『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  125

2019-09-30 13:43:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テムノス浜頭がアエネアスら一同と目を合わせる、話し始める。
 『先日、貴方がたが建造している船、戦闘艇1艇の営業のための預託を受けました。これを機会に船舶の営業について、エドモン浜頭を中心に鋭意話し合い、検討した結果、営業の仕組みを組み立てた次第です。私らは船についてよく知っている。集散所のほうは営業の仕組みについて知ってはいるが、船については詳しく知っているとは言えない。そのような事情を踏まえて、集散所の元締めであるクノッソス集散所のイラクス営業担当、マリア集散所のダントス所長、そして、今日、私らと同行している、キドニア集散所のハニタス副所長、パムテキオのパキオテ頭領、キドニアのキドニス浜頭、同じくスダヌス浜頭が加わって、よく話し合い、営業の仕組みを組み立てました。これによって、ニューキドニアの浜で建造される船舶の普及をはかり、営業の業務を推し進めることになりました。そのようなわけで皆さんと話し合って、その営業仕組みを発足させたいと考えています。これによって、建造、営業、販売代金の回収といった全体的な仕組みを正しく機能させ、この地で建造される船舶のクレタ島における普及業務を遂行していきます。何卒、賛同いただいて、暦のあらたまったこの期に発足させたい所存です。この仕組みのここが解らないとか、質問があれば遠慮せずに聞いてください』
 子の言葉を受けて、イリオネスが、オキテスが三つ四つ質問する、よどむことなく質問に答えるテムノス浜頭、ハニタス副所長。
 ここまでしっかりと仕組みが考えられているとはアエネアスらは考えてはいない。
 イリオネスはドックスが理解したかを声をかけて確かめる、理解しているとドックスが答える、安堵する。
 イリオネスがアエネアスとオキテスと相談する。相談がまとまる。
 彼がテムノス浜頭に体を向ける。
 『テムノス浜頭殿、営業の業務の遂行及び仕組みの総体について理解いたしました。この件について、私らには異存がありません』
 エドモン浜頭がイリオネスの言葉を受けて応える。
 『イリオネス軍団長殿、私らが組み立てた仕組みを理解していただいたようですな誠にありがたい。この仕組みを支障なく運営していくことを約束し、この場にいられるアエネアス頭領殿、イリオネス軍団長殿、列席の一同の方に誓約します。なお、この仕組みを本日より発足させます。よろしく願います。この地はキドニア集散所の管轄ですので、何かがあれば、ハニタス副所長、キドニス浜頭、スダヌス浜頭にたずねていただければ支障をきたすことは全くありません。よろしく願います』と言い終えて、エドモン浜頭が手をさしのべる、さしのべられた手をシッカリ握るアエネアス、一同がかわるがわる握手を交わす。
 新しい営業の仕組みの約束事がスタートする。
 エドモン浜頭がアエネアスに言葉をかける。
 『アエネアス頭領殿、先ほどの頭脳の件ですが、その持ち主に会わせていただけるでしょうな』
 『そうでしたな。いいでしょう』
 アエネアスがパリヌルスを手で招く。
 『エドモン浜頭殿、その頭脳の持ち主です。パリヌルスといいます』
 エドモン浜頭がパリヌルスと顔を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  124

2019-09-30 06:28:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 太陽が真上にある、季節の光を振りまいている、いい風が広場をわたっていく。
 イリオネスがエドモン浜頭に丁寧に話しかける。
 『エドモン浜頭殿』と声をかけて目を見る、言葉を続ける。
 『日が輝き、いい風が来ています。私ら一同は、この場で来訪の用件を受けたいと考えています。いかがでしょうか?』
 『イリオネス軍団長殿、いいでしょう。ここでやりましょう。そうむつかしい用件ではありません。ここがいいですね』
 『解りました。場を整えます。私どもが用件を受ける立場です。そのように場をつくります。チョット間をいただきます』
