『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第13章  木馬大作戦  9

2008-05-31 07:38:06 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 炎天下の会議である。居並ぶアガメムノン以下の諸将、指令を下すオデッセウス、会議に参集している将たちは、滴る汗も気にかけず、緊迫した雰囲気の中で、唯々諾々と指令を聞いていた。質問は許されていない。作戦実行命令の確実遂行である。
 オデッセウスは、一息ついて、再び口を開いた。
 『我々が行う作戦は、謀計である、詭計であり、偽計である。いいな。この戦いの敗北を偽装して、この陣を引き払ってしまう。引き払ったあとは、陣を焼き払ってしまう。諸君等は、兵を軍船に乗せて、故国へ帰るふりをして、この地を離れる。そして、テネドス島の島影に停泊し、6月5日深夜になって、我々からの合図を待って、トロイ城市内に、一気に攻め入る。攻め入ったら、城市に火を放つ、火攻、掠奪を思いのままにする。その上で、トロイの一木一草も残さず焼き尽くす。いいな!判ったか。勝利はそこにある!諸君等は、この役務を身命を賭して遂行してくれ。質したい事があれば、帰営の上、軍団長に聞け。諸事打ち合わせて、滞りなく、この大事を遂行せよ!以上だ。これで解散する。』
 オデッセウスは、冷徹に命令を下した。

第13章  木馬大作戦  8

2008-05-30 14:54:34 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 捕らえられたトロイ側の二人は、塀の外へ連れ出され、喉を掻き斬られて果てた。会議場では、隣同士を確かめる方法で、不審者のいないことを確かめた上で会議が開始された。
 集まった将たちは、塀の中で進められていたことを目の前にして、驚くと同時に、その巨大な姿の木馬(腹胴部分だけでマイクロバスぐらいと想像されています。)を見て感嘆の声をあげた。
 一段高い壇上に昇ったアガメムノンは、全ての将を見渡したあと、大作戦を行う旨を告げ、言葉巧みに励ました。アガメムノン他、居並ぶ諸将は、顔面に緊迫感をみなぎらせて、将たちを鋭い目で見つめていた。
 次いで、オデッセウスが壇上にあがり、将たちに今度の作戦の要務に関する指示を命令として下した。
 『諸君聞いてくれ。このたび、計画している作戦に関して述べる。いいか!我々が計画した今度の作戦、この作戦に失敗はあり得ない。諸君等は、下された命令、指示、そして、戦闘の要務を確実に遂行してくれ。作戦は、この巨大な木馬を使って、トロイの一木一草も残さずに焼き尽くす!我々は、必ず勝利する!いいな。』

第13章  木馬大作戦  7

2008-05-29 07:57:07 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 会議の刻限を見計らって、将が集まってくる。軍団で将の役務に就いているのは400人余ににぼる。その将たちが続々と集まってくる。塀の入口には、オデッセウスの親衛を努める屈強の兵5人が入口で見張っている。オデッセウスは、トロイ側のスパイ活動に気を配っていた。
 集まってきた将の中に、ちょっと気になる二人連れがいた。そのうちの一人がオデッセウスの見たことのある顔であった。どこで見たか、すぐには思い出せなかった。オデッセウスは、集まってきた面々を見渡した。こんなときの彼の目は。人を射るような目つきになる。目の合った者は一瞬身をすくめる、まさに人を威嚇する目である。先ほどの二人と目が合った。オデッセウスの勘にひらめいた。トロイ城市内に二度目に潜入したとき言葉を交わした男ではないか。相手と目線が会う、相手は動揺した。オデッセウスが指で指し示した、屈強の男三人が二人に向かう。二人は剣の柄に手を掛ける、議場は込み合っている、剣が抜けない、血路を開けない、周りが反応した。二人は簡単に抑えられた。オデッセウスは三人にサインを送った。カットスロート(喉をかき斬る)のサインであった。

