『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1174

2017-11-30 08:25:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『解りました。その意義と発想の原因と状況について理解し、納得しました。問題は、この船舶等の事業が将来どのような形態になるのかですな。そのことに私らの対処のありかたを考えねばならないということです。そのために皆さんが私らに力を貸して下さるということですかな』
 『そうです、所長!所長は理解も早い、そのうえ物事の読みにも深さがあります』
 『エドモン浜頭、そのようなことで『よいしょ!』されると照れるじゃありませんか』
 『この状況が進展していく、船舶の建造とその販売のありかたが変わります。それを考えれば、その変革がこのクレタ島においても変わるということです。大船は別として、中小の船舶は建造のやり方が変わり、それの取り扱い、販売のやり方も、それにつれて変わるということです』
 『浜頭の言われることが解ります。どのような形態になると考えられますかな?』
 『それは、船を造る側、売る側の役割ですな。今の現状をみると船を造ることはアエネアス側がやる、彼らは、売るという機能を持っていません。売るという技術を持っていても機能を持っていなければ、船という商品は売るということはできません。また、私ら側としても、彼らに売る機能を持たせないということにもなります。船を売ることは集散所がやる。それを売る集散所もマリアとキドニアの集散所に限定して、これをやるということです。まあ~、クノッソスの集散所の引き合いに関しては販売はマリアが代行していく。そのようにすればと考えます。いかがですかな』
 『そのように言われると話がカタチになって見えますな。集散所はほかにフエストス、ザクロスにもあります。これらについてはどのように考えますかな?』
 『これについては、客をマリアまたはキドニアの集散所に回してもらうということになります。この船という大型の商品は、売り方、取り扱い方、特に売り方については、当マリア集散所、キドニア集散所が今回の経験で集散所として、その機能を駆使して販売の知識、技術を持つにいたるわけです。現状では他の集散所が持っていない知識であり、販売の技術です。五つの集散所がありますが、この船という商品の売る知識と技術は、マリアとキドニアの集散所が持つのです。この船という商品の販売業務をマリアとキドニアの集散所がやるといったカタチで業務をやるということになります』
 『おう、エドモン浜頭、テムノス浜頭、そして、スダヌス浜頭、この件よくわかりました。この事業形態と実務の遂行について考えます。それを踏まえて実行決断をしましょう。三方の熱情、その思考に感じ入りました』
 ダントス所長は、三人と目線を絡ませ、力を込めて手を握り合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1173

2017-11-29 08:30:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 別室に移動したダントス所長と浜頭連は席に落ち着く、エドモン浜頭が所長に声をかける。
 『ダントス所長、紹介します。私らが仲間内として親しんでいるこちらが、スオダの浜を取り仕切っているスダヌス浜頭です。キドニアの集散所で売り場を持って活動しております。見しりおきください』
 スダヌスが立ちあがる、所長と目を合わせる、口を開く。
 『エドモン浜頭より紹介された、スダヌスといいます。今後、よろしく引き立てのほど願います』と言って、数歩、進み出て所長に近づき手をさしのべる、所長が立ちあがる、手を伸べる、二人はガッシと手を握り合った。
 『マリアの集散所の所長を務めるダントスです。よろしく!』
 二人の挨拶が終わる。
 ダントス所長が浜頭連に言葉をかける、
 『この島のクレタ海に面した西のキドニア、中央のクノッソス、東のマリア、三集散所の浜頭連とのつながりができたというところですな。互いに連携して将来に向けて発展していきましょうや』
 『そうですね、よろしく願います』