 『イリオネス軍団長殿、気遣いはいりません。草の上で丸く座ってでも話し合える用件です。商取引は、貴方ら、私ら、対等の立場と考えています。1プラス1が3の結果に結びつけたい!そのように考えてのことです』
 『そうですか、私らの真意としては、遠いところを用件を携えてきてくださったエドモン浜頭殿に敬意を感じています』
 『それはそれは、丁重な気づかいを喜んでいただきます』
 イリオネスは、来訪者一行に意を示すことで一行の真意を我が方にとって有利にと時間的操作もあわせて操作している。その策が効を奏していると自信を持って彼らに接している。
 イリオネスは、オロンテスに指示して、話し合いの場をそのように整える、一同が席に就く、話し合いが始まる。
 エドモン浜頭が立ちあがる、アエネアスに体を向ける、話は、場に会している一同に対して、建造の場の見事さとその充実度に対する崇敬と信頼を語る。
 『アエネアス統領殿、私らがこの地についてから、皆さんの心のこもった応接をいただいた。本当にありがとうございました。私らがこんなに丁寧な扱いををいただくとは、心していませんでした。心から礼を申し述べます』
 エドモン浜頭が深く低頭する、浜頭の話が続く。
 『また、船舶建造の場ですが、その充実度の見事さ、いい船ができて当然であると心しました。私らがここで出来あがる船を取り扱っていく、商っていく、この仕事に携わることに誇りを持って当たれると確信しました。どうかよろしく願います』
 エドモン浜頭が感嘆の気ごころを包み隠さず述べる。
 『そのように言っていただける。私らにとってありがたいことです。『信頼』の二字を保証する私らの真意です。その私らの真意と姿勢を受け取ってもらって幸いです』
 アエネアスは、エドモン浜頭の言葉にこたえる。
 『では、今日、私らが顔をそろえて、こちらを訪ねた用件について話させていただきます。よろしいですね』
 『解りました。心して聞きます』
 エドモン浜頭がテムノス浜頭に顔を向ける、話しかける。
 『テムノス浜頭、伝えるべき詳細を申し上げてくれ』
 テムノス浜頭がエドモン浜頭の言葉を受けて、姿勢を改める、口を開く、おもむろに話し始めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  123

2019-09-29 14:55:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭が口を開く、アエネアスの目と鋭く目を合わせる。
 『アエネアス頭領殿、今日、こちらを訪問するのにですな、イラクリオンからこの浜まで、このたび営業のために預託してもらった戦闘艇に乗ってきました。私がこの船に乗るのは初めてなのですが、いや、素晴らしい!戦闘艇なるものの持っている、その性能と機能に感じいりました。感服しました。あの性能と機能を生み出した、創り出した、その頭脳を見てみたいと思っております』
 『そうですか、そのように感じいっていただきましたか、ありがとうございます。エドモン浜頭殿のその希望には添いかねますな。ただ、その頭脳を持っている者に会いたいといわれるのなら、その者に会うことができます』
 『それはありがたい、なんとか私の望みをかなえてもらいたい』
 エドモン浜頭が長い時の間を力を込めて握っていた手をほどく、アエネアスの手は握りしめられてしびれていた。
 オロンテスが姿を見せる、イリオネスに耳打ちする。
 『軍団長、歓迎昼食会の支度が出来ました』
 『おう、そうか。ありがとう。俺は一行とともに昼食会の場に行く。お前に頼みたい。パリヌルスとドックスを連れて先に昼食会の場へ行っててくれ』
 『解りました。待っています』
 オロンテスが連絡を終えて去っていく、イリオネスが一行に声をかける。
 『皆さん!待たせました。歓迎昼食会の支度が出来ました。そちらに行きます。オキテス、皆さんを案内してくれ』
 一同が立ちあがる、オキテスが先にたって案内する、アエネアスとイリオネスが一行と話を交わしながら歩を進める。
 一同が浜を眼下に見下ろす広場の高所に支度された昼食会の席に就く、統領が言ったように目にする眼下の風景が一役をかってくれている。
 『ホッホウ、この場所から浜の風景が一望できますな。いい眺めです』
 『はい、あそこに見える小島が私らのやっている漁業部の基地です』