第13章  木馬大作戦  6

2008-05-28 08:28:21 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 それだけ言ってオデッセウスは、皆を見まわして、一息ついた。
 『作戦の決行は、6月5日夜、深更。木馬に潜むのは4日夜、深更に至ってだ。判ったな!それから、5日の深夜まで、この木馬の腹の中にいる。要するに、この木馬の腹の中に潜んで我々は、トロイ城市内に潜入する、それ以上は言えない。一部の兵を除いて、中にいるのは、いずれも軍団を統率している将である。4日一日は、多忙を極めている。我々は、敗戦を偽装しての作戦実行なのである。全軍団陣を払って、軍船に乗って、この陣を離れる。その前に陣営を焼き払ってしまう。判るな。我々がこの馬の腹胴に入った以上は、帰るところがなくなるわけだ。以上だ。判ったな。4日深夜の集合場所と刻限は、あとから申し渡す。では、これで解散する。このあと全軍の将の役務に就いている者の全てを集めて、作戦指令会議を行う。皆も何食わぬ顔で参加していてくれ。以上だ、俺からの話は、これで終わる。』
 オデッセウスは、話を締めくくった。オデッセウス、メネラオス他8人、10人の将たちは集合場所と集合の刻限を打ち合わせた。
 彼等は、明深夜の月はと気にかけた。

第13章  木馬大作戦  5

2008-05-27 07:59:26 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 オデッセウスは、集まっている23人の46の目を、鋭い目線で射た。彼は、彼等の心のうちを見たかった。先ず最初の一語は彼等を脅した。
 『諸君!俺の話を聞いて、嫌なら、この作戦を降りてくれ。しかし、生きて、この塀の外へ出れる保障はない。いいな!』 オデッセウスは鋭く言い放った。それと同時に、目に異様な輝きを留めた5人の屈強の兵が塀の中に入って来た。
 ここに集まっている将は、デオメデス、アイアース、エペイオス、ネオプトレモス、ピロクテテス、この5人のほかに3人の将とメネラオス配下の15人の兵である。
 オデッセウスは、改めて、厳しい口調で、この23人に命令を伝えた。
 『君等は、この巨大な木馬を見た。この木馬の腹胴に潜んで、トロイ城市内に入る。我々が木馬の腹胴の中にいることが敵に知れたら、それで我々全員が死ぬ。生きておれるわけがない。それと同時に我々連合軍の敗北が決まる。敵に知れたら、最期、我々の生はない!判ったか。これが君等への今度の作戦の命令である。使命は、軍団の兵を城市内に導き入れ、火を放ち、トロイを焼き尽くす。以上だ!』
 と、結んだ。

第13章  木馬大作戦  4

2008-05-26 07:54:20 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 オデッセウスが選んだメネラオス、エペイオスを除いて7人の将とメネラオス配下の15人の兵も塀の中に入ってきて木馬を見上げた。彼等は、木馬の巨大さにど胆を抜かれ、その威容の見事さに驚いた。彼等は、選ばれたことにプライドをもって、ここにいるのだが、果たすべきミッションは何なのかについては、知らされてはいなかった。そのミッションについては、これから伝えられる。彼等は、太陽の強い陽射しに炒られながら緊迫した空気の中にいた。
 彼等は、オデッセウスとメネラオスを真ん中にして、車座となって座に就いた。
 メネラオスが最初に口を開いた。
 オデッセウスが、この作戦を起案し、極秘のうちに二人で、この作戦を進行させ、夜襲攻城戦、そして、4人の先行者がトロイ城市内に、すでに潜入していることを告げた。そして、作戦の命令と指示をオデッセウスから、受けてくれと話を結んだ。

第13章  木馬大作戦  3

2008-05-24 07:58:22 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 大作戦の決行は、明後日に迫った。オデッセウスの胸は緊張で波立っていた。計画を進めていく歩調は確かで着実であった。
 6月3日。夏の陽射しは強く照り付けている。海の上を渡ってくる風が通り過ぎるときだけ、涼感を肌に感じさせた。
 此の大軍団を俺の起案、俺の知恵で動かし勝利を手にする、それを思うと、身が奮え多忙であった。オデッセウスは、研ぎ澄まされた集中力でことを処理していった。
 昼前の仕事は、選んだ将と兵25人との打ち合わせである。オデッセウスは、エペイオスと言葉を交わしながら、皆が集まるのを待っていた。
 アガメムノン、ネストル、イドメニスが塀の中に入って来た。三人は、眼前の巨大な木馬を見上げた。木馬の鋭く輝く目が三人を睥睨していた。三人は思わず身をすくめた。木馬の出来栄えは、毅然と威容を発して聳え立っていた。