 エドモン浜頭が、三浜頭を代表してダントス所長の言葉を受けて応える。
 『ダントス所長、私ら三人が強い絆で連帯してマリア集散所の発展に力を尽くしてまいります』
 『ありがとう!心強い言葉、しかと受け取りました。よろしく願います』
 四人は、配されているぶどう酒の杯を手にする、顔を合わせる、口に運ぶ、一気に飲み干す、目を合わせる。
 ここに 四人による新しい連帯が誕生した。
 エドモン浜頭が姿勢を正す、ダントス所長に身体を向ける、おもむろに話しかける。
 『所長、私ら三人は良き知り合いの仲です。日常の業務、仕事を通じて連携しています。そのつながりで互いが結ばれている仲です。そもそも、マリアの集散所と話し合っておきたいと問題を提起したのは、テムノス浜頭なのですが、その話を聞いて、私としてうなずける点があり、これはほっておける問題ではないと認識した次第です。それで今日の面談話し合いとなったわけです』
 『ほう、そうですか、浜頭。その要因、意義、対応について伺わせていただきたい。それが私の気持ちです。それを伺って対応を考えましょうや』
 『テムノス浜頭の問題の提起は、今回のイリオネス殿側のマリア集散所での船の試乗会催行について『よっしゃ、それならひと肌脱いで力を貸してやる』に発しているのです。その相談を受けて『これから船舶の売買の形態が変わる』といった想いの発想です。この問題の根本的な原因は、マリア集散所からのキドニアの集散所への船の引き合いです』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1172

2017-11-28 08:21:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 リドラス担当が話を継いでいく。
 『それで当方に船の引き合いをしてくれているお客の二方を優先して試乗してもらいます。また、ほかに将来新船を求められる、これはとおもわれるお客に連絡案内しています。どれだけのお客が来られるかについては、これはわかりません』
 『そうですね。私らは力いっぱいの試乗サービスに努めます』
 『この種の催事は、私らにとって、初めてであり、その要領は全く不明です。催行の一切を任せます。キドニアにおいては、たびたびやっておられるとの由よろしく願います』
 『解りました。これについては任せてください』
 『新艇なる船については、キドニアの集散所と仕様並びに価格に到るまで打ち合わせ済みです。新しい戦闘艇については、その詳細をキドニアの集散所とは、まだ打ち合わせておりません。そのあたりについては、どのような方針で客対応されるかを説明いただきたいのですが』
 『はい、その件については、私らは、あくまでも商品である船の説明にとどまります。価格については、現在のところ原価計算の真っ最中といったところです。これについては、キドニアの集散所と話し合い検討のうえで決定する予定です。半月後には決定します』
 『解りました。いいでしょう』
 『私ら側では、求められる船主の皆さんにとって、充分に安心していただける価格に決めたいと考えています。試乗会では、船の価格には一切触れず、商品説明に徹して試乗会を催行してまいります』
 『了解いたしました。明朝、マリアの港の係留岸壁にて試乗会を催行いたします。よろしく願います』
 『解りました。係留岸壁にて、私ら一同、待っております』
 『では、明日の試乗会開催の件の打ち合わせをこれで終わります。ほかに聞いておきたいことはありませんね』
 『試乗会の開催に関する留意事項よくわかりました。明朝、会場において、リドラス担当長、並びに係りの方に船の実物を見ていただいて、充分に理解していただけるよう説明いたしますよろしく願います』
 『解りました。その時間都合を考えて係留岸壁のほうへ行きます』
 『待っております』
 イリオネス、オキテスが声をそろえて返事する。
 イリオネスとオキテスは、リドラス担当長といろいろと船舶に関する雑談を交わして一時を過ごした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1171

