『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

お読みくださっている御皆様へ

2009-12-30 09:49:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 いつも、私のブログに来訪いただき、誠にありがとうございます。
 来る年は、御皆様にとって、それはそれは、いい年でありますように願って止みません。力いっぱいお祈り申し上げます。祈りの力を信じてください。
 来る年も、何卒宜しくお願い申し上げます。
       
               2009年12月30日  やまだ ひでお

第2章  トラキアへ  117

2009-12-29 10:27:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 そのときを待っていたように、突如!石垣の上に兵が姿を現すや否や、矢が飛びきた。石垣の上の兵は10人余りである。門前の兵は20人余り、彼らもそのときを待っていたように剣を抜き連ね、10人づつの塊りになって、両サイドに分かれて肉迫してきた。敵との間隔は、14~15メートルに詰まった。
 イリオネスは、部隊に後退を指示した。飛び来る矢数が減ってきた。アレテスの叱咤で部隊は、反撃に転じた。30人余りの兵何するものぞと、アレテスも隊を二つに割り、敵の散開を阻止するように牽制して間をつめていった。彼らは、得意の投槍戦術で敵の半数を倒した。じりっ、じりっと敵を包み囲んでいく、敵の為す術を封じていく。敵を包囲した。彼らは包囲した敵、20人弱を思ったように惨殺した。戦闘は、あっという間に終わった。
 『アレテス、損害は。』
 『負傷は10人余り、戦死は2名です。』『よし!』 と答えが返ってきた。
 『軍団長!右肩の傷、血が流れています。』
 『大事はない、心配無用じゃ。部隊を引き連れて砦に踏み込め。長老も叩っ斬れ、容赦はするな砦を押さえろ。日が暮れるまでにまだ間がある。明るい間に制圧しろ!いいな。』
 アレテスは、檄を飛ばした。抗する敵を圧倒した。
 アレテスは、二人の従卒とともに長老を城壁の壁に追いつめた。
 『よく聞け!俺たちは、穏便に、この砦を押さえようと思っていたのだ。俺たちの部隊は、死傷者を出す損害を被った。許さん!』
 アレテスは吼えた。剣を一閃させたかと思うと、鮮やかに長老の首をはねていた。噴出す鮮血は、壁を真紅に染めた。

第2章  トラキアへ  116

2009-12-28 09:07:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネス、アレテス、二人は、砦へ向かう道中、遺体の引渡し、砦の押収について、話し合いながら来た。二人の結論は出ていた。計り知れない敵の抵抗を予想しての結論であった。
 一行は、ポリメストルの砦に着いた。自然石を積み上げた石垣をめぐらせた砦である。二人の長老が20人余りの守備兵を従えて、一行を待っていた。彼らは、歩み始めた、こちらに向かってくる。互いの声が届く間隔までに来た。
 イリオネスは、大声で話しかけた。
 『領主ポリメストルの遺体を引き渡す。』
 イリオネスとアレテスは、道をあけて、生存していた兵5人に遺体を持たせ、前方に送り出すと同時に、アレテスは、率いてきた部隊を前後五列の横隊に隊列を整えてイリオネスの背後に構えた。両者の間には、一触即発の不穏の気がみなぎっている。アレテスは、兵たちに如何なる局面の変化にも対応できるように油断のない戦闘の構えをとらせた。
 長老の二人は、遺体を確認して、引き取り砦内に引き入れた。長老の一人は、無言のままで目礼を送ってきた。
 その長老も砦内に身を入れた、そのときである。異変は起きた。

第2章  トラキアへ  115

2009-12-25 08:49:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 どよめく喊声が最終便で浜に帰りついた兵たちを迎えた。浜に降り立つ兵たち、彼らに抱きつき歓びを交わす風景がそこにあった。
 パリヌルスがオキテスを出迎えて二人連れ立って、アエネアスに近づき、今日の作業の完了を報告した。三人の表情は、安堵に満ちたものになっていた。
 アエネアスの残る心配は、ポリメストルの砦に赴いたイリオネス、アレテス、そして、この二人に率いられている部隊のことに及んでいた。
 アレテスが出発させる手筈になっている伝令の兵が、まだ、到着していない。アエネアスの心は兵が持ち来る第一報に対する懸念でゆれていた。彼は、『まあ~、この時間だ、少々の遅れはあるだろう。』 と思っていた。
 アエネアスの心配が図に当たった。
 伝令の兵が到着した。その兵の息遣いの荒さが尋常なものではなかった。彼は、ポリメストルの砦から、このエノスの浜までの13キロ余りを駆け通して来たのである。

第2章  トラキアへ  114

2009-12-24 09:53:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 最終の船便が戦場の浜を離れていく。オキテスは、各ポイントの点検を終え、船に乗り込んだ。彼は、彼の作法にもとづいて、静かに目を閉じ、戦野の野末で眠りについた友の冥福を祈った。祈りを終えた彼は、突如、夕陽の浜のしじまを破る大声を発した。
 『ウオ~オッ!』 と叫ぶ。語尾の余韻が長~く尾を引いた。彼を囲んでいた船上の者たちも、オキテスにならって大声をあげた。長かった今日一日の終わりのときであった。
 エノスの浜は、戦勝に安堵した者、勝ち戦さに歓喜する者、家族を戦場で失い悲しみに泣いている者、友の死の哀切に涙する者、明日の平穏に胸をなでおろしている者、悲喜こもごもの情景であった。
 兵たちを乗せた最終便が到着した。浜を震わす喊声にどよめいた。

