『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1299

2018-05-31 09:32:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
今日の午後、現場を留守にしていたドックスは、終業のミーテングで作業の進み具合を念入りにチエックする。作業員一同に明朝の始業のミーテングを時刻を早めて行うことを伝えて業務を閉じた。
 ドックスはオキテスへの報告もれに気づく、オキテスの席へと歩を向ける。
 『オキテス隊長、些細なことですが、今日のキドニアにおける件で報告漏れがあります。船の建造に費消する金具類、また、工具の一部に別調整が必要としているものがあります。それらについても調製のうえ今月末までに納入してくれるように手配してあります。なお、決済についてはオロンテス隊長に依頼しました。よろしく願います。以上です』
 『おう、了解した。ご苦労であった。なあ~、ドックス、お前も俺もだが一挙手一投足を慎重確実にやっていく!細心注意してだな』
 『そうですね。それを肝に命じて、日々を務めていきます』
 オキテスはドックスと連れ立って夕食の場へ向かった。
 夕食を終えたパリヌルスら三人が、アエネアスの宿舎の前庭に個々に姿を見せる。そこにはアエネアスとイリオネスが彼らの来るのを待っている。
 『おう、一同、ごくろう!お前らおちついたか?』
 『興奮さめやらぬといった状態です』
 『まあ~、そんなもんだろう。すぐ覚めるわけではない。打ち合わせを始める。いいな』
 『はい、了解です』
 『おう、オロンテス、集散所で発注書きをもらった。その時のやり取りを簡単に説明してくれ』
 オロンテスは、集散所において発注書き受領時の説明をする。
 『そのようなことで、集散所の要望として、納入に関する諸事、納期を伝えてくれと言っています』
 『おう、解った。では、その件について打ち合わせる』
 『オキテス、受注戦闘艇2艇の納入について、現在の状況から考えて、どのようにするか、その意向を説明してくれ』
 『はい、只今、戦闘艇2艇の在庫は保有していません。これから建造するわけです。9月に建造する3艇のうちの2艇を引き合い対応の2艇として建造を計画していたわけです。受注戦闘艇の2艇の納入は、10月の月初アエネアス暦10月5日までに注文主方に納入いたします。なお、10月月初から予定されている船舶の記念売り出しと合致させて納入することにしています。これでもって売り出しスタートの弾みをつけようと考えています』
 『人間とは勝手なものなのだ。注文する、すぐ手にしたいと考える。それを考えて集散所と対応しなければならない。オキテス、オロンテスの両人は、営業担当として、集散所と納入に関する件を打ち合わせる。解るな!受注の承諾と納入に関する誓約をして集散所と取引の約束を交わしてくれ』
 『解りました』
 二人が唱和して応える。オキテスが言葉を続ける。
 『明日、キドニアの集散所に出向きます。今、言われた受注の承諾及び納入に関する誓約をして、取引きの約束を交わします』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1298

2018-05-30 06:22:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがドックスのキドニアでの事の次第を確かめる。
 続けて、パリヌルスら三人に声をかける。
 『建造の場に行こう』
 四人がアエネアスとイリオネスのいる建造の場へ歩を向ける。二人の前に立つ、オキテスが興奮を抑えられないでいる、うわずった声で二人に話しかける。
 『統領、軍団長、オロンテスが持ち帰ったでっかい知らせを聞かれましたか。口には出さないでいましたが、待ちに待っていた知らせです。うれしさこの上なしです』
 『おう、オキテス、オロンテス、そして、パリヌルス、お前らの苦労が実を結んだな、いい成果だ!感激に身が震える、喜べ!』
 イリオネスが感情をかくさないでいる、一同にかける声が潤んでいる。
