『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  年末のご挨拶

2016-12-28 09:12:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
              いつもいつもこのブログにアクセスいただき誠にありがとうございます。
                        心から御礼申し上げます。
  
                  今年も残すところ、今日を含めて4日となりました。
                        ニューイヤーが訪れます。
                    新しい年、皆様のネクストは何でしょうか。
                 改まる年 皆様に押しよせる、多くのラッキーチャンス、
               ビッグハッピーの年でありますよう力いっぱい祈願いたしております。
                        2016年12月28日

                        執筆者   山田 秀雄 
                       編集担当   山田 萌愛 

           *年あけての投稿のスタートは2017年1月3日です。よろしくお願いいたします。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  937

2016-12-27 08:56:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ここは思案のしどころだ。なあ~、オキテス、どう考えるかだ。試作した艇は我々が使用するかもしれない。それともう一つは、自信をもって建造した船でなければならない。そうでなければテカリオンから金をとれない。俺らが考えを尽くし建造する船だ。これについては、試作艇といえども考えた仕様の用材を使って艇を造る。ドックス、お前の考えはどうだ?どうするかは、オキテス、お前が決めてくれ』
 ドックスは、オキテスそしてパリヌルスと目を合わせる、口を開いた。
 『発注した仕様の用材で試作艇を造りましょう。オキテス隊長には大変な世話をかけると思いますが、骨を折ってやってください』
 この言葉を受けてオキテスが応える。
 『よし!解った。明日、俺がガリダのところへ出かける!それが俺の答えだ』
 パリヌルスとドックスは、感謝の気持ちを目にたたえてうなずいた。
 『オキテス、大変な足労をかけるが、その件、よろしく頼む』
 『心得た!パリヌルスにドックス、明日の帰り船には用材を積んで帰ってくる。ドックス、それで段取りをくみあげて、仕事に取り掛かるようにしてくれ』
 『解りました。柱材のつなぎ構造については、のちほど説明します。柱材の先端の形状については、パリヌルス隊長よろしくお願いします』
 『おう、解った。オキテス、先端の突き先の尖りをどのあたりにするか考えよう。水面下のどの位置に突き先を位置させるかだ』
 『おう、その件か、ギアスが測ってくれた見当で戦闘艇の深さ構造を決める。あくまでも実験試作艇だ、びくびくせずに事をやる』
 『おう、解った』
 パリヌルスとオキテスは頭をつき合わせて互いに脳漿をしぼった。
 ギアスが測ってくれた見当を参考にして戦闘艇の深さ構造を設定して、水面下、水中の状況と効果を勘案して衝角構造の突き先の位置を決めた。
 『おう、この位置なら相手方の船のドテッパラを破砕できる。ヘルメスで測って確認してみる』
 ここに、戦闘艇構造の概要が決まった。
 パリヌルスは、決まった戦闘艇の概要を略図に描き、ドックスに渡す、じいっと目を凝らすドックス。
 『おう、ドックス概要は図面の通りだ。不明なところは聞いてくれ。詳しい図面はあとから仕あげる』
 『解りました。柱材のつなぎ構造、試作艇の建造工程および日程を書きあげ明日午前中に提示します』
 『おう、解った。オキテス、聞いての通りだ。いいな』
 『解った。了解!』
 三人の打ち合わせは終わった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  936