第2章  トラキアへ  113

2009-12-23 12:43:37 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 時は進み、陽は西に傾いた。激しく干戈を交えた戦野の中に戦死者の家族や友の姿があった。彼らの悲しみが、荼毘の煙とともに戦野に漂う風景がそこにあった。彼らに近づいたアエネアスは、心からの哀悼と慰めの言葉を贈った。
 パリヌルスとオキテスは、イリオネスとアレテスのいない戦場処理の指揮をして、今日の作業を終えた。
 『統領、今日の作業が終わりました。見まわれますか、如何されますか。』
 『よし、見まわろう。君たちに苦労をさせたな、パリヌルス。では、行こうか。』
 彼らは、戦場を一巡した。凄絶な戦いを制した戦野に歩を進めたが、彼らは、終始無言でひと言も声を発することはなかった。
 程なく、茜色の夕陽が照らす浜に着いた。オロンテス、浜頭たちは、すでに船上の人となっていた。乗船するアエネアスを船上の者たちは、盛大に喊声を上げて迎えた。
 『あともう一回、戦場の兵たちを迎えに来る船を仕立てる段取りになっています。オキテスが戦場点検の上、最終便で浜に帰ることになっています。』
 パリヌルスは、このあとのことについてアエネアスに伝えた。

第2章  トラキアへ  112

2009-12-22 10:10:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、二人との話し合いの呼吸を整えた。それくらいに、砦の押収に関する仕事は重かった。当事者の肩にずっりと来るものがあった。アエネアスは、押収の手順について簡単に説明した。
 『押収の手順は説明したとおりだ。判ったか。砦には、ポリメストルの留守を預かる長老もいると思われる。そのうえ少数かと思うが守城の兵がいる。干戈を交えるタイミングを間違えるでないぞ。もし、そのような事態になったときは、容赦はするな。力で砦を押さえろ。俺は、明日の午後、エノスの砦の領主と一緒に砦に出向く。それまで、お前たち二人と部隊で砦を管理していてほしい。以上だ。気をつけて行け。』
 『判りました。では、出かけます。』
 『仕事が終わるまで、お前らの身の安全、隊の者たちの身の安全、安全に対する注意に抜かりがあってはならん。では、気をつけて行け!』
 アエネアスは、二人を送り出した。
 ポリメストルの遺体を生き残った者たちに持たせ、先頭を歩ませ、激戦の余燼と屍臭の漂う戦場の地をあとにした。

第2章  トラキアへ  111

2009-12-21 14:14:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの軍団は、70人余りの戦死者を数えた。負傷者の数も軽傷の者も含めて100人に及ぼうとしている。イリオネスは、各隊長から念を入れて聞き取った。彼の両目からは、涙がとめどなく溢れ、こぼれて落ちた。
 戦後の処理は、手際よく進んでいっている。戦利品は、押収した軍船に積み込んだ、負傷者も船に乗せた。彼らは、エノスの浜まで、海上輸送で、これらの作業を進めていった。
 ラミドトスの遺体を載せた船は、15人の生存者とともに故国の浜を目指して、戦場の浜を離れていった。それは、午後の陽射しの最も強い頃であった。
 イリオネスとアレテスは、指揮下の隊長に後事の打ち合わせを済ませ、ポリメストルの砦へ向かう部隊を整えた。二人は、砦を押収する件についての打ち合わせをするためにアエネアスの許に出向いた。
 『統領、ポリメストルの砦の押収に出発します。それについて、留意すべきことの打ち合わせをお願いします。』
 『おう。出かけるか。この手の仕事は簡単にはいかないぞ、二人とも心してかかれ。斬り従えることの方が、はるかに楽かも知れないが、頼むぞ。』

第2章  トラキアへ  110  誤字の訂正とお詫び

2009-12-21 13:55:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 12月18日 <110>において誤字のミスをやりました。深くお詫び申し上げます。訂正させていただきます。宜しくお願い申し上げます。

   第7行目   意義 を 異議 と訂正いたします。申し訳ありませんでした。  やまだ ひでお

第2章  トラキアへ  110

2009-12-18 17:37:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『判りました。そのような話し合いが為されていたとは、私たちは、全然知りませんでした。私たち一同、統領の配慮に感服いたしました。』
 一同は、統領の配慮に感じ入った。
 『浜頭の皆さん、そして、オロンテス。私の思いに賛同いただけるだろうか。考えていただければと思っています。ひとつ宜しくお願いする次第です。』
 浜頭の二人は、目を輝かせて答えた。
 『統領。貴方の考えていらっしゃること、私たちに意義はありません。他の浜頭たちには、帰っての相談になりますが。浜の衆、皆にもこのことについて話しかけておきます。』
 一同は、アエネアスの意向に賛意を示した。
 『では、最後の案件だが、この戦いの処理が終わったところで、海賊問題について検討に入ろうと思っている。浜頭の皆さん、浜の衆たちとも話し合って、意向をまとめておいていただければと思っています。これで打ち合わせを終わろうと思うが、意見、質問、用件があるようだったら言ってくれ。』
 イリオネスが、一同の意向を確かめた。
 『統領、今、はからなければならない用件はないようです。』
 『これにて打ち合わせを終わる。指示したこと早急に処理するように頼む。以上。』
 イリオネスたちは持ち場に、アエネアス、オロンテス、浜頭たちは、木陰でいっときを過ごした。