 『おう、一同!我らの日々の出精が評価された気分だ。喜びを抑えられないでいる。自信を持って前へだ!』
 三人が口をそろえて返す。
 『解りました。脚下照顧、確実一歩、前進!』
 オロンテスが持ち返った知らせに五人は感動の極みにいる、場の変化に気づいていない、周りが見えていない、今日の作業を終えた者らがゾクゾクと集まってきている。
 三人が唱和した返事に周囲から拍手が沸き起こる、五人が周りを見回す、ドックスらがいる、ギアスらの一同がいる、今日の作業を終えた建造の場の者らがいる、彼らが周りを囲んでいる、再び拍手が沸き起こる。
 今や五人だけの喜びではない、場を囲む者ら一同の喜びである。
 アエネアスが手を広げ拍手を抑える、口を開く、大声を発する。
 『おう、一同!喜んでくれ。今日、かねてより集散所から船の引き合いが来ていた。それが確実受注となった。戦闘艇2艇の受注である!』
 アエネアスがここで言葉をきり、間をとる、場を隅から隅まで見回す、うなずく、口を開く。
 『全員で喜ぼう!ビバッ!』
 アエネアスは、感動の極みにいる、会同している全員に全身で喜びを伝える。
 『ビバッ!ビバッ!ビバッ!』
 『ビバッ!』の三唱が場に轟く、興奮が渦巻く、感動、感激で場が沸く、『ワオッ!』の喊声があがる、場が喜びに沸いた。
 今日の終業の時がおとずれている、ドックスが場の一同に終業を告げる、今日が終わった。
 イリオネスがパリヌルスらに声をかける。
 『お前らオロンテスから聞いていると思う。夕食を終えたら、統領の宿舎の前庭に集まってくれ。いいな。集散所に関する諸事を打ち合わせる』
 『了解しました』
 三人が口をそろえて応える、うなずくイリオネス、彼らも散会した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1297

2018-05-29 07:22:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
イリオネスがパリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルス、統領と俺だが小島に行く。昼は小島で済ませる。お前も来るか?』
 『いえ、私はこちらに用務があります』
 『そうか、解った』
 アエネアスとイリオネスは建造の場を離れていく、ハシケを使って小島へと向かう。
 浜は昼食時を迎える、浜全体が空腹を満たして和む、しばらくの間の時間帯である。
 それが過ぎて、午後の作業を追って時を費やしていく、仕事に励む、作業を遂行していく、日々の充実と生の励みがそこに存在していた。
 
 オロンテスが今日を終えて浜に帰り着く、建造の場に来る。
 『統領もおられる』
 『おう、オロンテス、ここが俺の日中の居場所だ』
 『そうですか、それは好都合です』
 オロンテスがイリオネスのいる方向に体を向ける。
 『軍団長、報告します。引き合いの発注が決定しました。統領も喜んでください。かねてよりの引き合いがあった船舶2艇の発注が決定しました。戦闘艇2艇が正式受注となりました。この木板にその旨が記されています』
 オロンテスは、集散所からもらってきた木板をイリオネスに手渡す。
 『早急に確実な納期を連絡してほしいとのことです』
 イリオネスが発注の文言が記された木板を見つつ、口を開く。
 『確実な納入の期日だな。了解した。夕めしを終えたら、統領宿舎の前庭に集合、打ち合わせをする。オロンテス、パリヌルスとオキテスにその旨を伝えてくれ』
 オロンテスは、イリオネスに今日の業務の成果を報告してオキテスの席に歩を運ぶ、パリヌルスもそこにいる。
 『おう、パリヌルスにオキテス、朗報だ!引き合いの船2艇の発注が決定した!集散所に納入日を伝えなければならない。夕めしを終えたら打ち合わせをやる。統領宿舎の前庭に集合!軍団長からの伝達だ。解ったな』
 オキテスが声をあげる。
 『何っ!引き合いの発注が確定したと!オロンテス。おう、やったぜ!パリヌルス、マリアからの引き合いが戦闘艇2艇に確定した。うれしい限りだ』
