きます』
 『そうか、おう!』
 イリオネスは、広場に向かう、オロンテスはパン売り場に足を進める。
 広場ではスダヌスが待っている、陽が射しかける広場で汗を流して焚火を燃やしている。互いに姿を見とめる、手が降られる。
 『おう、スダヌス、待たせたな。すまんすまん』
 『いえいえ、待てば海路の日和です。オロンテス殿は?』
 『もう、来る頃だ』
 広場への出口に目をやるスダヌス。
 『お~お、来た来た!姿が見えました』
 イリオネスは、二人に気づかいするスダヌスの気持ちがわかる。
 『おう、浜頭、遅くなった、申し訳ない。久しぶりに元気な浜頭に会えるとは、幸いなるかなですな』
 『おう、オロンテス殿、いかがかな、元気ですかな?同じ屋根の下で仕事をしているのに、久しぶりとはな』
 『そりゃあ、しゃ~ない!同じ屋根の下で仕事をしていても歩んでいる道が違う』
 『おう、それは言えてる。俺は魚の道、お前はパンの道だ』
 浜頭が焚火に目をおとす。
 『おう、食べるものがいい具合に焼けている。昼を始めましょうや』
 『腹が叫んでるわい!』とイリオネス。スダヌスが二人に酒杯を手渡す、すかさず、酒を注ぐ、三人の昼食がスタートする。
 『おう、スダヌス、この魚、めっぽううまい!』
 『これからがこの魚の旬ですな。まだ、はしりですから充分にうまさがのっているとは言えませんが』
 三人がいい具合に焼けた食材を口に運ぶ、酒杯をあおぐ、パンをほおばる、昼めしに専念する。
 イリオネスが言う。
 『スダヌス浜頭、こうして昼をする。やみつきになるな』
 『そうですか、そういっていただけると、俺はうれしい!』
 オロンテスは、二人の会話の聞き役をつとめている。スダヌスが声をかけてくる。
 『オロンテス殿、いかがです?昼便のアレテスに日ごろ苦労をさせている、時たま三人で昼をしましょうや』
 『いいね!やりましょう。互いの絆が太くなる。いいことばかりで悪いことは一つもない!』
 オロンテスは、多くは言わないが、表情に喜びをたたえて応える。
 歓談がはじける、三人の心のコリがほぐされていく昼食であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1229

2018-02-22 08:03:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ハニタスがイリオネスに話しかけてくる。
 『イリオネス殿、ではそのように、この計画を集散所として進行させます。よろしいですね!早速、この旨をマリアの集散所に連絡します。よろしく願います』
 キドニアの集散所は、このクレタにおけるアエネアス方が建造する船舶の販売の主導権を掌握したのである。この件に関する話し合いが決着する。
 双方がまとまった案件を再確認をする。ハニタスがイリオネスに言う、ハニタスの宣言である。
 『では、イリオネス殿、そういうことで、集散所として、この業務を展開していきます』
 『了解しました。この業務の展開についての販売政策を承諾します。よろしく願います』
 イリオネスは、利益の獲得にウエイトをおいて、この話合いをしてきている。その目的を成就したことでよしとする。
 二人は手をさし伸ばす、ガキッと握り合う、極めて自然に二人は手を強く握り合う。
 互いの業務スタンスのあいまいさをなくして、業務伸展の約束をする。
 『イリオネス殿、今、話し合った約束事を木板に書き記して渡します。一枚を手元に残されて片方の一枚にサインを入れて返してください。大事な互いの約束事です』
 『解りました』
 『あとでトミタスにパン売り場に持参させます』
 二人は、ぶどう酒を満たした杯を打ちつけて、杯の酒を飲みほした。
 イリオネスがハニタスに声をかける。
 『ところで、ハニタス殿、業務展開の細部にわたる打ち合わせをやらなければなりませんな。当方ではオキテスとオロンテスが営業を担当しています。細部の打ち合わせについて連絡事項があればこれまで通り手配ください』
 『了解しました。話し合うべきことがもう一件ありましたな。やりましょうか』
 『話し合うというより、当方からの報告事項です』
 『うかがいましょう』
 イリオネスは、船舶の建造に関して、この仕事に携わっている者らの持っている思考と技術と心、彼らが欠点のないもの造りにかけている事を披歴する。
 『出来あがった船舶は、安心と信頼のおけるものです。そのことをマリアの集散所に伝えてください』
 『了解しました。イリオネス殿が言われた通りです。そうでなけれななりません。板一枚が生と死を分けているのです』
 イリオネスと集散所との話し合い、打ち合わせが終わる。
 イリオネスが営業航海の話をする、ハニタスがうなずきながら話を受ける、和やかに話が沸々と沸いた。
 イリオネスらに去る時がおとずれる、四人が握手を交わす、ハニタスが声をかけてくる。
 『イリオネス殿、今日は遠いところへ来ていただいて、ありがとうございました』
 『こちらこそ、ありがとう』
 二人は、うなずき合う、親しみのある目線を交わす、イリオネスは、集散所の応接の部屋をあとにした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1228