2017-11-27 08:32:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭からの指摘を受けて、イリオネスはオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、例の図面をリドラス担当長にーーー』
 オキテスは『はい!』と答えて、携えてきた新艇と戦闘艇の図面をリドラス担当長に手渡す。
 『ほっほう、これはこれは船舶の図面ですな。船は二種類ですかな?』
 『はい、そうです。このたび引き合いをいただいた船は、こちらの船です。こちらの船は、船主の方からの注文を受けて、只今、2艇を建造しています。来月の初めに完成を予定しています。これが私らの現在です。なお、引き合いいただいている船は、発注いただければ、一か月以内には引き渡し出来ます。よろしく願います。私は建造部門と営業を担当しているオキテスといいます』
 緊張してのオキテスの説明が終わる。
 『解りました』
 リドラス担当は、ダントス所長と顔を合わせる。
 『所長、このあとは、明日の試乗会催行の段取り及び取引に関する要件について、イリオネス殿と話し合います。所長は、どうぞ、自由にしていただいてよろしいです』
 『お~お、そうか』
 所長は、話し合いの場の成り行きを感じ取り、エドモンとテムノス両浜頭のほうに身体を向け、うなずき合い話しかける。
 『エドモン浜頭、テムノス浜頭、この場はリドラス担当とイリオネス殿に任せて別室に行きましょう。積もる話を伝えたい』
 『解りました』とエドモン浜頭がダントス所長に応じる。
 所長が立ちあがる、リドラス担当長に声をかける。
 『リドラス担当、明日の試乗会の件、明日の段取りと対処、その他要件をイリオネス殿と打ち合わせてくれ。両浜頭と俺は席を外す、決定事項はあとから聞く、よろしく頼む』
 テムノス浜頭がスダヌスに声をかける。
 『スダヌス浜頭、俺ら二人はダントス所長と別室にて話し合う。同席してくれ』
 『解りました』と応えて、両浜頭に同道して応接の部屋を退席する。リドラス担当が所長と二言三言打ち合わせて、所長を見送る、リドラス担当が席に戻る。
 『イリオネス殿、失礼しました。明日の試乗会催行の要領、営業業務の展開等についての段取りを打ち合わせをやりましょう』
 『解りました』
 『イリオネス殿、船はどちらに停めていられますかな?』
 『はい、正確な地名を知っていませんが、マリア港の係留岸壁に停めています』
 『そうですか、それは好都合です。明日の試乗会の開催は、港の係留岸壁にて催行するように段取りしています』
 『そうですか、それは都合がよろしかったですな。なお、明日、現場を見ていただいて、係留場所が最適の位置かどうかを見てください。催行の適地に係留仕直します』
 『了解しました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1170

2017-11-24 07:57:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 話がテムノス浜頭のほうに振られてくる、一同を見まわす、おもむろに話し始める。
 『私の方ですか』
 『そうです。話の起こりがテムノス浜頭殿の方にあるのではないかと察していますが、いかがですかな?』
 『所長、いい勘をしていられますな。いかにもそうです。私の方ではこの一か月前にイリオネス殿の方から船を買いました。それが縁です。そのようなことでイリオネス殿から相談を受けました。そのようなわけならエドモン浜頭に相談をしようというわけで、このような仕儀になったというわけです』
 『ほっほう、そうですか。私らの関知しないところで事が動き、今回の船に関する引き合いの絆ができていたというわけですな。いいですね。私らの業務の展開のステップ、足がかりとなります。リドラス担当、君の思惑はいかがかな?』
 『はい、これは、今、発生している船の引き合いに、いい足掛かりになると考えられます。エドモン、テムノス両浜頭の推薦とあれば、引き合いをしてくれている方らの船の購入に関しての安心度が違ってきます』
 『そうか、そのようなプラス要素が考えられるか。エドモン浜頭、テムノス浜頭、よろしく頼みます』
 『解りました。私ら二人がいることで役に立てるとあれば、二人は力の出し惜しみは致しません。協力を約束します』