 昼食会が始まろうとしている、パン工房の者らが接待についている、一同に酒杯を配る、酒を注ぐ、食材の調理をする、浜焼きスタイル昼食会である。
 アエネアスが一行の歓迎の乾杯をする、エドモン浜頭が返礼の乾杯をする。一同が打ち解けた昼食を楽しむ。
 一行が配されているスペッシャルパンを口に運ぶ、キドニス浜頭、スダヌス浜頭、ハニタス副所長にはなじみだが、エドモン浜頭、テムノス浜頭、パキオテ頭領は、はじめて口にするパンである。
 新暦になって発売したスペッシャルパンである、彼ら三人にはスダヌス浜頭がパンについて説明する。
 三人は、パンをやや大きめにちぎって口に運ぶ、エドモン浜頭が声をあげる。
 『ややっ!これは旨い!』続いてパキオテ頭領が声をあげる、『こいつは旨い!』テムノス浜頭が二人の『旨い!』にうなずく。
 三人は、パンの味に感動する、口に運ぶ、胃に収める。
 『おう、このパンの味は絶品だな。いい味いい香り、あごをつって食べないといかんな』三人がパンをほめあげる。
 昼食会が和やかに進み、テムノス浜頭の感謝の乾杯で終わる。
 『アエネアス統領殿、馳走になりました。ありがとうございました』
 エドモン浜頭がアエネアスに礼の言葉を述べる。
 イリオネスがオロンテスに指示する。
 『おう、オロンテス、午後の話し合いをここでやる!場をそのように整えてくれ』
 『解りました』
 オロンテスは、接待に手を貸してくれたパン工房の者らに指示して場を整える。
 季節の陽射しがさんさんとふりそそぎ、心いい風が樹々の葉を鳴らしていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  122

2019-09-29 06:00:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船台の場に来た一行がその光景に目を見張る、オキテスが一行に声をかける。
 『一行の皆さん!ここが船舶の建造作業をしている船台の場です。当月は、戦闘艇2艇、新々艇2艇、計4艇の建造計画で船台4基が稼働しています』
 『ほう、このように4隻の船が並んで建造されていく。みごとな光景ですな。船を生み出す船台がキチット整備されていますな。いい船造りは、いい母体構造があり、作業をする者らの確かな技量と心構え!これがありそうだな!そうであって、はじめて成し遂げられる』とエドモン浜頭が言って、オキテスと目を合わせる。
 『エドモン浜頭殿から、そのように言っていただける。作業に携わっている者らがよろこびます』
 彼らが歩を進める、船舶の建造部材の製材部署に到る。
 『一行の皆さん!こちらが船舶の建造部材の製作の場です。ここでは建造の部材を丹念に仕上げて、船台の場に届けていきます』
 一行が初めて目にする船舶建造部材の製作の場である。
 一行が目を見張る、船台の場と建造部材の製作の場、そのつながりを目にして、いい船造りの仕組みを知る。
 一行の明けた口がふさがらない、彼らからの質問がない。
 船舶の建造用材の置き場に来る。
 その置き場にある用材を見る、彼らが驚く、質が極めて良いと思われる船舶建造用材がそこにある。
 彼らは知っている、クレタ島の東部地区には、良質の船舶用材がなくなってきているのである。
 彼らが小声で話を交わす。
 『船を造る用材がなくなってきているというのにな』
 『あるところにはあるのか。おどろいたな』
 『あの船舶建造用材は、上質の船舶建造用材だ!』
 彼ら一行の建造の場の巡察が終わる、会所に戻る、腰を下ろして落ち着く、エドモン浜頭がアエネアスに声をかける。
 『アエネアス統領殿、船舶建造の場を見せていただきました。ありがとうございました。いやいや、驚きました。あけた口をふさぐことができません。いい船造りの現場を見せていただいて、私らからは何も言うことがありません。『信頼』の二字があるだけです。いい船造りに配慮され、統領一統のマインドとスピリッツを感じとりました。我々にとって大いなる感動です。今後ともよろしく願います』
 『お~お、エドモン浜頭殿、そのようなほめ言葉、いたみ入りますな、恐縮します。ありがとうございます。エドモン浜頭殿が言われた『信頼』の二字に魂を尽くしていい船造りをやっていきます』
 二人の心が話でシッカリと結ばれる。
