『解りました。吃水の件ですね、オキテス隊長。状態状況に応じて、印をつけて作業が終わり次第、報告いたします』
『おう、そうしてくれ』
『解りました』
『ギアス、解っていると思うが、この作業は非常に重要な作業なのだ。今度、建造する戦闘艇の構造における、深さを決めるのに重要な目安とする。頼むぞ』
『了解しました』
ヘルメスは、艇体を海に沈めて航行して浜に着く、波打ち際にできるだけ近づけて艇を停めた。
ギアスが短剣を右手に持って、海へ飛び込む、彼は身を海中に浸し、ヘルメス艇の舳先の目立たぬ箇所に印をつけた。
作業を終えたギアスは、オロンテスをはじめパン工房の一同に声をかけた。
『みなさん、積み荷の関係で、これ以上浜に近づけることは無理です。海を歩いて浜にあがってください』
『おうっ!』と応えて彼らはヘルメスから海中へと飛び込み、歩いて浜へあがった。
彼らをおろしたヘルメスは、建造の場の浜へと移動していく、ギアスは慎重に操船して、舳先部の船底が海底に接したところでヘルメスを停めた。
ギアスがオキテスに声をかける。
『オキテス隊長。柱材の荷おろしの件ですが、私に任せておいてください』
『おう、解った。柱材はかなり重い、充分に注意しておろせよ!いいな』
『解りました』
ギアスは、艇上にいる漕ぎ方全員に荷おろしの要領を説明する。一同が納得する。
『お前ら、解ったな!よし!荷おろしにとりかかる』
彼らは、一斉に柱材の荷降ろしに取り掛かった。
柱材を舳先に向けて、艇上を移動させていく、それにつれてヘルメスを少しづつ後退させる、ヘルメスの舳先部が少しづつ沈んでいく、柱材の2分の1くらいが舳先の先に出る、ギアスが大声をあげる。
『ヘルメスを後退させろ!』
漕ぎ方が『おうっ!』と声をあげて、櫂操作よろしくヘルメスを後退させる。柱材は難なく全体を舳先から海に滑り落ちた。
『おうっ!』の歓声が一同からあがった。
海に浮かんだ柱材は、その身の半分が海中にある。ギアスがオキテス隊長に声をかけた。
『隊長、あとは建造の場の者たちに指示して浜にあげてください』
『おう、解った』
ギアスは、艇上に残る一本の柱材も要領よく海におろして荷降ろし作業を終えた。
ギアスは、海中に身を投じて舳先に短剣で印をつけて一連の作業を終えた。
ヘルメスは、建造の場の海から、定めている停泊地点に戻った。