 『リドラス担当、今回の取引きがいい結果となることは間違いない。イリオネス殿、いいことづくめです。リドラス担当のほうより、明日の試乗会開催の件を聞いています。よろしく願います』
 『はい、解りました』
 イリオネスは、ダントス所長の話を耳にして、集散所側の明日の計画ができていることを察知した。彼は話の進め方を頭の中において再構築した。
 リドラス担当長が話し始める。
 『そもそも、今回の船に関する引き合いが、どのような状況で発生したかを話します。考えられる状況は、このたびの引き合いをした方が港において、テムノス浜頭殿の船を見ての引き合いではないかと考えられます。また、半月前くらいですかな、パムテキオから2本帆柱の船が来港しました。それも関係しているのではないかと考えられます。この木板に描かれた船を見てください』と言って、船の姿が描かれた一枚の木板が担当長の手によって提示された。
 『お~お、これです、私が購入した船です』
 テムノス浜頭がその木板に描かれた船を見て声を出した。
 エドモン浜頭がイリオネスと目を合わせる、イリオネスに話しかける。
 『イリオネス殿、例の図面を持ってきていますかな?』
 『はい、持ってきています』
 『そう、持ってきているのなら、今、渡されたらいいのではないかな』
 『はい、解りました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1169

2017-11-23 09:07:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 席に腰を下ろしたダントス所長がエドモン浜頭と目を合わせる。口を開く。
 『エドモン浜頭、今日は、ようこそ、おいで下さいました。話さなければならない話、山積とはいかないまでもけっこうあります。ゆっくり過ごしてください』
 挨拶を終えて、所長は、テムノス浜頭と顔を合わせる。
 『テムノス浜頭、久しぶりです。お変わりなく元気に過ごされている様子何よりです。ゆっくりしていただければ幸いです』
 所長は二人に挨拶を終えて、席についている一同と目を合わせる、おもむろに話しかける。
 『冷えたぶどう酒です。温かくなります。冷たいうちに、それで喉を潤してください』
 その言葉を耳にした全員がぶどう酒が満たされた酒杯に手を伸ばす、口に運ぶ、一気に飲み干す。
 『お~お、これは旨い!旨いぶどう酒ですな。しぶみがなく、のど越しのいいぶどう酒ですな。馳走になりました』
 エドモン浜頭が飲みほしたぶどう酒をほめる、喉を潤したエドモン浜頭が所長に言葉をかける。
 『ダントス所長、紹介いたします。今日一緒にこちらへ伺ったキドニアからの客人のイリオネス殿です』
 イリオネスが立ちあがる。
 『私は、キドニアの地で船舶の建造をしていて、その部門を統括しているイリオネスと言います。よろしくお願いいたします。どうぞ、これに目を通してください』と述べて、携えてきた紹介の文言を記した木板を所長と担当長に手渡して、丁寧に低頭する。
 『お~お、そうですか。キドニアの集散所から連絡を受けています。あなた方の来駕を待っていました。私がこのマリアの集散所の所長のダントスです』とイリオネスに名乗り木板に書いてある紹介状を読み下す。
 『イリオネス殿、解りました。よろしく願います』
 紹介状の文言をすでに読了していたリドラス担当長が口を開く。
 『私が当集散所において、船舶等の商品を取り扱っている部門を統括しているリドラスです。よろしく願います』と挨拶をする。
 所長がエドモン浜頭に声をかける。
 『それにしても驚きですな。エドモン浜頭がイリオネス殿と一緒にこの集散所に来られるとは、私らの思いもよらないところです。そのうえ、テムノス浜頭も一緒に来られたことにも驚いています。そのあたりの因縁については、また、話の途中で伺うことになると思います』
 エドモン浜頭がこれにこたえる。
 『あ~あ、これについては、あなた方の思いもよらない因縁があります。語ればちょっぴり長い。そういうことです』
 『テムノス浜頭のほうは、いかがですかな?』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1168

