『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  136

2013-10-31 08:13:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスは、先住の彼らとのつながりを良好に保ち、率いる民族の営みについて考えていた。課題とするところは『これから』であった。彼にとっては率いるトロイの民全員が家族であり、家中の者たちと位置づけている。その一族郎党の事業が『建国』なのである。彼はこれを成し遂げる任を負っており、統領として君臨し、彼らの頼うだる人であった。彼らは、アヱネアスに絶大の信頼を寄せて従っていた。
 イリオネスは、パリヌルス、オキテス、オロンテスの三人を呼んで、課題である『これから』について、スダヌスをはじめとする客人たちと話し合うように指示をした。
 『彼らとの話し合いの場をつくる。いいな』
 場は、統領の宿舎の前庭に造られた。
 民族が営みを続けていくうえでのあらゆる諸事について、もれのないように慎重に多方面にわたって話し合った。パリヌルスら三人は、彼らの役務に応じて『これから』の構築を思考して話し合った。
 陽が高みにさしかかってくる。話し合い終わり、客人たちの帰るときとなった。彼らには念を込めて焼き上げられたパンが手みやげとして提供された。
 スダヌスは大喜びである。ダルトン、ハニタス、ガリダの三人も、アヱネアスらの隔意なき厚意にあふれるもてなしに感じ入っていた。アヱネアスらは招客の礼を尽くして見送った。
 『統領、ご苦労様でした。内輪だけの小宴と考えていたのに、盛大な祝宴になりましたな』
 イリオネスは、アヱネアスの労を心からねぎらった。
 『よしっ、お前たちもご苦労であった。明日の会議にいい案をつくって発表してくれ。俺も考えをまとめるが、お前らのつくる案を優先する心算でいる。いいな!』
 『いいな!』の締めくくりに力がこもっていた。三人は気持ちを引き締めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  135

2013-10-30 08:22:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日は広場で全員がそろって朝食をとる手筈になっている。その準備にオロンテスはじめ部員たちが大わらわで当たっていた。昨夕の宴のたき火跡に焚き火をしてシマができていた。すでに主食のパン、副食材が配されている、乾杯用の酒も用意されていた。
 朝食を知らされる木板が打ち鳴らされる、皆がそろうのに時間はかからなかった。アヱネアスの言葉で朝食が始まる。
 『諸君っ!おはよう!』
 一同から歓声が上がる。一同が手にしている杯に酒が注がれていく、アヱネアスが一同を見渡した。
 『我々は、今、ここに新しい場に立って、新しい朝を迎えた。新しい第一歩を踏み出す朝だ。力強く第一歩を踏み出せっ!乾杯っ!』
 彼は、声高々と雄たけびをもっての檄を叫んだ。一同は一気に飲み干す、間髪を入れず、歓声で答える、歓声が轟きこだました。アヱネアスは言葉を続ける。
 『諸君に伝える。我々は、こちらの皆さんにえらくお世話になった。スダヌス浜頭とその浜衆、この地の土豪の頭ガリダ殿、ダルトン、ハニタス浜頭、皆さんありがとう。心から礼を言います。また、スダヌス殿、昨日は祝いの品をいただき誠にありがとう。深く礼を言います』
 言葉が終わるか終らないうちに一同の大歓声が轟いた。
 『さあ~、一同!朝食をいただこう』
 この一言で朝食が始まった。朝食のパンは、日常口にするパンとは違い、丹念に焼き上げられたオロンテススペッシャルであった。
 『これは、旨いっ!』スダヌスの大声の第一声で始まった。ダルトンが言う、『お前、遠慮のない大声だな。お前の言うとおりだ。このパンは旨い!』
 『旨いっ!』『旨いっ!』の言葉が朝食の場にとびかった。旨いパンを食しての笑顔の交歓である。
 この朝食はスダヌスにとって、旨いパンを口にする至福のひと時であったのである。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  134