 オキテスが感動に震えている、オキテスがオロンテスの手を握る。
 『オロンテス、ありがとう!いい返事を持って帰ってくれた。これで俺らがやっている仕事に弾みがつく!パリヌルス、喜んでくれ、俺はうれしい、これでお前の顔もまともに見れる』
 オキテスがパリヌルスの手を握る、満面紅潮、目が潤んでいる。
 オキテスが大声でドックスを呼ぶ。
 『おう、ドックス!キドニアでの打ち合わせどうだった?オロンテスがでっかい知らせを持って帰ってくれた。船の引き合いが戦闘艇2艇の受注となった。ドックス喜べ、俺は大感激だ』
 『そうですか、それはよかった!うれしいです。キドニアでの工具、金具の手配、とどこうることなく打ち合わせを終えました』
 『それは重畳!言うことなしだな』
 『はい、そうです』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1296

2018-05-28 08:41:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
場に渦巻き立ち昇る、サクセスのアップスパイラル、彼らから湧きあがるワーキングパワーが場を興奮させる。
 イリオネスが傍らにいる、パリオネスとオキテスに改まった口調で話しかける。
 『おう、これで今月、そして、来月の活動の方向が定まった。自信を持って、9月、10月の態勢の準備にとりかかれる。何か話し合っておくことがあるか?統領からは、何かありますかな?』
 『今のところ俺からは、これといってない』
 『そうですか』と言って、イリオネスは、パリヌルスとオキテスと目を合わせる。
 パリヌルスが手をあげる。
 『おう、パリヌルス、何かあるのか?』
 『今、私が考えているのは、新艇の構造に関することです。この機会に新艇の性能を向上させればどうかと考えています。新艇の走行安定性を戦闘艇の走行安定性に近づけたい。そのように考えています』
 『ということは、どのように考えてだ?』
 『完成した戦闘艇の走行安定性が他船に類を見ないくらいにいい安定性です。戦闘艇の構造の長所を新艇に取り入れたいと考えています。合わせて貨物等の積載能力を向上させた新艇もどうかなと思考を巡らせています』
 オキテスがうなずく。
 『確かにパリヌルスの言うように戦闘艇の走行安定性は、ヘルメス艇に比べると走行の安定性が向上していることが感じられます』
 『パリヌルス、それは戦闘艇の如何なる構造が関係していると考えられる?』
 『私の考えるところでは、衝角構造体構造にあるように考えられることです』
 『そうか、そういうことか』
 イリオネスは首をかしげて考える。
 『解った。今月中に答えを出せ!いいな。それによって方針を立てる。今月末日に会議を開く、その時に決める』
 パリヌルスと話し終えたイリオネスは、オキテスと目を合わせる。
 『ところでオキテス、営業の活動方針を明確にする。新艇の構造に関しても考えねばならない。船舶の建造に関して船台の整備についての報告等もある。月末の会議の議題を考えておいてくれ』
 イリオネスは、パリヌルスとオキテスにそのように申し渡して打ち合わせを終える。
 ドックスが同行の2名とともにオキテスの前に立つ。
 『オキテス隊長、出発の時間になりました。私ら三名、キドニアの集散所に行ってきます。建造の場は指示通り作業が進行しています。帰りはオロンテス隊長の便で帰ります』
 『おう、了解!何かがあればオロンテス隊長に相談すればいい』
 『解りました』
 ドックスら一行は、昼便が出航する浜に歩を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1295

2018-05-25 08:18:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パキオテ頭領が姿勢を改める。。
 『アエネアス統領殿、いろいろとありがとうございました。このたびいただいた配慮の数々、厚く礼を申し述べます。私は、今日、キドニアの集散所に立ち寄り、用事を済ませ、帰途に就きます。今後ともよろしく願います』