2017-11-22 14:04:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~お、イリオネス殿、解りました、いいでしょう。集散所と話し合う用件も決まりました。いい頃合いです、集散所の詰め所のほうへ行きましょう』
 『解りました』
 エドモンら二人の浜頭、イグデスがたちあがる、イリオネスもたちあがる。
 今夕の夕食と明朝の朝食の食材を手配に出向いていたオキテスとスダヌスの二人が戻ってくる。
 イリオネスが二人に声をかける。
 『おう、両人!戻ってきたか、ご苦労!お前ら、いいタイミングだ。今、集散所のほうへ挨拶に行こうとしているところだ。同道してくれ。オキテス、例のものを持参してきてくれ』
 『はい!解りました。夕食および明日の朝のパン、副菜等の手配をしてきました』
 『了解、ご苦労であった』
 一行六人の顔がそろう。エドモン浜頭が声をかける。
 『おう、そろったな、行くぞ』
 一同が歩み始める、エドモン浜頭とテムノス浜頭が先頭に並んで歩む、集散所の売り場の通路を歩を進める、売り場の者らと顔を合わせる、彼らは丁寧にあいさつをしてくる、その者らにこたえながら二人は歩んでいく、連れて歩を運ぶ四人を好奇のまなざしで見つめる。
 一行六人は集散所の詰め所の戸口に立つ、中にいる者がその来訪に気づく、奥の方の席にいる男性が立ちあがる、足早に戸口に向かって来る。
 『お~お、エドモン浜頭、おいでになりましたか。所長が待っております』
 『お~、そうか。待たせたか、わるかったな。リドラス担当長、待たせたかな。いい話は人を待たせるものです。リドラス担当長も同席してください。今日の私らは、キドニアからの客人の同行です』
 『そうですか。応接の部屋に案内いたします。私は所長と一緒にすぐ来ます』
 リドラス担当長は、一人の男に一行の案内の指示をする。
 一行は、いい風の吹き抜けていく、眺めのいい庭に面した部屋に通される。
 エドモン浜頭は、イリオネスに席を進める。
 『イリオネス殿、この席にかけてください。オキテス殿はその左隣の席にどうぞ』
 イリオネスの座した席より、2席をとばして、エドモンとテムノスが腰を下ろした。続いて、スダヌスとイグデスが席に腰を下ろす。座席に囲まれたテーブルには、係りの者がぶどう酒を満たした杯を運んでくる、テーブル上に配置して去っていく。
 集散所のダントス所長とリドラス担当長が応接の部屋に姿を見せる、エドモン浜頭が立ちあがる、テムノス浜頭も立ちあがる、一同がそれにならって立ちあがる。
 所長が席に腰を下ろす、一同がそれにつれて腰を下ろした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1167

2017-11-21 08:20:01 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ところで、イリオネス殿、キドニアの集散所から、紹介状をもらってきたといってましたな』
 『はい、2通もらってきています』
 『その紹介状を見せていただけるかな』
 『はい、この2通です』
 イリオネスは携えている2通の紹介状をエドモン浜頭に手渡す。その紹介状は、キドニアの集散所が発行したことを示す焼印が押された木板に木炭を使って書かれた紹介状である。
 『ほっほう、集散所公式の紹介状ですな。一枚は所長あてであり、もう一枚は担当長あてですな。キドニアの集散所の懸命さが察せられますな。先ほど、この二人に食品売り場に向かう途中に会いました。昼から会おうと耳打ちしてあります』
 『そうですか。キドニアの集散所のハニタス担当が集散所の駅伝を使って、連絡をしてあるといっていました』
 『ほう、そうですか。それは好都合といえる。船舶の引き合いは二件でしたな』
 『はい、そうです』
 『私らがイリオネス殿に同道していると知ったら所長が驚きます。いいでしょう。なかなか手回しがいい。集散所も準備を怠りなくやってくれていると思います。直ちに段取りの話ができるというもんです。挨拶を交わしたあと明日の試乗会開催の段取りの打ち合わせといきましょう』
 『解りました』
 『集散所もその見込み客に連絡はしていると考えられます。船の受渡し価格の件については、どのような話になっていますかな?』