2013-10-29 08:13:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 陽が昇る、闇が払拭され、朝となる。夕陽はつるべ落とし、朝陽の昇り方が速い、曙光が射してくる、太陽の全姿の昇りきる時間が短い、あっという間である。長さの単位 スタジオン を決めた季節は、春、夏、秋、冬、どの季節であったのだろうか、それは定かではない。
 アヱネアスは、陽の出がたまらなく好きなのである。玲瓏の朝の気を裂く曙光、身を浸す海、昇る朝陽に祈る、沸きあがる意志力の高まりを感じる。明日につなげる今日を考える朝行事の時を過ごす。また、朝行事の行き帰りにすれ違う、行き交う、その時に交わす『おはよう』、この一言が限りなく好きであった。交わす『おはよう』の短い語彙の中に、互いの今日と明日が凝縮されて、詰まっている。共有している運命、彼らと共にしている一体感をも感じていた。『おはよう』は、彼の祈りでもあった。彼が過ごしたトロイ、エノスに比べて浜までの道のりが長い、その間に、すれ違い、行き交う人の数も多い。それだけ彼の祈りの量が増えたといっていい。『おはよう』は、彼らの情感を感じ取る一瞬である。彼は『おはよう』の短い言葉かけを大切にした。
 彼は、今日もユールスを連れての朝行事である。パリヌルスと彼の取り巻き数人の一群が来る。
 『あっ!統領、おはようございます』
 『おう、おはよう』
 『昨夕はありがとうございました』
 『おう、パリッ、昨日の酒はうまかった、実にうまかった。お前と酌み交わしたのは久しぶりであった。あれしきの事は、礼には及ばん、当然のことだ。俺の為すべきことなのだ』
 あいさつを交わして、パリヌルスは浜へと向かう。顔見知りとすれ違う、自分は知っていない、しかし、相手が俺を知っている、『おはよう』に心を込めて挨拶を交わす。
 スダヌスも息子たち、浜衆たちを連れて朝行事にやってくる。今朝も朝行事で浜はにぎわった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  133

2013-10-28 07:56:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『いやいや、そうではない、考え事だ。ハニタス、何か用か?』
 『土豪の頭ガリダが話したいといっている。それで呼びに来た。こっちに来て飲め!』
 『今、いいとこだったのに気持ちが残る。しかし、これも娑婆の付き合いか、しょうがねえのう』
 スダヌスは呟いて座を立った。
 あれやこれやがあって宴は終盤に至ってきていた。
 イリオネスがアヱネアスに話しかけた。
 『統領、宴が終わりに近づいています。統領の方で何か都合がありますか?』
 『いや、これと言って考えてはいない。軍団長、場をしめてくれていいぞ。客人の事もなんだが、皆、楽しんでくれたかな。明日からは新しい一歩だ。軍団長、一歩前へだ、いいな』
 『判りました。肝に銘じております』
 二人の短い話のやり取りが終わった。イリオネスは、焚き火のシマを巡りながら皆と顔を合わせていった。小隊長格の者に、二言、三言指示を与えて、シマを巡っている。彼は、アレテスたちのシマに来た。
 『おう、アレテス、このたびはご苦労であった。お前、怪我はしなかったな、重畳重畳。宴がはねたら小島に帰るのか』
 『え~え、そうです。それが、今の私の任務です』
 『そうか、よろしく頼む。あの小島の事だが、俺たちが、このクレタで生活をしていくうえで重要な役割を担っているように思える。私はそのように考えている。帰る道中、気を付けていけ』
 『ありがとうございます』二人は、硬く手を握り合った。
 宴の場には、したたかに酔っている者が多かった。ほとんどの酒樽の酒は飲みつくされている。肴類も食べつくされている。彼はシマを巡り終えて戻ってきた。客人たちを小屋の一棟に案内し終えて、アヱネアスと言葉を交わして、全員に終宴を告げた。
 『軍団長、ご苦労、いい宴であった。さあ~、終わろう』二人は並んで広場を見渡した。
 焚き火の残り火、たむろする小グループ、焚き火を囲んでの雑談。彼らは過ぎしを語り、今を話す。そして、明日を話し、笑う、わめく、それぞれの宴の後の風景がそこにあった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  132