 『パキオテ頭領殿、私らの浜にようこそ来ていただいた。礼を言います。帰途航海の無事を祈ります』
 アエネアスが手をさしのべる、その手を握るパキオテ頭領、互いの心が通じ合う、続いて、イリオネス、パリヌルス、オキテスと握手を交わす。
 『パキオテ頭領殿、これを持っていってください!』
 『おう、何だ?』
 『昼食用にと考えて、私らの窯で焼いたニュースペッシャルパンが入っています』
 『おう、そうか。ありがとう!オキテスどの、大変世話になった、また逢う日を楽しみにしてるぞ!』
 パキオテ頭領らが帰途に就く、アエネアスらが浜を離れ行く新艇を見送る。
 朝凪が終わろうとしている、海上を渡る風が西から来ている、海上の各所に波頭の風に飛ぶ波立ちを見とめる、パキオテ頭領らの追い風満帆の快走に思いをはせた。
 イリオネスがオキテスに声をかけてくる。
 『おう、オキテス、いろいろとごくろうであった。新舵構造の造作をしたドックスをねぎらっておいてくれ』
 イリオネスは言葉をきる、オキテスと目を合わせる、言葉を継ぐ。
 『8月も残り少ない、今日から、9月からの船舶建造態勢の構築に専念する。いいな』
 一拍の間をとる、まなざしを強める。
 『いい船を造って世に送り出していく、それには、極上の建造母体態勢でなければならない。解るな』
 イリオネスの目に力がこもる。
 『建造の場づくりの作業に従事する者らの智と力を結集して、いい船を建造する場を造ってくれ』
 『解りました。今、言われたことを肝に銘じて作業を進めます。ドックスからの上申もあります。彼は船を建造する船台を整備構築したいと言っています。今月中に建造の場が整います』
 『ほう、そうか、それは心強い!』
 『船舶の建造用材も体制整備に前後して納入されてきます。9月月初より戦闘艇及び新艇の建造作業を始めます』
 『おう、了解した。統領と俺だが、やる作業があれば何なりと言ってくれ』
 『そのようなことがあればよろしく願います』
 『この事業に我々全員が力を尽くすことを約束する!民族全員の総力をあげてだぞ!』
 その場にいるすべての者らがイリオネスの言葉に感動する、一同が歓声をあげる、場が沸きに沸いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1294

2018-05-24 07:22:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスが呼集した作業者らに今日の作業指示をする、一同が各々の担当部署に就く、彼らは9月からの建造態勢に備えての場の整備、工具類の整備、建造造作に費消する金具類の在庫チエック等、諸部門の業務を遂行していく。業務を統括するドックスは多忙である。
 ドックスは工具部門、金具部門を担当している班長の二人をキドニア行きに同道させることにしている。二人には正確に現状の把握を指示する。
 アエネアスとイリオネスが来る、パリヌルスも来る、四人が建造の場に顔をそろえた。
 パキオテ頭領が水夫頭を従えて建造の場に姿を見せる、オキテスが彼らを迎える。
 パキオテ頭領が四人に声をかける。
 『おはようございます。皆さん、そろっていられますな』
 『パキオテ頭領殿、おはよう。よくやすめましたかな?』
 『いろいろと世話になり、ありがとうございました。オキテス殿によくしていただきました。厚く礼を言います』
 イリオネスが声をかける。
 『オキテスから報告を受けています。用向きの新舵構造の取り付け造作、満足いただけましたかな?』
 『はい、昨日、試走もやりました。結果、満足しています。そして、いろいろと世話をかけました。我ら一同に昼、夕、朝食と三度までに及ぶ食事について世話をかけました。そのうえ、宿営の場の配慮までいただき誠にありがとうございました。重ねて礼を申し述べます』
 『いえいえ、どういたしまして、当方の意を受けていただき感謝しています』
 『ところで、オキテス殿、新舵造作の費用の件ですが、いかほどですかな?支払いいたしたく、その金額を言っていただきたい』