 『価格の件については私らのほうは一切かかわらないということになっています。とにかく、私らが引き渡す船を納得していただくよう紹介することに徹することにしています。新艇の価格については集散所のほうで話がついているのではないかと考えています』
 『そうか。戦闘艇のほうは?』
 『戦闘艇のほうの価格はまだ決まっていません』
 『了解しました。価格は、船を求める者にとって、購入意思決定に重要な要点です。あなたの方と集散所が検討して決めると考えられるが、求める客にとって絶対ともいえる安心価格であることを購入を希望する客に伝えることになりますな。それでいいでしょう』
 『私らのほうでは、クレタ島における船舶の取引価格の動向はどうなのか、それについてエドモン浜頭殿、テムノス浜頭殿、そして、集散所方の意向をいただいて帰りたいと思案しています』
 『解りました。イリオネス殿の方にそのような意向があることを、今、伺いました。その件については、このエドモンにお任せください。それを話し合う機会を設けましょう』
 『そうですか、ありがとうございます』
 『明日、試乗会のあとにその話し合い、意見交換を集散所方とやりましょう。船の価格決めに参考となる動向を伝えることができると考えられます。マリアの集散所のほうとしてもキドニアの集散所と意見の交換をすると考えられます。それを考えの中に含んでおいてください』
 『了解いたしました。当方としても、原価の試算をいたしております。そのあたりをしっかり見極めて、各方と意見を交換、検討して、購入される船主の方に喜ばれる安心価格を打ち出していきたいと考えています』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1166

2017-11-20 08:18:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一同の昼食が終わる。
 ゴッカスは新舵構造の説明にエドモン浜頭のもとへと歩を運ぶ。エドモン浜頭はテムノス浜頭と笑みを浮かべながら何事かを話し合っている。
 ゴッカスがエドモン浜頭に来意を告げる。
 『エドモン浜頭殿、新舵の構造説明に伺いました』
 『おう、ゴッカス、新舵の構造説明に来てくれたのか、ありがとう。ここにいる一同が君の説明を聴きたいと待っている。よろしく頼む』
 『解りました。私は、皆さんが乗ってこられた試作戦闘艇の操船を担当しているゴッカスです。説明がうまくできるかどうかは自信がありませんが、新舵の構造について説明いたします。聞いてください』
 ゴッカスはエドモン浜頭と目を合わせる、彼はやや緊張気味である。短い棒切れを持参してきている、彼は地面上に舵構造の図を描いての説明が理解しやすいのではとの心遣いである。
 イリオネスが傍らに控えている。
 ゴッカスは、新舵の主要部である水切り板の説明から始める。
 彼は、持参してきた棒きれで地面上に、舵の主要部である水切り板の図をやや大きめに描く、その図を棒きれで指し示しながら説明する。
 『そうですね、水切り板は、簡単に言えば1枚の板にすぎませんが、それを用立てて使っています。この水切り板を動作させる軸棒の前部を水切り部、後部をヒレ部としています。それを軸棒を操舵棒で操作して動作させて船の操舵をして舵取りをしているわけです。新舵の構造の全体はこのような構造です』と述べて舵構造部の全体図を棒きれで描いて説明する。
 『ほう、そうか』
 『操舵棒を操作することによって、海中で水切り板が同方向に動作します。その動作によって船尾が動いて、舳先が反対方向に海面を割り、方向を定めて走行します』
 『君の説明で新舵構造の理屈が理解できる』
 『ありがとうございます。そのように言っていただけるととてもうれしいです』
 『この新舵構造の効果期待は、船の大小によって異なります。小さな小船、ハシケくらいから四、五人乗りくらいの小船では、進行方向に直角に動作させれば、制動作用を果たします。大きな船ではそのような動作をさせることは出来ません。それは大きな船の走行する力に抗しきれないからです。大きな船では走行の方向制御のみの操作です』
 『ほう、なるほど、お前の言うことにうなずける。走行しているいる船を止めることは簡単にはいかない』