2018-02-21 08:21:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『イリオネス殿、それで建造されている戦闘艇の客への引き渡し価格ですが、要望されている金額は如何ほどと考えていられるのですかな?』
 『あらゆる面から試算した結果ですが、1950ドラクマから1980ドラクマくらいと考えています』
 『先日私らが船だまりで見た船ですな。漕ぎかたが24人という船の大きさからみて、中型の船ですな。船の大きさ、艤装、施されている新構造、船型から考えて、まあ~、妥当な価格と思われます。船を売っていくというスタンスで考えた価格設定でなければなりません。そうでないと客のほうで買おうと考えても、買われない価格ではだめです』
 『それは言われる通りです。このクレタ島の船舶の価格相場から考えて適正であると考えられる価格は如何ほどです?』
 イリオネスは、ここで語尾に『~かな』をつけようかつけまいかと考えた末、語尾を『~です』できる。ハニタスはイリオネスが問いかける言葉の語尾の強さに気おされる。しかし、ハニタスの折衝力はひるまない。そのうえ、集散所としての矜持もある。客も大事であり、船を建造して集散所に利益を提供してくれるアエネアス方も大事な業務の提携先でもあると考えている。
 双方が建設的に検討する。互いにその立場を考慮して話し合おうと話し合う。
 ハニタスが提案する。
 『イリオネス殿、集散所としての考えを私が述べます。一番目、集散所があなた方に支払う戦闘艇の価格を決定します。二番目、客に提供するサービスを考える。三番目、集散所として、期間を限定しての売り出し記念価格を設定して船の販売をスタートする。集散所としての通常の販売価格を設定しておく。以上が私からの提案です。検討していただけるかなです』
 『解りました、いいでしょう。これは一歩前進というところですな。売り出し記念ということで新艇も加えて、売り出し記念のセールを催行していただければと考えます。ハニタス殿、了解しました検討いたしましょう』
 イリオネスの頭のなかでは、船舶建造の事業体のありかたが、マリアで話し合われた形態でカタチづくられつつある。中型船の建造に特化して造船していくという方針にかたまりつつある。
 イリオネスは、この時、6か月後に訪れる民族のありかたに関する事変にはまだ気づいてはいない。
 彼の決断は速かった。ハニタスの提案する販売政策を承諾する。そのラインに乗って検討を進める、話のまとまりにスピードがある、即断即決で検討が進められていく、結果はイリオネスに取って有利に展開していく、最終的に、戦闘艇一艇当たりの集散所から受け取る金額が増大したのである。ハニタスの提案を快く受け入れた結果としてである。
 『重畳!』
 イリオネスは、声には出さず心の中で吠える。
 ハニタスとの話し合いにのっていった。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1227

2018-02-20 08:40:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『誉めてくれるのか、オキテス』
 『おう、そうよ!あの文言は素晴らしい!耳にしたとき鳥肌になった。あの一言を読むだけで俺らがどのような集団であるかの察しがつくというもんだ』
 『よいしょ!してくれるのか』
 『そうだ!誰にも考え出せないことだ、読む者の心を鷲づかみにする。あの文言、ひと言なのだが、力あふれる一言だ。あの一言で商談が決まる』
 『そのようにとらえてくれているのか。ありがとう』
 二人の対話が終わる。うなずき合う。
 パリヌルスは、オキテスのいる場を去っていく、オキテスは物事を考えながら、パリヌルスの背を見送った。