2013-10-25 08:46:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスは女と目を合わせた。彼の身体を衝動が走った。彼は迷った。本能のおもむくままに行為に及ぶか、ここは抑制すべきかについて迷った。いち物は別人格的な性格の人体の機器である。その人体の機器が猛ってきていた。彼は、その別人格的な機器の制御に苦しんだ。周りには、アヱネアス、イリオネス、浜頭連、そして、他人の目もある。彼は周囲の目を気にした。彼は猛ったいち物を、どのようにしてなだめようかと思案した。彼は、自分のやった、ちょっとしたしぐさを思い返した。
 『女のあそこ、秘所に触れるのではなかった。だがだ、ここで躊躇しては男ではない。する、やめる、こらえる、少しばかり触らせる、ううっ!』
 気持ちを他の方向に向かわせて気をそらせる。それがこの場の礼儀だろうと判断した。彼は、潔く思いを定めた。行為はやめる、少々触らせることでいいとした。
 『まあ~、このような場だ。しょうがね~』と思い定めて、女の手を取って、いち物に誘った。女は拒ばなかった。女は、スダヌスの猛っているいち物を柔らかな手で握った。
 『まあ~、すごい!本人とは別の生きものみたい。脈打っているわ』
 女は、スダヌスの耳に口を寄せて小声でささやいた。
 『こんなところでは気が引けるわ。宴が終わったら、また、来てあげるわ』と言って握ったいち物をやさしく揺さぶりながらしごいた。彼の気分が昇揚してくる。
 『おい、女、気持ちがいい、グッド、グッド!』彼は、声に出さず呟いた。マックスの寸前にたどり着く。彼は女にささやいた。
 『そこでいい、やめろ。ストップだ。気持ちよかったぞ!ありがとよ』
 『そう、こらえたのね。続きはあとでね』とささやいて、彼の頬にくちづけをして身をはなした。
 ハニタスが座を立ってスダヌスのところへやって来る。
 『おう、スダヌス、飲んでいるのか、食っているのか、どっちだ。お前、心ここにあらずといった目つきではないか、どうした?』
 それを耳にしたスダヌスは我に返った。
 『おい!スダヌス、となりの彼女とねんごろになっているのか?』
 ハニタスは言葉を続けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  131

2013-10-24 08:58:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、そうだ。このパンが旨いのだ。旨いと言ったらこのうえなしだ!』とスダヌスが大声を上げた。
 『ほっほう!どう旨いのだ、お前の酔っぱらった舌でそれがわかるのか』
 『お前、失礼なことを言うが、そこでやめろ。俺はおこるぞ!』
 スダヌスは、ここで焼きあがったばかりの香~ばしいパンの香りを酔った鼻腔から胸いっぱいに吸い込んだ。
 『うっう~ん、いい匂いだ』そして、『俺は、これが好きなんだな』と言って話し続けた。
 『ダルトン!よ~く聞けよ。まずまずだ、酒を口に含んで、口中を潤す、そして、このパンに噛みつく、4,5回咀嚼だ。また、酒を口に含んで咀嚼して、パンを味おうのだ。これがこのパンの味わい方なのだ。旨いの一語に尽きる。言われた通りにやってみろ!ダルトン、お前、あごとほっぺたを落とさんように手を当てて食べろよ』と言葉を結んで、スダヌスは、でっかいパンをふたつに割って、片方をダルトンに渡した。
 スダヌスは、酒を口中に含み潤し、手にしたパンに噛みついた。
 オロンテスが趣向をこらして焼き上げたパンはこのうえなく旨かった。
 スダヌスは、ガラガラ声で傍らにいる女に声をかけた。
 『おい女、お前も、俺が言ったようにして、このパンを食べてみろ。目からウロコがはがれて落ちるぞ!』
 スダヌスは、パンを割って女に手渡した。女は、スダヌスの言うようにしてパンを口にした。女は驚いた。女は驚きを口にした。
 『うう~っ!こんなにうまいパンがこの世にあるとは、、、、』と言って、パンにむしゃぶりついた。
 『浜頭さんよ、あんたの言うとおりだね、このパンは旨い、天下の逸品だわ、ほっぺたが落ちる!ごちそうさん!感激だったわ』
 『おっ!そうかそうか。お前、パンの味が判ったか。重畳、重畳。よしよし、お前は愛いおなごじゃのう』と言いながら、女を抱き寄せ、口づけをして、女の秘所をまさぐった。スダヌスの軽い気持ちのしぐさであった。女はかすかな声で、喘ぎの声をもらした。スダヌスは、女の耳に口を寄せてささやいた。
 『お前、こんなことぐらいで、よがっては。もっとしてやりたいのう』
 女は、これ以上、何をされるかと訝った。だが女の方もまんざらではないらしい。女は、何かを期待した目つきでスダヌスの目を見た。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  130