2016-12-26 14:42:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、ガリダに用材の手配をした控えの木板を小脇に抱えて歩いている。三人はほどなく用材の置き場についた。
 『おう。ドックス、まず、艇体の船底に使う底板を見る』
 『はい、解りました』
 ドックスが底板用の板材を手に取って二人に見せる。
 『おう、これか、パリヌルス、見てくれ』
 『ガリダに手配した底板材の板厚はどれだけかな?』
 その言葉を耳にしたドックスは、用材置き場にある用材の中から、手配した底板材の厚さに該当する用材を見つけ出し、オキテスとパリヌルスに手渡した。
 『ほう、これか』と言って、二人は手に持っている板材と新艇の底板に使った板材とを比べた。
 『おう、オキテス、これは使えないな。お前はどう思う?』
 『そうだな、差がありすぎる。ドックス、製材して使える原木があるか?』
 『あるにはあるのですが、原木は少しばかり細いと思われます。ガリダ方から調達したほうが、量の関係もあり時間的にロスがないように思われます』
 『解った。考える』
 『次にいこう。ドックス、次に見なければならんのは何だ?』
 『柱材の接続部分の接続構造と実寸との関係のチエックです』
 『よしっ!建造の場に戻ろう』
 三人は急ぎ足で建造の場に戻ってきた。
 『ドックス、柱材を採寸してくれ』
 『解りました』
 彼は、二本の柱材の採寸にとりかかる。
 『隊長!柱材は、二本とも長さが25キュビトと1スパンです』
 『パリヌルス、柱材は、二本とも25キュビトと1スパンあるそうだ』
 『おう、それだけあれば充分といえるな』
 ドックスが採寸を終えて戻ってくる、オキテスが声をかける。
 『ドックス、二本の柱材をつなぎ合わせるわけだが、強度を失わずに一本化しなければならない。いけるか?』
 『一本物より不安が付きまといますが、これだけの太さのある柱材です。充分に強度のあるつなぎ合わせが可能です。安心してください』
 『おっ!そうか。それは心丈夫だ。解った。その件はそれでよし!ガリダに手配した柱材の長さも採寸した長さと合致している。対処しなければならんのは底板材の問題だけだ』
 オキテスが、パリヌルスの目を見つめる。
 『パリヌルス、試作艇の船底のことだが、構造的に解決するか、考えた仕様の用材を調達して造るかだが、どうする?』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  935

2016-12-23 09:09:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスらは、ガリダらを見送り、一事を終えた。
 『おう、オキテス、万事、話がうまくいったというところだな。抜け落ちたところがないか、振り返ってみる必要がないではないと思うがどうだ?一緒に昼食のパンでも食べるか、ドックスもどうだ、つきあえ』
 『いいですね、付き合います。これからの段取りについても聞きたいと考えています』
 『おう、それがいい!俺の席で食べるとしよう』
 三人はオキテスの席の場へと向かう。
 『俺、パンを取りに行ってくる』
 オキテスが三人分の昼食のパンと葡萄酒をもって戻ってくる。パリヌルスとドックスは待ちかねていたようにパンを受け取り口に運ぶ、葡萄酒で腹に流し込む、三人はあわただしく昼めしを終えた。
 オキテスがドックスに話しかける。
 『おう、ドックス、建造用材の在庫を調べてどうだった?実験試作艇を作る用材がありそうか?』
 『それについては、充分といえるのですが、新艇の船底に使った用材の板のあつみでは、構造的に柱材に対比した場合には少々板のあつみがうすいのではなかろうかと気になります。懸念はそれだけです』
 『よし!それについては三人で見て検討する』
 『パリヌルス、三人で検討する重要なこと事はあるかな?』
 『そのことは今のところ考え中だ。何かといえば、柱材で削って仕あげる衝角の形状と柱材を二本をつなぎ合わせて、艇の長さに仕あげる、そのつなぎ構造について、三人で話し合わねばならないと考えている。この部分は非常に大事な部分であるだけに柱材の寸法を正確に測って考えねばならんと考えている』
 『おう、解った。検討、解決しなければならないところが三点というところだな。それらを考えて戦闘艇の深さ構造を考えねばならない』
 『おう、その目途さえさえつけばあとはドックスに任せて試作艇を造りあげればいいわけだ。ドックスそういうわけだ。解ったかな』
 『解りました。それでは、艇の底板に使う用材を見に行きましょう。それによって、手を打たねばなりません』
 『よし、解った!』
 パリヌルスとオキテスは同時に応え、三人は腰をあげ建造用材の置き場へと歩み始めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  934