 集散所に着いたイリオネスは、スダヌスの売り場へと歩を向ける。
 スダヌスが売り場に立って、あれこれと指示している、売り場に立つスダヌスは、忙しい男である。
 イリオネスが来所予定を告げて、航海に同行の礼を述べる。
 スダヌスが微笑んで言葉を返す。
 『軍団長、昼を準備しておきます、広場で待っています』
 『おう、ありがとう』
 『オロンテスもつれてきてください』
 イリオネスは、パン売り場に立ち寄り、オロンテスを伴って集散所の詰め所へと足を運ぶ。
 ハニタスがイリオネスの姿を見とめる、席を立つ、近寄る、親しげに声をかける。
 『お~お、イリオネス殿、待っていました。このたびの営業航海ご苦労でした。マリア集散所との話し合い、試乗会の催行などなど大変でしたな。集散所から今朝、礼状が届きました。さ~さ、どうぞ、こちらへ』
 ハニタスがイリオネスを応接の部屋へ招じる、トミタスがぶどう酒の壺と酒杯を以って部屋に入ってくる、イリオネスに向かって丁寧に歓迎の挨拶をする。
 一同がぶどう酒を杯に満たして乾杯する。
 言葉を返すイリオネス、ハニタスがやや興奮気味に言葉をかける。
 『いやあ~、それにしてもあれですな、催行された試乗会がこんなに喜ばれるとは、私らが考えてもみなかったことです。ダントス所長、リドラス担当からひとかたならぬ言葉を尽くしての感謝の礼状です。私どもからも、心からお礼を申します』
 『マリアの集散所から、そのように言ってきていますか。そのように言われると試乗会を催行した私らにとってとてもうれしいことです。今日は営業航海の報告もありますが、先日、目にしていただいた、私らが建造している戦闘艇の客への引き渡し価格を検討して決定したいと考えています。マリア集散所方とも打ち合わせた件でもあります。また、ダントス所長と話し合った一件の課題の答も持ってきております。よろしく願います』、
 『了解しています、その件、早速、とりかかりましょう』
 イリオネスとハニタスは、新しく建造している戦闘艇の客への引き渡し価格の検討にはいった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1226

2018-02-19 08:12:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスのキドニア行きの朝が明ける。イリオネスが出航の浜に立っている、オロンテスらは荷積みに大わらわである、オロンテスの声が飛んでいる、荷積み作業の終了が伝えられる、出航の時となる。
 オキテスが姿を見せる、キドニアに行かない旨をイリオネスに伝える。オロンテスが出航を指示する。
 舟艇は、キドニアに向けて浜を離れていく、オキテスが波打ち際に立ってこれを見送る。
 見送りを終えてオキテスは、建造の場に足を向ける。
 あと7日、2艇の戦闘艇が完成する、業務が段取り通りに進んでいる、瞼に完成した戦闘艇の雄姿を思い浮かべる。
 ドックスが作業者ら一同を集めて、始業の打ち合わせをやっている。テムノス方の新艇の新舵構造の取り付け班の編成とその作業段取りの打ち合わせもしている。
 『おう、解ったな!』
 『はいっ!棟梁、了解しました』
 班長が答える。
 『いいか!作業は丁寧にやる。抜け落ちのないようにする。解ったな。これが図面だ』と言って、工作図が描かれた木板を手渡して、作業指示のクロージングをする。
 この情景に満足するオキテス、自分席の場所へと歩を向ける。
 今日の作業がスタートする。
 建造の場にパリヌルスが来る。
 『おう、オキテス、おはよう!』
 『おうおう、、おはよう』
 『お前、今日、キドニアへ出かけなかったのか』
 『おう、戦闘艇2艇があと7日で完成する。仕事が山場に来ている。いろいろと多忙だ』
 『なあ~、オキテス、今、建造中の2艇をテカリオン方に引き渡す、改めて、マリアから注文を受ける。途切れることなく仕事が続く。いいことだと俺は考えている』
 『おう、同感だ!それは言えてる』
 『ところで、ふと気が付いたのだが、パキオテ方、キドニス方に引き渡した新艇のことだが、この2艇に関する改造サービスについて、前もって考えておく必要があると考えている』
 『そうだな、新艇を引き渡した時期に差があるからな。パキオテ方に件については俺も気にかけている。了解した、その件について、俺なりに答えを出しておく。キドニス方の件については会議の時に話し合って対応を考えよう』
 『それからだが、戦闘艇の衝角構造体のことだ。航走時の効果だがそれについて詳しく考えたい。新艇に採用してはと考えている』
 『そうか、それはいいかもしれんな。それは、こんどの航海を振り返って検証の結果を思い出してみる』
 『それについては、また、話を聞かせてくれ』
 『解った。パリヌルス、会議で言っていた、あの文言なかなかいい。あれは感動もんだぜ!』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1225