2013-10-23 07:06:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 つるべ落としの初冬の夕陽は、その身を沈め、西の空にかすかに茜の残映を残している。空からは十六夜の月が澄んだ光を落とし始めていた。 
 賑わいの宴の場は、宵闇のとばりがつつみ始めていた。
 アヱネアスの周りでは、浜頭連と土豪の頭ガリダも加わって、話に花が咲いている。スダヌスは、何かを待っている『おそい、おそい』と舌打ちをしながら待ちかねているものがあるらしい。彼は、オロンテスに声をかけようと思い、辺りを見回すが目当てのオロンテスの姿が目に入ってこない。イラついた風情ではない。酒に酔った目で見まわしながらオロンテスを探した。
 彼はたまりかねてイリオネスに声をかけた。
 『軍団長!オロンテスどのの姿が見えませんな。あれはまだですかいな。アレですよ、アレです』
 イリオネスは、スダヌスの『アレです』を耳にして思案した。
 『アレとは何かいな』彼もけっこう酒に酔っている、酔った頭で考えたが思い浮かばない。
 『スダヌス浜頭、アレとは何ですかいな』
 話し合う二人の言葉ずかいも危なっかしい。
 『軍団長、アレですよ。じれったいなあれがわかりませんかいな。アレで酒を飲むのが、めちゃくちゃにうまいのですよ。判らんかな、アレですよ』
 スダヌスもアレとしか言わない。
 オロンテスが姿を現した。
 『ややっ!皆さん、お待たせ、お待たせ、お待たせしましたな』
 スダヌスは、この声を聞いて『待った!待った!』と声をかけながら、オロンテスに歩み寄った。
 『ややっ!オロンテスどの、待っていましたぞ、待っていましたぞ』
 スダヌスもしたたか酔っぱらって、舌をもつれさせて話しかけている。イリオネスも彼が口にした『アレ』について判っていたが、酔いに任せてとぼけていた。
 スダヌスが大声をあげた。
 『おおっ!これは感動!大感動だ。焼きあがったばかりじゃないか。パンが温くといのう、熱い!』
 彼は言いながら、オロンテスから焼きあがったばかりのパンを受け取った。彼はそのでっかいパンを両手で高く差し上げた。
 『おい!スダヌス!お前の待っていたのは、その『パン』か。どれ、どれ』
 ダルトン浜頭がスダヌスに寄ってきて、合点したように声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  129

2013-10-22 08:56:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 トナリにいる男の手が触れたことで若者のいち物が屹立した。股間のいち物は体本体とは別の生きもののような生命体のようにふるまっている。若者はうめいた『お~お』続けて言葉を吐いた。
 『これは、これは、何という気持ちだ。自分でやっているのと違う。気持ちいい』
 隣の男は、若者のいち物をもてあそんだ。若者は男にさわりをゆだねた。男は往復運動でいち物をしごく、若者の気分が昇揚してくる、二人は周りを気にせず行為を続けている。周りの男たちも二人のやっていることを酒酔いのせいもあり全く気にならないようである。腰布の一枚、その下は何もつけていない、それがこの時代の風体であった。
 男は若者のいち物をしごくこと数十回、若者は男の為すがままに任せている。時が訪れた。昇揚してきた若者の気分がマックスに至った。白い液体をいち物の筒先からほとばらせて満足した。若者は、酔いのせいもあってよどみうるんだ目で男の顔を見つめた。
 若者は、無意識に自分の手を隣の男のいち物を握った。男のいち物は猛っていた。男は、若者に身を摺り寄せてくる、腰をせり出してくる、さらに腰を前後にゆすった。若者は男のいち物をしごいた。小声で若者に話しかけてくる。
 『おいどうだった。気分よかったろう』若者は答える。『おう、良かった。あんな気分初めてだ』
 『そうか、よかったな。俺のをしごいてくれているのか、ありがとよ』
 男は身を摺り寄せながらうめいた。
 『おまえ、なかなか、うまい、いい。気分がいい。すっごくいい、いくぜ!』と言って、白い液体をほとばしらせて気をやった。
 『おう、よかったぜ。ありがとよ。そのままそのまま、ちょんの間、触っていてくれ』男のいち物の猛りは時間をかけておさまっていった。二人のセックスの喜び合いを終わった。男が声をかけてきた。
 『よかったぜ!飲もう。肴もある』
 何かを独り言ちて、座を立ち酒樽のほうへ歩を向けた。
 古代における、男所帯の男同士のペッテングセックスライフがそこにあった。彼らは彼らなりに考えてセックスの処理をしていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  128