 会所に拍手が沸く、アエネアスとエドモン浜頭がシッカと手を握り合う、感動の場面である。
 手を握り合いながら、エドモン浜頭が口を開いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  121

2019-09-28 10:10:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの来訪者ら一行との歓迎挨拶が終わる、浜に集った一同の拍手と歓声が浜の一隅をどよめかす、エドモン浜頭が両の手を頭上にかざす、歓迎の意を示してくれた一同に声をかける。
 『おう、皆さん、ありがとう!今日、この浜を訪ねてきた我らを出迎えてくれてありがとう!』
 一同を見渡しす、『ありがとう!』を連呼する。浜の一同から、またまた、歓声があがる。
 イリオネスがアエネアスに代わって来訪の一行と挨拶を交わす、パリヌルスとドックスが来訪の一行に挨拶する。
 イリオネスが彼ら一行を会所へと誘う。
 会所ではオロンテスが場を整えて待機している。
 会所に姿を見せた一行が席に就く、オロンテスが彼らにウエルカムドリンクの杯を手渡す、オロンテスが調製したぶどう酒のハチミツ割りスペッシャルドリンクを注ぐ、アエネアスが杯を片手にして立ちあがる、一同がそれに連れて立ちあがる、アエネアスが口を開く。
 『皆さん!』と言って一同と目を合わせる。
 『本日はこの浜へようこそ!皆さんの歓迎の乾杯をします』
 一同を見廻す、『乾杯!』杯のドリンクを飲み乾す、エドモン浜頭が口を開く。
 『アエネアス頭領殿をはじめ、皆さん!この地を訪れた私ら一行をこのように意を尽くして迎えてくれました。ありがとうございます。謹んで礼を言います』
 一同と目を合わせる、声をあげる、またまた、声をあげる。
 『ありがとう』と言って、再び、一同と目を合わせる。
 『ありがとうの一つや二つでは足りませんな』と言って再び『ありがとう!』と言って、テムノス浜頭に目配せを送る。
 一行が拍手をする、連れて一同が立ちあがって拍手をして場を沸かせる、腰を下ろす、場が落ち着く。
 場の雰囲気を見てイリオネスがエドモン浜頭に声をかける、言葉を交わす。
 『エドモン浜頭殿、来訪の用向きを伺う前に我らが船を造っている現場を見ていただければ幸いですが、いかがでしょうか?』
 『おう、それはいいな!願ってないことだ』と言って、一行と目を合わせる、うなずく一行、雰囲気を読みとるイリオネス、声をかける。
 『ドリンクを飲まれて落ち着かれたら、私が案内します』
 一行が歓談を交わす、エドモン浜頭から声がかかる。
 『イリオネス軍団長、船舶建造の場を見に行きましょう』
 一同が起ちあがる、会所をあとにする、建造の場へ向かう。
 建造の場では、出迎えの浜で顔を合わせたドックスが彼らを迎える、エドモン浜頭がドックスに話しかける。
 『浜で我らを迎えてくれたドックス殿ですな』
 ドックスはというと、殿つきで言われて照れる。
 『はい、本日は我らが浜へ、ようこそ。そして、建造の場の巡察、大歓迎です!よく見てください』
 オキテスが声をかける。
 『エドモン浜頭殿、ドックスは、船棟梁です、ドックスと私が建造の場を責任担当しています。私ら二人が案内します。何なりと聞いてください』
 二人が一行をまず、船台の場へ案内する。
 船台の場には、当月建造の4艇の建造作業が進んでいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  120

2019-09-27 07:25:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パン工房に着いたオキテスは、オロンテスとエドモン浜頭一行を迎えての昼食会の場の設定を打ち合わせる。
 『おうおう、オロンテス、今日の歓迎昼食会のことだがーーー』と言って、場所等詳細を打ち合わせる。
 『おう、オキテス、了解した。任せておけ!広場でやるのだな』
 『そうだ!よろしく頼む。彼らが到着したら連絡する』
 オロンテスが念を押す、万事の承諾を伝える、オキテスの打ち合わせが終わる、急ぎ足で浜に戻る。
 浜の張り番に用件を指示する、自分の席場にくる、事の次第の展開を考える、たちあがる、建造の場の船台の場に向かう、ドックスとエドモン浜頭一行の来訪の件を打ち合わせる。
