漁師は、オデッセウスの目の鋭さと、その風貌、言葉と口のきき方から、オデッセウスの身分と事情をさとったらしい。漁師は、承諾を態度で示した。承諾に時間をかけなかったのは、一日の時間帯で舟で海に出るタイミングは、今しかない。対岸までは、約30キロメートルあり、2時間くらいの行程である。漁師は、オデッセウスと打ち合わせを終えると、家の者を大声で呼び、水夫たちに、急いで舟を出す旨を伝える手配をした。漁師は、オデッセウスとメネラオスとともに浜に急いだ。
風は、急ぐ三人の背中を押している。北よりの東風であった。
メネラオスは、歩きながら考えていた。陸路をたどり、南のポリス、ミレトスに行くとすれば、どれだけの日数がかかるか見当がつかないのである。道中の危険と路銀のことを考えると、生きて行きつくことが果たしてできるか。この際、アンテノールの計画で、海路をとることが、良策であり、安全策であると判断していた。
風は、急ぐ三人の背中を押している。北よりの東風であった。
メネラオスは、歩きながら考えていた。陸路をたどり、南のポリス、ミレトスに行くとすれば、どれだけの日数がかかるか見当がつかないのである。道中の危険と路銀のことを考えると、生きて行きつくことが果たしてできるか。この際、アンテノールの計画で、海路をとることが、良策であり、安全策であると判断していた。