第13章  木馬大作戦  2

2008-05-23 07:53:31 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 6月2日、相変わらず戦野は、小競り合いでざわついていた。ヘレスポントス海峡を管理している部隊から、トロイ軍の一隊が襲撃してきたとの連絡を受けたメネラオスは、一隊を率いて、急遽、現地に向かった。トロイ側も必死で攻撃を仕掛けてくる。今日の襲撃隊は手強かった。メネラオスは苦戦した。この戦いを望見したネオプトレモスは、一隊を率いて現地に駆けつけた。両群は激しく斬り結んだ。陽が沈み、薄暮の闇に撃剣の火花が散った。メネラオスとネオプトレモスは、何とか海峡管理隊を守った。双方の力が互角であり、辛うじての結果であった。これでは明日もトロイ側に襲撃されるという予感が残った。メネラオスは、救援に連れてきた部隊を残して、ネオプトレモスとともに現地から引き揚げた。
 メネラオスは、3日後に迫っている大作戦に関して、海峡管理隊の引き揚げをどのようにやるか。偽装の撤退の実行方法に課題がつきつけられた。メネラオスは、できるだけ兵の損失を避けたい思いであった。

第13章  木馬大作戦  1

2008-05-22 08:36:17 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 オデッセウスは、将たちに作戦指令会議の開催を通達したあと、防衛柵内の塀の中へ歩を運んだ。『木馬』の目は、地上のものを睥睨していた。オデッセウスは、その威容に感動した。と、同時に勝利を確信した一瞬であった。
 『お~っ!エペイオス、良く出来た!見事な出来栄えだ。この出来栄えなら、極秘行動を隠し通すことが出来る。苦労をかけたな。これだけのものを造り上げてくれた、お前に心から礼を述べる。』
 『そのような言葉を、オデッセウス。貴方から頂いて、私は、本当にうれしい。作戦が成功して、勝利を手にする。貴方とその喜びを分かち合いたい。判ってくれますか、この気持ちを、、、』
 『よく言ってくれた、エペイオス。そこでどうする?お前、この木馬で、俺と一緒に行動をともにするか。生きて帰れないかも知れないのだぞ!判っているのか。』
 『ありがとうございます。それが、この私の念願です。生死は時の運です。死に向かって全力を尽くす、それが生だと心得ています。』
 『よし判った!俺と生死をともにしろ。』 オデッセウスとエペイオスは、互いに、じい~っと、目を見つめ合った。
 『三日後にこの『木馬』を前にして、今度の作戦の詳細を打ち合わせる。そのあと日没後に、この塀を払いのける。その予定だ。いいな!』
 『明日、最後の点検をして、完成を確かめておきます。』
 オデッセウスは、『木馬』 の周りを廻って、自陣に引き揚げた。

第12章  攻略  13

2008-05-21 07:23:11 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アガメムノンは、会議の冒頭に統領としての訓示をしたあと、会議の進行を、マル秘大作戦の起案の将であるオデッセウスに引き継いだ。オデッセウスは、今、この段階で、どこまで、この作戦を明らかにするべきか迷った。彼は慎重に考えた。防衛柵の高い塀の中で、何が造られているかについて明らかにしておくことにした。
 木馬は出来上がっている。だが、まだ、トロイには知られたくはなかった。オデッセウスは、言葉に重みをのせて皆に伝えた。
 『皆、心して聞いてくれ。防衛柵の塀の中で造っているのは、近日中に決行する作戦に使用する、木で造った馬である。明日には完成すると、この大事を託した責任者であるエペイオスから連絡があった。あの塀は三日後の夜には取りはずす、この情報がトロイ側に漏れてはならない。皆、心してくれ。そのようなわけで厳重に警護を固めて、中をうかがえないようにしていた。今日ここに、それを明らかにした。三日後の太陽が中天にかかる時、あの塀の中で出来上がった木の馬を目の前にして、今度の計画している作戦の指令会議を開く。判ったな!いいな!』
 オデッセウスは、鋭い目線を皆に差し向けて、迫る緊迫感を無言で伝えた。