 エドモン浜頭ら一行が到着するであろう頃合いが近くなってくる、オキテスは張り番からの連絡をもう来るだろうとを待っている。
 程なく、張り番が姿を見せる
 『オキテス隊長、浜沖に船です!私らが造っている戦闘艇です。2本帆柱の船です』
 『おう、そうか。会所の軍団長に報告して、パン工房のオロンテス隊長にもその旨を伝えてくれ』
 『解りました』
 オキテスは手配を終える、ふと考える。
 『外部から要人を迎える。俺一人の出迎えではチョットさみしい限りだな』
 オキテスは、ドックスに連絡する、手すきの者らを連れて船の到着する浜に来るように指示する。
 彼は、パリヌルスを誘う、波打ち際に立つ、エドモン浜頭らが乗った戦闘艇が指呼の距離に来ている、オキテスが背伸びして大きく手を振る、艇上の一人が手を振ってこたえる、スダヌス浜頭である。
 手を振るスダヌス浜頭の姿が目に飛び込んでくる、彼らの乗った戦闘艇が近づく、できるだけ浜に近づいて停まる、オキテスが海に入る、駆ける、海の深さは腰くらいである。
 彼らが乗ってきた船は、エドモン浜頭に預託した戦闘艇である、喫水ぎりぎりのところに艇が停まっている、パリヌルスがハシケを横づける。
 オキテスが浜を見る、アエネアスもイリオネスも姿を見せている。
 オキテスが艇上のエドモン浜頭に身を海に浸したまま声をかける。
 『ようこそ、エドモン浜頭殿!遠路はるばる、ようこそ来てくれました。大歓迎です。統領のアエネアスも待っています。ハシケにどうぞ』
 オキテスが続けて同行の浜頭らに声をかける。
 『テムノス浜頭殿、ようこそ!』
 『おう、オキテス、この浜で会うのは、久しぶりだな』
 『キドニス浜頭殿、ようこそ!』
 『おうっ!』と言ってオキテスの手を握る。
 『あ~、パキオテ頭領殿、久しぶりです』
 『おうっ!』と応えてオキテスに手を伸ばしてくる、握り合う。
 『あ~っ!ハニタス殿、先日はありがとうございました』と言って、ハニタスの手を握ってハシケに誘う。
 スダヌスがオキテスに手を貸して、海に身を浸して、二人でハシケを押す、彼ら一行がハシケから浜に降り立つ、すかさず、オキテスがエドモン浜頭をアエネアスに引き合わせる。
 『エドモン浜頭殿、ようこそ!遠いところを俺らが浜へ!私がアエネアスです』
 『アエネアス頭領殿、イラクリオンのエドモンです。今日、何としても会いたいと思いこちらを訪ねた次第です。よろしく願います』
 次いで、テムノス浜頭がアエネアスに声をかける。
 『アエネアス統領殿、久しぶりですその節にはいろいろと世話になりました。元気そうでいられる、何よりです。その後、オキテス隊長がよくしてくれています』
 『テムノス浜頭殿、その節はありがとうございました。また、当方のオキテスがいろいろと世話になっています』
 パキオテ頭領がアエネアスに挨拶する。
 『アエネアス統領殿、パムテキオのパキオテです。いや、いい船をいただいてありがとうございました。日々の活動に重宝しています』
 『そうですか、うれしいことを言ってくれます。パキオテ頭領殿、ありがとうございます』
 続けて、キドニ巣浜頭と挨拶を交わす、キドニア集散所のハニタス副所長、スダヌス浜頭とアエネアスは挨拶を交わした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  119

2019-09-26 05:32:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 17日目の朝が明ける。
 朝行事を終えて浜に立つイリオネスは。今日エドモン浜頭がイラクリオンから遠路はるばるこの浜に来る。
 エドモン浜頭の来訪の目的は何だろうと考える。
 イリオネスは、エドモン浜頭の立ち位置にスタンスして脳漿を搾る、要点を三点くらいまでに絞って対応を考える、次いで、彼の浜に到着する頃合いを考える、大体の想像にたどり着く、気が落ち着く。
 朝行事の浜における打ち合わせをする、一同に対応を指示する。
 『おう、皆、解ったな!各担当は、対応の準備を整えてくれ。オロンテス、頼むぞ!』
 『軍団長、人数は何人くらいと考えられますか?』
 『俺らも加えて、12人か13人といったところだろう。それでやってくれ』