2016-12-22 08:59:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ギアス、ようやってくれた!ご苦労であった。礼を言うぞ』
 オキテスがギアスに声をかけて、人のいる気配のするほうに目をやった。そこには、アエネアスとイリオネスの姿があった。
 アエネアスがガリダに声をかける。
 『お~お、ガリダどの、ようこそ!元気にお過ごしかな?』
 イリオネスもガリダを歓迎する言葉をかける。
 『あ~あ、統領に軍団長。いつもいつも多大な引き立てに預かりありがとうございます。このたびもオキテス隊長からの声がかりで来ました。よろしく願います』
 『おう、こちらこそだ』
 彼らはたがいに声をかけて打ち解けた。
 話を交わすタイミングを見計らってイリオネスがガリダに声をかける。
 『ガリダ頭領、さあ~、行きましょう。豪勢とは言えないが、ささやかではあるが食事の支度が出来ています。どうぞ』
 ガリダをいざなう、彼を囲んでいる一同が腰を挙げた。
 イリオネスがパリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、オキテスもドックスも来てくれ。そして、ガリダ方から来ている五人の連中もつれてくるのだ。事情はオロンテスから聞いている。食事会の場は統領の宿舎の前庭だ』
 『解りました』
 アエネアスら二人とガリダは歩き始める。パリヌルスとオキテスは、彼らにつれて歩を進める、ドックスは、ガリダ方の五人を呼び出し、タブタとともに歩を運んだ。
 食事の場ではオロンテスが支度を整えて待っている。一同の顔がそろう、アエネアスがガリダらに歓迎の言葉をかける、イリオネスの乾杯の声がけで食事会がスタートした。
 ガリダが歓迎食事会の礼を述べ、今回の戦闘艇の建造用材の受注の礼を重ねて述べた。食事会は長時間に及び深更に到って終わった。ガリダとタブタ、そして、五人の者たちに一つ屋根の宿舎が準備されていた。
 
 一夜が過ぎ朝となる。日々の業務が始まる、彼らの日常の業務は標準化されていて、その進み具合には戸惑いがない、業務に携わる者たちの声が響き、作業の進みが順調といえた。
 オキテスらとガリダらとの受発注交渉、打ち合わせ事の話し合いも順調にまとまった。
 『では、ガリダ頭領そういうことでよろしく頼む!』
 『オキテス殿、私が引き受けた以上、その結果に抜かりはない!任されたい』
 『おう、よろしく頼む』
 会同している者たちは相手の手を固く握り握手を交わした。
 彼ら一行は、アレテスの操船するキドニア行き第2便で帰途に就いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  933

2016-12-21 05:37:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ガリダ頭領、いま、パリヌルスが言ったように戦闘艇建造用材の件、それと製材担当の五人の派遣の件について当方はこのように対処しようと考えている。よろしいかな。用材の発注、五人の再度派遣要請について、明日、当方の意向を伝える。頭領の考えはいかがかな?聞かせていただければと思います』
 オキテスは語尾を柔らかく結んだ。
 『オキテス殿の考えはよく解りました。明日、こちらを去るまでに話し合って決める。それでいい』
 ガリダはオキテスと他の二人と目を合わせた。
 『オキテス殿、俺にしたい相談事とは?それについて話を聞きたい』
 『その件については、これから話し合う。パリヌルス、話してくれ』
 『おうっ!』
 パリヌルスは三人と目を合わせる、おもむろに口を開いた。
 『ガリダ頭領、実は、この柱材の先端に削り細工した石材を装着したいと考えている。その石材を細工してくれる者が頭領の知り合いにいるか、いないか。その件についての相談だが』
 『ほっほう、石材を削り細工して装着する!?私にはとんと話が見えないが、石に関する仕事をしている者を知らないことはない』
 『そうであれば、紹介してもらいたい。それが当方の希望である』
 『解った。パリヌルス殿、その件について。石材細工にいい腕を待っているものを紹介する、了解した。その者も私の配下として処遇してもらいたい。よろしいかな』
 『了解した。明日の話し合いの折に当方から頭領に対する正式の要請として申し入れる。よろしく頼みます』
 『解りました。よろしいでしょう』
 四人の相談事、話し合いは終わった。
 その時を見計らったようにギアスが姿を見せた。
 『オキテス隊長、先ほど隊長から指示があった吃水の件ですが報告いたします』
 ギアスはそのように言って、極めて簡単に線を引いて描いた木板をオキテスに手渡した。
 『おう、ギアス、ご苦労』と言って、ギアスから受け取った木板に目をおとした。
 木板には、ヘルメスの舳先部分が描かれ、二本の線が引かれている。ギアスが口を開き説明に及ぶ。
 『隊長、上の線が柱材がヘルメスの艇上にあったときです。下の線が二本の柱材を艇から降ろしたあとの吃水の線です。よろしいですか、二本の線の間隔は2スパン弱です。1キュビトに至っていません。以上です』
 オキテスは、ギアスの報告を受け取った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  932