2013-10-21 12:46:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ワッハッハッ、お前、まっかっかじゃないか。しこたま飲んだのか』
 『そういうお前も真っ赤な顔じゃないか』
 『いや、今日の酒だが、いやにまわりが早い、お前そうは思わんか』
 酒が入っている杯をもって女が近づいてくる。
 『あんたら、何、話してんの。肴も結構うまいじゃん。酒もたらふく飲んだらいい、はい、これ』と言いながら酒が満杯の杯を両手で突き出した。二人はまじまじと女の顔を見つめた。
 『そうかよし、ありがとよ』
 二人は、女から受け取り、杯を口へ運んだ。
 『こりゃあ~、いいね!女が酒を進めてくれる。こんなことこれまであっためしがない。飲めと言ってつき出されたら受け取って飲む、いいね』
 『そういえば、そうだよな。よっしゃ飲もう。女、お前も飲め、何を食べたい?』
 『女、ほいっ、これだ。さっきまで生きていた羊の肉だ。これがうまいぞ』
 火でこんがり焼かれた羊肉。細工の雑な串にさされて火であぶられた羊肉だ。大きな葉っぱに盛られている塩を振りかけて女に手渡した。女は白い歯を見せて羊肉に噛みついた。
 『うう~つ!これはこれは旨いわ。いつもいつも魚ばっかり、久しぶりに口にする、肉って旨いね!』女が感動の言葉を吐いた。
 『ごちそうさま、旨かったわ。また後から来るね』
 女は片方の男の腰布の上から男のいち物に触れて、二人のそばを離れていった。
 『お~お、何だよ。そんなことされたら、物が大きくなるじゃねえか』
 彼は腰布をまくって股ぐらを覗き見た。それをみとめて、腰布をまくって片方の男に猛っておったている物を見せつけた。
 『お~お、ご立派な物だね』
 ここで会話を終えて二人は杯を口に運び酒を胃袋に飲み落とした。
 女に触られた男が口を開いた。
 『おい、お前、女をどう思う』と言いながら、飲みあっている男の股間に手を伸ばしてきた。彼の手が若者のいち物を握った。彼の予期していない出来事であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  127

2013-10-18 13:10:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 陽が開宴を促す位置に輝いている。茜に天をこがすまでには、少々まだ間がある。
 『お~おっ!』『ワオ~ッ!』『ウオ~ッ!』の声が聞こえる。彼らは声をあげながら、語らいながら、シマについていく。イリオネスは、客人たちを案内している。アヱネアスは、久々の儀式を意識して緊張の面持ちでいる。イリオネスはアヱネアスに声をかけた。
 『統領、全員集まりました。客人の皆さんもシマに案内しました。始めましょう』
 『おう、そうか。始めよう』
 彼はつかつかと歩いて、祭壇に面して立った。目を上げた、正面に陽はさんさんと輝いている。頃合い時である、陽はひときわ、燃える体を大きくしていた。
 アヱネアスは、全身に猛々しさをみなぎらせた。抜き身の剣を高々とかざす、陽に映える、一閃した。白黒の羊の首は体から離れていた。場を制していた緊張と静寂が破られた。耳をつんざく大歓声が沸きあがった。
 太陽が夕空を茜に燃やしている。その太陽に対峙して、アヱネアスは、鮮血の滴る剣を高く差し上げて声をあげた。荒々しい儀式の催行が場を圧していた。それは圧巻の光景であった。
 アヱネアスは、朗々と叫んだ。彼の率いるトロイの民族の『これから』を祈りあげた。海賊掃討に快勝した感謝の言葉をも述べた。続けて、客人たちの『これから』も祈りあげた。
 彼の行った儀式は、少々型破りの感があったが、場を圧して無事に終えた。句読点の大歓声が場にどよめいた。
 軍団長が声を上げて開演を告げた。全員が手にしている酒杯に酒が満たされていく、囚われの身である女たちも場にいる。彼女たちは忙しそうにサービスに動き回っている。場に華やいだ雰囲気を醸し出していた。
 軍団長から統領に声がかかる。
 『統領!乾杯の声がけを、、、』
 『おっ!よしっ!』
 アヱネアスは、客人と目であいさつを交わし、場を見渡した。
 彼は大声をあげて叫ぶ。 
 『乾杯っ!』
 場の者たちは、大歓声をあげて杯を干した。酒杯が宙に舞った。またまたあがる大歓声であった。
 この光景で宴の幕があがった。
 空は茜色に燃えている。陽は宴を燃えあがらせた。場に集っている者たちの顔も茜色に燃やし輝かせた。