 『私のつたない説明で分かっていただけたでしょうか?』
 『おう、解った。お前の説明で十分に理解した。納得した。ありがとう。理を知ればこそ、その操作を確実にやってのけれる。また、これから君らの業務に協力するうえで必要な知識でもあるわけだ』
 エドモン浜頭は、ゴッカスに礼を言って、イリオネスのほうに体を向ける。
 『おう、イリオネス殿、新舵構造を納得できる説明をゴッカスがしてくれた。ありがとう。礼を言う。一同、昼食を終えたかな?』
 『はい、終えております』
 『イリオネス殿、では、集散所への挨拶の段取りと要領を話し合おう』
 エドモン浜頭は、イリオネスと目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1165

2017-11-17 15:25:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行はマリアの集散所に着く、イリオネスにとっては久しぶりに目にする風景である。あの時に目にした風景が、ふっつ、ふっつと思い出される。
 オキテスがイリオネスの傍らに歩み寄る、オキテスにとっては初めて目にする光景である。彼は集散所の敷地に足を一歩踏み入れてたまげている。
 『お~っ!何という人の多さだ。軍団長、キドニアの集散所とは集っている人の数が違います。驚きです』
 『クノッソスとはちい~と違うが、キドニアとは賑わいの度合いが違う。また、語る機会には語ってやる。今は、やるべきことに集中しろ』
 『解りました』
 マリアの集散所の敷地の広さ、建物の構造、内部構造、間取り、敷地の区割り等の設定は、キドニアの集散所と瓜二つといえるくらいによく似ている。
 両集散所の違いは、集散所を利用する人の数である。マリアの集散所を利用する人の数は、キドニアの集散所を利用する人の数に比べてはるかに多いであろうと感じられた。
 スダヌスがテムノス浜頭、イグデス、そして、二艇に乗り組んでいる漕ぎかたの連中を連れて集散所の中庭に昼食の場を設定する。
 『イリオネス殿、人員総数は何人くらいかな?』
 『65人分くらいです』
 エドモン浜頭は、イリオネス、オキテスの二人と話し合いながら、昼食のパンとつまみ類を調達する。オキテスがイリオネスから預かっているドラクマ銀貨で決済する、おつりは集散所の木札で受け取る。
 買い物を滞りなく終える、伴に連れてきた者に持たせて、スダヌスらの待つ昼食の場に来る。
 『エドモン浜頭殿、世話をかけました。ありがとうございました』
 オキテスが要領よく昼食の場を指示して整える。
 『一同!昼食です。さあ~、始めてください』
 彼らの昼食が始まった。スダヌスが座を立ってオキテスのそばに寄ってくる。小声でささやく。
 『俺が一緒に行く、ぶどう酒か何か飲み物を準備しに行こう』
 『そうだな』
 スダヌスとオキテスが座を離れていく、間をおかずして、二人は客人用にぶどう酒を、漕ぎかた連中には軽飲料を準備して戻ってくる。
 昼食はにぎわった、飛び交う話は航海談義であり、集散所の想像談義である、その談義もオキテスの一語で幕を閉じる。
 『ギアス、グッダス、カイクス、三人で一同を連れて集散所を見学して来い。船の留守役の昼めしを持っていくことを忘れるでないぞ。解ったな』
 ギアスが船の留守役四人分の昼食を整えて、漕ぎかたの一人に運ばせる。たどたどしいながらも昼食が終わった。
 オキテスがギアスとゴッカスを呼び寄せて、昼からの段取りを打ち合わせる。
 『我々は多人数で今夜はマリアに停泊するわけだ。宿営の準備をしなければならない、解るな。今夕の夕食と明朝の朝食のことだ。パンの数も並みの数ではない。スダヌスに助けてもらって準備する。それを係留の浜に運ばねばならん、解るな。漕ぎかた連中を10人くらい引き連れて、太陽がこの高さくらいの頃合いにこの広場へ来てくれ』
 オキテスが腕を伸ばして太陽の高さを示す。
 『解りました』
 ギアスは、グッダスとカイクスと打ち合わせて、漕ぎかた連中を三隊に編成して、集散所の見学に向かう。
 ゴッカスは、エドモン浜頭のもとへ新舵構造の説明に向かう。。
 オキテスはスダヌスを連れて、今夕の夕食と明朝の朝食の調達に歩を運んだ。