2016-12-20 09:39:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ヘルメスによって運ばれてきた柱材が建造の場に引きあげられている。場の者たちが周りに立って見ている、彼らはその柱材の見事さに驚きの目を見張っていた。
 パリヌルスが感動の言葉を吐く。
 『おう、オキテス!これは素晴らしい!見事な柱材だな。感動ものだぜ!これだったらいける、オキテス、ありがとう。ガリダ頭領、ありがとう。もう戦闘艇が出来上がった気がする』
 パリヌルスは目を輝かせてのち、静かに目を閉じた。彼は、瞼の裏に鮮明にこの柱材を活かして造りあげた戦闘艇が波を割る姿を描いていた。
 柱材の傍らには、その全体像をぐっと見すえているドックスの姿があった。
 『オキテス隊長、これは見事な柱材ですな。これを艇体の中核材にして戦闘艇を建造する。立派に目的を全うする船が出来あがります』
 この光景を目にしたガリダがオキテスに話しかけてくる。
 『オキテス殿、関係者の方たちの柱材を見る目が異様に輝いていますな。俺らが提供する用材を見て感動される情景を見ると仕事冥利に尽きますな』
 そのように言って、うるっときた目をオキテスの目と合わせた。
 『おう、ガリダ頭領、ありがとう!礼を言う。この柱材を見た者たちがこのように感動するとは俺としても思いもしなかった。では、話し合いの場をつくる。こちらへ』
 オキテスはガリダを誘い、パリヌルスとドックスを呼んだ。
 彼ら四者の話し合いの場は、建造の場のど真ん中に位置するオキテスの席を場として四人が席をとって座った。
 『おう、パリヌルス、ガリダ頭領を迎えて話をするのだが、俺が進行役を務める、それでいいか』
 『おう、それでいい。やってくれ』
 『まず、今日明日のスケジュールを伝えながら話を進めていく、よろしいな。ドックス、戦闘艇の建造に必要とする用材の発注と打ち合わせは明日午前中に行う、詳細をまとめておくこと、いいな』
 『解りました』ドックスが答える。
 『次だが、パリヌルス、ドックスの二人に伝えたいことは、ガリダ方から派遣されてきている五人の件だが、これについてのガリダ頭領の要望を伝える。戦闘艇建造用材の調製のこともあり、彼ら五人を里帰りさせてほしいとの申し入れだが、この件については俺の一存で承諾した。ドックス、そのようなわけで用材の調製に関して彼ら五人と事前打ち合わせをしておいてほしい。そのようなわけだが、五人の派遣に関しては、再度、当方に要望があるようなら、その申し入れを受け入れると返事をもらっている。ドックス、お前、よく考えてくれ。明日、あさイチにお前の考えを俺に言ってくれ。パリヌルス、この件はそれでいいかな』
 『おう、それでいいとも。ドックス、その件については、建造工程および日程と照らし合わせて、オキテスと話し合ってよろしく頼む』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  931