 パキオテ頭領の言葉を受けて、オキテスはイリオネスと目を合わせる。
 オキテスが答える。
 『パキオテ頭領殿、この件については当方の軍団長より返事を申し上げます』
 オキテスがイリオネスの顔を見る。イリオネスが口を開く。
 『パキオテ頭領殿、この件について説明いたします。当方の都合により、急遽、新艇に新舵構造を取り付けることになりました。そのような事情により、当方として無償にて、その造作をさせていただきます』
 『今回、重々の世話になり、新舵造作を無償にてしていただくとはあまりにも申し訳ない。その厚意に甘えていいのか迷います』
 『どのように考えても当方としまして、新舵造作の費用をいただくわけにはいきません。了承ください。この件については、テムノス浜頭にパキオテ頭領に伝えていただくように願っていた次第です。どうぞ、気にしないでください』
 『承知しました。喜んであなた方の厚意をいただきます。ありがとうございます』
 パキオテ頭領は礼を述べ、改めて、アエネアスのほうに体を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1293

2018-05-23 07:25:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスとギアスがパキオテら一行の宿営の場に向かって話し合いながら歩いてくる。
 オキテスが彼らに朝の挨拶言葉をかける。
 『パキオテ頭領殿、おはようございます。とってもいい朝です!よく休めましたか?』
 『皆さん!おはようございます』
 一同がそろっての唱和で『おはようございます』と返す。
 『おう、オキテス殿、おはよう!このうえなくよく眠った。さわやか気分だ!昨夕は馳走になったな、ありがとう礼を言う』
 『いえいえ、私らの気持ちです。ただいま、朝食の場を整えています。このギアスが担当しています』
 ギアスが声をかける。
 『パキオテ頭領殿、おはようございます。いい朝です。もう少々時間がかかりますが、場ができ次第私が案内いたします』
 『オキテス殿、世話になるな、朝食までとはな。そこまで気を使ってくれるとは、心から礼を言う』
 『なんの何の、これしきのこと気にしないでください。今回、このニューキドニアにおいでいただいたこと、我らが統領以下一同とても喜んでいる次第です』
 オキテスがギアスのほうに顔を向ける。
 『おう、ギアス、朝食の件、抜かりのないようにな』と声をかけて、パキオテ頭領と顔を合わせる。
 『パキオテ頭領殿、朝食を皆さんで楽しんでください』
 オキテスとギアスは、打ち合わせを終えて場を去っていく。
 オキテスは建造の場において、ドックスと打ち合わせる。
 『おう、ドックスどうだ?業務は、はかどっているかな。金具類の調達について考えがまとまったかな?』
 『いえ、まだです。完了には至っていませんが、目途はついています。ただいま、工具類について点検とチエックを入れています。今日、昼便でキドニアに行きます』
 オキテスの目を見る、言葉を継ぐ。
 『工具類及び金具類担当の者を同道させます。よろしく願います』
 『解った。浜にアレテスが寄るように手配済みだ。その刻になったら浜で待て』
 『オキテス隊長、船の建造に関して船台の構造を考えています。建造作業を進めやすいように、どのように整えればいいかを考えています』
 『解った。考えが固まったら、そうだな、設計図を作れ!それを見て考える』
 『了解しました』
 ギアスがパキオテ一行の朝食の接待を終えて建造の場に顔を出す。
 『オキテス隊長、パキオテ一行の朝食の件、終わりました』
 『おう、ごくろう!』
 『隊長によろしくとの言伝てです』
 『おう!』
 朝食を終えた作業者ら続々と集まってくる。ドックスが始業の招集をした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1292

2018-05-22 07:48:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス殿、重畳、重畳!』