2018-02-17 07:15:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、あれはとっても好評であった!営業のツールとして有効であるな。あれがあったればこそと考えさせられる場面もあった』
 『ほう、そうでしたか?そのような事例が、どのような場面で?』
 『見込みの客が艇上で艇の大きさ、帆柱の高さなどを、木板と首っ引きでうなずく場面があったな』
 『そうですか、ありがたいことです』
 『製作する余裕があるのか?建造が山場に来ている。製作できるようなら、製作してくれ!あれがあれば営業が活性する。各所に配布する。各艇50枚くらいづつ作成してくれ、いいな』
 『了解しました』
 『急いで作りました。というわけで雑な仕上げはNOだ!いいな!パリヌルス』
 『解りました。製作は丁寧に、気配りを忘れずにやります』
 『新艇および戦闘艇の仕様書きと図面の作成よろしく頼む!これは業務命令である』
 『軍団長、仕様書きの最後に、このような文言を書こうと考えていますがどうでしょうか』
 『何?どのような文言だ、言ってみてくれ』
 『我々が建造している艇の頑丈さを表す文言です。『使用、耐用100年のもの造りをしています』如何です?』
 『おう、なかなかいい!その文言を入れろ!パリヌルス、考えもよければ、文言の表現もいい!結果が良ければ、なお、いいということだ』
 『了解いたしました』
 話し終えてオキテスのほうに顔を向けるイリオネス、彼に声をかける。
 『ところで、オキテス、お前、明日はどうする?キドニアに行くか否やだ。行くとなれば、明朝、浜へ来る、いいな』
 『解りました』
 イリオネスが一同と目を合わせる。
 『では、これにて会議を終わる。オロンテス、明日の件、そういうことだ』
 『はい、承知しました』
 『おう、オキテス、テムノス方の新艇改造の件、パリヌルス、ドックスに伝えたか?』
 『はい、伝えてあります。出来あがり予定は明後日夕刻です。納入については、ただいま考え中です』
 『そうか了解!決まり次第打ち合わせをやる』
 『解りました』
 会議に会同した一同が、それぞれの持ち場に引きあげていく、今日の業務終業の頃合いとなっていた。
 アエネアスがイリオネスに声をかける。
 『おう、イリオネス、パリヌルスだが、なかなかいいことを言う。あの文言だが、頑丈さを表し、それを伝える、具体性があり、ズバリ、相手の心の中に入っていく、そして、我々のもの造りが納得しやすい』
 『そうですな、統領が言われるように、とてもいい文言だと思います。ですが、100年は、チョットオーバーですな』
 『ハッハッハ!いいではないか、解りやすい!』
 アエネアスが笑う、イリオネスも笑う、二人は笑いあった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1224

2018-02-16 08:06:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは確認口調でオキテスに話しかけてくる。
 『オキテス、ところでだ、今、我々が建造している戦闘艇だが、建造の品質、まあ~、簡単に言うと長期使用に関しての頑丈さだが、どんな具合だ?』
 『はい、結論から申し上げます。非の打ちどころがありません』
 『ほう、大した自信だな』
 『ドックスからの報告を受けて、私が再度確認しました。船舶を建造する事業者として、大いなる自信を確信するに到っております。建造の品質、頑丈さは問題はありません。何ら懸念するところはありません。また使用に関して、航走時における如何なる海上条件にも対応できる構造体で出来ていることを設計責任者であるパリヌルス隊長に確かめてあります。なお、これについてはこのたびの長途の航海において検証しております。これらの件について、現場において建造を責任担当している、ドックス棟梁にチエック状況を報告させます』
 ドックスは、戦闘艇の建造部材の品質、部材製作の正確調製、組み立て工作用金具等の適所使用、なお、この建造に携わっている作業者らの技術の水準、作業者マインド等についても詳しく説明にする。また、パリヌルス隊長の船舶建造思考の先進性、ドックスの船の制作時における配慮ある工作についても説明に及ぶ。
 『おう、よく解った。それについては、今、聴いたことを説明し集散所方が納得するように話す。任せてくれ』とイリオネスが一同に告げる。
 アエネアスが口を開く。
 『今、聴いた、オキテス、ドックスの説明で船舶の建造品質が確かであることを理解した。君らがこの船舶の建造にいかに心血を注いでいるかを知った。改めて諸君らに礼を言う、ありがとう!』
 イリオネスも感謝の念を込めた目線向けている。アエネアスが言い終わって、二人がうなずき合う。
 イリオネスが口を開く。
 『今、我々が決めた戦闘艇の引き渡し価格、我々が建造している船舶の確かな品質、我々が自信を持っている建造技術の確かさ、建造に携わっている者らの作業マインド、姿勢を伝える。いいな』
 このイリオネスの言葉を聞いて一同は拍手して大満足を示す。
 『オロンテス、俺は明日キドニアに出向く!以上だ』
 『解りました』
 言い終えたイリオネスの表情が和らぐ。話を続ける。
 『今日この場で話し合っておく用件があるかないか?ないようであれば、今日の会議はこれで終わる』
 パリヌルスが手をあげる。
 『おう、パリヌルスなんだ?』
 『軍団長、艇の仕様書き、図面の件です。営業のツールとして、効果的であるや否やですが、如何がでしたか?』