2016-12-19 07:38:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『解りました。吃水の件ですね、オキテス隊長。状態状況に応じて、印をつけて作業が終わり次第、報告いたします』
 『おう、そうしてくれ』
 『解りました』
 『ギアス、解っていると思うが、この作業は非常に重要な作業なのだ。今度、建造する戦闘艇の構造における、深さを決めるのに重要な目安とする。頼むぞ』
 『了解しました』
 ヘルメスは、艇体を海に沈めて航行して浜に着く、波打ち際にできるだけ近づけて艇を停めた。
 ギアスが短剣を右手に持って、海へ飛び込む、彼は身を海中に浸し、ヘルメス艇の舳先の目立たぬ箇所に印をつけた。
 作業を終えたギアスは、オロンテスをはじめパン工房の一同に声をかけた。
 『みなさん、積み荷の関係で、これ以上浜に近づけることは無理です。海を歩いて浜にあがってください』
 『おうっ!』と応えて彼らはヘルメスから海中へと飛び込み、歩いて浜へあがった。
 彼らをおろしたヘルメスは、建造の場の浜へと移動していく、ギアスは慎重に操船して、舳先部の船底が海底に接したところでヘルメスを停めた。
 ギアスがオキテスに声をかける。
 『オキテス隊長。柱材の荷おろしの件ですが、私に任せておいてください』
 『おう、解った。柱材はかなり重い、充分に注意しておろせよ!いいな』
 『解りました』
 ギアスは、艇上にいる漕ぎ方全員に荷おろしの要領を説明する。一同が納得する。
 『お前ら、解ったな!よし!荷おろしにとりかかる』
 彼らは、一斉に柱材の荷降ろしに取り掛かった。
 柱材を舳先に向けて、艇上を移動させていく、それにつれてヘルメスを少しづつ後退させる、ヘルメスの舳先部が少しづつ沈んでいく、柱材の2分の1くらいが舳先の先に出る、ギアスが大声をあげる。 
 『ヘルメスを後退させろ!』
 漕ぎ方が『おうっ!』と声をあげて、櫂操作よろしくヘルメスを後退させる。柱材は難なく全体を舳先から海に滑り落ちた。
 『おうっ!』の歓声が一同からあがった。
 海に浮かんだ柱材は、その身の半分が海中にある。ギアスがオキテス隊長に声をかけた。
 『隊長、あとは建造の場の者たちに指示して浜にあげてください』
 『おう、解った』
 ギアスは、艇上に残る一本の柱材も要領よく海におろして荷降ろし作業を終えた。
 ギアスは、海中に身を投じて舳先に短剣で印をつけて一連の作業を終えた。
 ヘルメスは、建造の場の海から、定めている停泊地点に戻った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  930

2016-12-09 08:53:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ガリダ頭領から、それを聞いて安心しました。それから、頭領の言われた段取りの件ですがどのようですかな?』
 『おっ!そうかそうか、段取りか、それについて簡単に説明だけしておこうか』
 ガリダはオキテスと目を合わせる。
 『オキテス、それはだな。君のところへ派遣しているウチの者5人の件だ。彼ら5人を建造用材の打ち合わせに同席させる。そして、それら用材を納入するまで里帰りさせてもらう。それで再度、彼らの手を借りたいという場合は、改めて用材納入時に再び派遣する。それが俺の要望である。それで、お前のところの段取りを聞く』
 『おう、その件解った。承知した。用材に関する説明と発注は、明日の午前中を予定している。今日、浜に着いたら、ガリダ頭領を囲んでの相談打ち合わせを行う。その打ち合わせには造船担当のパリヌルスと船棟梁のドックス、そして俺、この四人で行う。それが終わって当方の統領と軍団長、オロンテスも加わって、ガリダ頭領の歓迎食事会の予定だ。派遣の5人も同席させようとも考えている。いいかな』
 『おう、了解した。オキテス、お前、四六時中、俺につきっきりということか』
 二人の話し合いが終わる。その時を見計らったようにパン売り場の一行が姿を見せた。
 オロンテスが小走りしてガリダ頭領に近づき声をかけた。
 『おっ!ガリダ頭領、元気そうで何よりです』
 『お~お、オロンテス殿、あなたも元気で何よりですな。オキテスに口説き落とされて、あんたがたの浜に行きく』
 『それはそれは、我々は、大歓迎です。さあ~、行きましょう。ヘルメス艇にどうぞ!』
 『おう、ありがとう』
 ガリダは、荷車を曳いてきてくれた一同と打ち合わせる、彼らは船だまりをあとにした。
 ガリダとタブタはヘルメス艇上の人となった。オロンテスが指示する、ヘルメスは船だまりを出ていく、櫂が海を泡立てる、帰途の波を割った。
 太い柱材2本を積んだヘルメスの吃水が深くなっている、漕ぎかたの連中は力いっぱいの櫂操作である、帰途の航海は、かなりの労苦を彼らに強いた。
 オキテスがギアスに話しかける。
 『おう、ギアス、お前に頼み事だ、聞いてくれ。いま、ヘルメスは柱材を2本を積んでいる。そして、艇の上には18人が乗っている。判るな。乗船人員35人としている、この艇の積載重量を少しだが超えていると考えられる。浜に着いたら、停船状態における吃水線の箇所に印をつけておいてほしい』
 『解りました』
 ギアスは、オキテスの指示するところを理解した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   題7章  築砦  929