 オキテスは、舵を操作していた水夫頭に問いかける。
 『水夫頭殿、いかがでしたか?舵の操作具合、きれ具合、船の反応等は?』
 『いい具合です。すぐになじめると思います』
 『そうですか、安堵しました。ありがとうございます』
 『おう、ドックス、客人方は操舵に関しての不具合がない様だ。ごくろうであった』
 建造の浜では、アエネアスとイリオネスも試走を終えて戻ってきたパキオテ方の新艇を迎える。
 二人はオキテスらが交わす談論を傾聴する。
 オキテスが傍らに立つギアスに問いかける。
 『おう、ギアス、夕食会の手配だが、うまくいったか?』
 『はい、もう準備にとりかかってくれています』
 『おう、そうか。夕食会には、軍団長、パリヌルス、ドックス、お前ら一同も参加しろ』
 『ありがとうございます。ちょっと人数が増えますね。そのことを伝えてきます』
 『おう、そうしろ!』
 ギアスが人数の件を伝えに走る。ほどなく、夕食会の準備が整う、ギアスがオキテスに報告する。浜の今日が終わる。
 オキテスがパキオテ頭領に告げる。一同を夕食会の場に誘う。
 イリオネスが夕食会開催の言葉を告げる。パキオテ頭領が乾杯の声がけをする、浜焼きスタイルの夕食会が始まる。
 参加者一同が歓声をあげる、夕食会が盛りあがる、汲み交わす酒が旨い、口にする食材も一同が喜んでくれている。
 供されるパンは、風味豊かなニュースペッシャルパンである、彼らは舌鼓を打って口にする、過ぎるときを惜しんで夕食会が終わる。
 パキオテ方の一行は、ニューキドニアの浜の一隅に宿営する。
 『頭領、今日は何かと多忙でしたね。ごくろうでした』
 『お前もご苦労であった。しかし、オキテスも気を使って、ようやってくれたな。感謝、感謝だ!おいっ!寝るぞ!』
 パキオテ頭領と水夫頭が寝につく、身を横たえる水夫頭、瞼を閉じる、眠気がすぐにはやってこない。
 夜空を見あげる、満天に星が降るように瞬いている。
 宿営の場には、レフカオリ山から吹きおろしてくる秋を感じさせる涼風が海に向かってそよいでいた。
  
 ニューキドニアの朝が明ける。
 パキオテ頭領一行が浜の朝の活気に気づく、昇る太陽、射しこんでくる陽射し、彼らが起きあがる、展開している浜の風景を眺める。
 昨夕、顔を合わせた者らが各所にいる、海での水浴、朝行事を終えて浜にあがってくる者らの姿がある。
 浜に立っているアエネアスらと朝の挨拶を交わしている。オキテスやギアスの顔も見える。
 パキオテ頭領は、彼らの日常の朝の風景を眺めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1291

2018-05-21 07:59:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス隊長、今日のコースどりは、通常コースどりの逆コースどりで航走します。沖に吹いている風は東から来ています』
 『そうか、了解!コースどりはお前に任せる』
 一行を乗せた戦闘艇は建造の浜を離れていく、右手側からの風を受けて北上していく、20スタジオン(1.8キロ余り)くらい沖に出る。
 ギアスが慎重に風を読む、東から来ている風の風向は、やや北寄りの東風である。次いで風力を読む、帆走にほどいい風力と想定される。航走予定時間は一刻くらいである。
 ギアスは、あと少し沖に出て方向を転換しようとコースを決める。
 艇が方向転換地点に到達する、風はすこし強さを増している。
 艇の進行方向を西へと転じる、風ハラミを考えてやや南方向へと進行方向を調整する、帆張り、風のはらみ具合を見る、状態に満足して帆走をする。
 戦闘艇は、性能をいかんなく発揮する、波を割る、しぶきを風に飛ばす、追い風満帆、快調に海上を駆けた。
 その航走状態は、艇上の客人らを驚かせ、他船との差異を感じさせる。
 艇は小島の西岸に沿って南下する、南端に到って、進行方向を東に転じて、一刻余りの時間をかけての試乗航走を終えて浜に帰り着いた。
 艇を下りたパキオテ頭領、水夫頭らとオキテスは、試乗航走の感想談を交わす。
