アヱネアスとイリオネスの会話は続いた。
『統領、腕のなまっている自分が見えますよ』
『そうか、一からやり直す。その気構えでいる。考え事をしていると忘れるのだ、感情を棚上げしていることをだ。やる気、気迫、決断は感情がエネルギーとなる。想いが物事を征していく、決断を下す情を育まなくてはな』
二人は広場への道を歩調を合わせて歩んだ。
トロイの民が居住を定めた地域は、現在、ニューキドニアと呼ばれている。文中では、現在の地名で語っていくことをお許し願いたい。
オロンテスら一行は、ニューキドニアの浜を出てキドニア(現在、ハニアと呼ばれている)の船だまりまで約8キロの回路を漕走していた。海は凪いでいる、微風である。漕ぎかたは片舷6人の12人、操舵手が1人、オロンテス以下5人、それにパリヌリス、オキテス、ギアスの総勢22人が艇上にいた。艇速は時速10キロ弱で波を割って進んでいた。キドニアの船だまりまで小一時間である。艇の上は静かである。誰も口を聞こうともしない。彼らは緊張の重圧に耐えていた。一陣の風が吹きすぎる櫂のしずくが頬に当たる。はっとする。はるかにキドニアの街区が見えてきた。
『隊長、あと少しで船溜だり着きます』とギアス。
『おっ!そうか』とオロンテス、オキテスが返す。海路の一時間は短かった。ギアスが大声で告げる。
『船だまりにはいります』
艇を荷下ろしの場に静かに寄せた。オロンテスがギアスに声をかけた。
『ギアス、荷運びに6人くらい助っ人を頼む』
『判りました』と答えて指示を出した。
陸に揚げた荷を前にして、彼は一同を見渡した。
『皆、聞いてくれ。今日、我々がする仕事は、経験のしたことのない、初めての仕事だ。俺も大変緊張している。何がどうなのかも判らない。先ずは、俺のやることをジイ~と見てついてきてくれ。失敗を恐れずに物事をやる。道はおのずから開けてくると、俺は信じている。以上だ』
オロンテス自身、何を言っていいか判ってはいなかった。彼は、その場で、その時に最善を尽くす、この期に挑む心意気であった。
彼らは、パンの入った大籠を背にした。
『統領、腕のなまっている自分が見えますよ』
『そうか、一からやり直す。その気構えでいる。考え事をしていると忘れるのだ、感情を棚上げしていることをだ。やる気、気迫、決断は感情がエネルギーとなる。想いが物事を征していく、決断を下す情を育まなくてはな』
二人は広場への道を歩調を合わせて歩んだ。
トロイの民が居住を定めた地域は、現在、ニューキドニアと呼ばれている。文中では、現在の地名で語っていくことをお許し願いたい。
オロンテスら一行は、ニューキドニアの浜を出てキドニア(現在、ハニアと呼ばれている)の船だまりまで約8キロの回路を漕走していた。海は凪いでいる、微風である。漕ぎかたは片舷6人の12人、操舵手が1人、オロンテス以下5人、それにパリヌリス、オキテス、ギアスの総勢22人が艇上にいた。艇速は時速10キロ弱で波を割って進んでいた。キドニアの船だまりまで小一時間である。艇の上は静かである。誰も口を聞こうともしない。彼らは緊張の重圧に耐えていた。一陣の風が吹きすぎる櫂のしずくが頬に当たる。はっとする。はるかにキドニアの街区が見えてきた。
『隊長、あと少しで船溜だり着きます』とギアス。
『おっ!そうか』とオロンテス、オキテスが返す。海路の一時間は短かった。ギアスが大声で告げる。
『船だまりにはいります』
艇を荷下ろしの場に静かに寄せた。オロンテスがギアスに声をかけた。
『ギアス、荷運びに6人くらい助っ人を頼む』
『判りました』と答えて指示を出した。
陸に揚げた荷を前にして、彼は一同を見渡した。
『皆、聞いてくれ。今日、我々がする仕事は、経験のしたことのない、初めての仕事だ。俺も大変緊張している。何がどうなのかも判らない。先ずは、俺のやることをジイ~と見てついてきてくれ。失敗を恐れずに物事をやる。道はおのずから開けてくると、俺は信じている。以上だ』
オロンテス自身、何を言っていいか判ってはいなかった。彼は、その場で、その時に最善を尽くす、この期に挑む心意気であった。
彼らは、パンの入った大籠を背にした。
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