2016-12-08 09:10:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス殿、製材の手配が終わった。館に戻って昼めしといくか』
 『ありがとうございます。遠慮なく馳走になります』
 『出来あがった柱2本、今日、持って帰るといっていたな。製材した柱だが結構重いぞ!船は大丈夫か?』
 『はい、それについては、大丈夫です。ギリギリだが荷積みの重さに耐えれると考えています』
 『俺とタブタ、二人も乗るのだぞ』
 『解った。タブタ、製材が出来あがったら、柱2本をキドニアの船だまりまで運び、船に荷積みしなければならん。人夫を16人くらい手配してくれ。昼を終えたら、そちらの仕事に取り掛かってくれ』
 『解りました』
 一同は製材の場をあとにする。館の庭には、昼食の準備が整っていた。
 『さあ~、オキテス殿、昼としよう。座ってくれ』
 『オキテス殿、今朝、羊肉のいいのが手に入った。旨さには自信ありだ』
 タブタが一同の杯に酒を注ぐ、ガリダが声をあげる、一同がのどを鳴らして飲み干す、食事が進む、ガリダが新艇の売れゆきについて聞いてくる、世間話に花を咲かせて昼食を終えた。
 彼らはしばらくの間を過ごす、製材の場から連絡が入る、タブタが受けて、頭領に報告する。
 『おっ!そうか、ご苦労!タブタ、人夫の準備できているか?』
 『はい、出来ています』
 『出発の準備をしてくれ。出来あがったらすぐに出発する。お前もキドニアに行く、いいな』
 『はい、解りました』
 荷車1台に積むのは柱1本である、2台の荷車でキドニアの船だまりに向かった。
 柱材1本の重量が800キログラム余りと想定される、荷積み作業の難しさが予想された。
 一行は、船だまりに着く、荷積み作業に取り掛かる、タブタとギアスが荷積みの陣頭指示をする、ヘルメスの漕ぎかたの連中も加わって慎重に荷積み作業を行う、無事にヘルメスに荷積みを終えた。
 ガリダとオキテスが作業を終えた者たちをねぎらった。
 『おう、ギアス、パン売り場の連中はまだだな』
 『はい、まだです。もう、そろそろだとは思いますが』
 オキテスがガリダに声をかける。
 『ガリダ頭領、今日はいろいろとありがとうございました。当方の希望した通りに柱材を製材いただき、そして、大勢の力を借りて無事、荷積みを終えました。ありがとうございました』
 『おう、オキテス殿、そんなに恐縮しなくてもいい、代価はちゃんといただく、ハッハッハ!そんなに気に掛けずともいい。我々にも客に対するサービスの気持ちがある。俺とお前だ、気持ちよくいこう』