 『オキテス殿、新しい船を試乗させてくれて、ありがとう。いい船に仕あがっている。テムノス浜頭が言っていた通りの試乗感であった』
 『そうでしたか。ありがとうございます』
 『オキテス殿、夕食の件だが、言葉に甘えていいかな。世話になる』
 『そうですか、安堵しました。私らの気持ちを受け取っていただいて感謝です』
 ドックスが歩んでくる。
 『オキテス隊長、新艇の新舵構造の造作が終わりました。試走してくださってよろしいです』
 『おう、そうか。ごくろう』
 『パキオテ頭領殿、新舵構造の造作が終わりました。試走されますか?』
 『おう、新舵の造作が終わったか、ありがとう!早速、試してみる』
 パキオテ頭領が水夫頭に声をかける。
 『水夫頭、新舵の造作が終わった。試走する!準備してくれ』
 『はい、解りました』
 水夫頭が水夫ら一同を呼びに走る、造作を終えた新艇を海にだし、海と親しませる、出走の準備が整う、オキテスとドックスが同行する、新艇が浜を離れていく。
 水夫頭が戦闘艇の試乗コースをなぞって試走する、オキテスが試走のコースどりを案内する、小島の北端で進行方向を転換、西岸を南下して浜に戻ってくる。
 パキオテ頭領と水夫頭がオキテスに話しかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1290

2018-05-18 07:49:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
パキオテ頭領ら二人は、オキテスとともに建造の場に立つ、ドックスが近づいてくる、オキテスに問いかけた。
 『オキテス隊長、櫂舵はどのようにするか、聞いてくれますか』
 『おう!』
 オキテスは櫂舵の件について、二人に問いかける。
 『それは、今のままでいい』
 『解りました』
 『ドックス、櫂舵は、そのままでいいそうだ』
 昼食を終えたギアスがオキテスの傍らに立つ。
 『オキテス隊長、一行との昼食の件、終わりました。一行から感謝の言葉をもらっています。以上です』
 『そうか、ごくろう。ところで、ギアス、これから客人らを乗せて戦闘艇の試乗をする。全員を集めて準備をしてくれ。時間都合もある、即刻やる』
 『解りました』
 『準備ができたら俺に連絡してくれ』
 『了解しました』
 ギアスは命令を受けて、完成した戦闘艇の試乗航走の準備に取り掛かる。
 オキテスは、パキオテ頭領と段取りの打ち合わせ、その後のパキオテ方の予定についてたずねる。
 『オキテス殿、これからの段取り、了解した。今夜はこちらの浜で宿営する。明日、キドニアでスダヌスに会う。それで帰途につく、そういうことだ』
 『解りました。そういうことでしたら、今夕の夕食会の段取りをします。一夜ですがくつろいで下さい』
 『オキテス殿、心遣いありがとう。言葉に甘えていいか、どうかについて迷っている』
 『頭領殿、そのような遠慮はなしにしてください。私らに任せてください』
 『おう!』
 パキオテ頭領の迷いは、吹っ切れていない様子の『おう!』である。
 オキテスは、頭領の傍らに立つ水夫頭に声をかける。
 『水夫頭殿、これから新しい船の試乗をやります。頭領と頭、それに四、五人ですが水夫の方に乗っていただくようにしています。もう準備が出来あがります。水夫らを連れてきてください。この建造の浜から航走に出ます』
 『解りました。直ぐに水夫らを連れて、こちらに来ます』
 間をおくことなく、水夫頭が五人の水夫を連れて場に戻ってくる。
 ギアスから準備完了の報告が届く。
 『準備ができました。頭領行きましょう』
 一行が試乗する戦闘艇に向かう。
 案内されて戦闘艇に乗りこむ、艇に乗った彼ら一行は、新しい船の各所を興味しんしん、注意深く見つめる。
 『おう、オキテス殿、いい船だな!試乗させてもらう。ありがとう』
 『パキオテ頭領殿、一刻余りの試乗です。15スタジオンくらい沖に出て航走します。楽しんでいただければ幸いです』
 『おう!』
 オキテスがギアスに出航を指示する。
 『おう、ギアス、いつものコースどりで航走してくれ』