 打ち合わせが終わる、散会する、イリオネスがオキテスを呼びとめる。
 『おう、オキテス、統領と俺は会所に行く、一緒に来てくれ。朝食は会所でどうだ。三人で話し合っておく用件がある』
 『はい、解りました。一緒します』
 アエネアスら三人は会所へと足を向ける、会所におちついた三人は、朝食を食べながら、イリオネスが懸念している件について話し合う。
 『オキテスこのたびの営業計画を考えたのはお前だ。エドモン浜頭の来訪目的をどのように考えている?お前の考えていることを話してみてくれ。俺も今朝、そのことについて、よくよく考えた、彼らの用向きが見えていない』
 エドモン浜頭の用向きが何なのかオキテスにも見えていない、オキテスが推測したエドモン浜頭の意向を述べる。
 『これといった特別変わった意向はないと考えられます。同行者がいると考えています。たとえ同行者があったとしてもエドモン浜頭以外は、この浜に一度は来たことのある人らです。統領とは顔見知りです。エドモン浜頭だけがこの浜への初来訪です』
 『そうだな。オキテス、お前の思いついた彼らの意向をどう考えている?』
 『私の考えでは、船舶建造の場を目で見て確かめることが一つ。統領と会っておきたいが一つ、それに戦闘艇1艇の預託を受けて営業姿勢の表明ではないかと考えています』
 『お~、そうか、その三点か、俺が考えていたことと一応合致する。エドモン浜頭を出迎えるについて、その役務をオキテスお前に頼む。よろしくやってくれ』
 『解りました』
 『客人らの昼の接待の準備をオロンテスに指示してある。彼らの浜に到着の頃合いは午前半ばと考えている。よろしく頼む。ところで昼食会の場をどこにするかな?オキテス、どこがいいと思う?』
 『そうですね!人数はどれくらいと思われますか?』
 『そうだな、相手かたが6人、当方が6人、12~13人と考えている』
 『広場か浜かしかないのですから、準備作業等を考えて広場にされては』
 『おう、広場か。統領どう思われますかな?』
 『おう、それでいい!景色にも一役かってもらう』
 『時間を食ったな、オキテス、オロンテスと打ち合わせて準備かた頼む』
 『解りました。オロンテスと打ち合わせたら、私は、浜にいます。彼らの船を見たら連絡します』
 『おう、了解!』
 オキテスが会所をあとにする、オロンテスのパン工房に足を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  118

2019-09-25 06:09:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 午後となる、軍船の浜は、パリヌルスと漕ぎかたら50人、試走に乗船する者らが集まっている。
 パリヌルスが一同を前にして、これから行う改造造作を終えた軍船の試験試走についての留意事項を説明している。
 漕ぎかたらに要領の説明に及ぶ、走行に使用している新規に採用した櫂のこと、そして、方向転換時における船の動態、船体の横すべりに心して体感すること等を説明する。
 舵座に就いて操舵するギアスには、舵構造の詳細を説明し、操船感覚、舵の効き具合、船体動作及び動きに細心の注意を払って感じ取ってくれるように要請する。
 また、帆張り操作を担当する者らには、2本帆柱にした利点を説明して、帆張り作業における留意点を説明した。
 操船上の留意点を説明したあとに軍船の改造をしたことの趣旨を話して説明を終える。
 パリヌルスは、1本帆柱を2本帆柱にしたこと事で想像される天候及び海洋状態に対応した帆柱保持の綱張りが改造軍船に施されている、航走する船上における帆張り作業にどのように影響するかを懸念していたのである。
 アエネアスとイリオネスが軍船の浜に姿を見せる、浜の一同が歓声をあげて二人を迎える。
 二人は、4隻並んでその雄姿を見せている改造造作を終えた軍船に見とれる。
 アエネアスが目をこらして見つめる、軽く目を閉じる4隻が隊列を整えて海洋の波を割って進む、その風景を瞼の裏に描く、我が意に沿って目指す方向をたがえることなく、建国の地に向けて進んでいく、確信に到って目を開ける。
 彼が描いたイメージの風景には、島、陸地の姿がなかった。
 パリヌルスの檄が飛ぶ。
 『全員!乗船せよ!位置に就いて櫂をとれ!』
 『おうっ!』と応える、軍船までの海を渡って船に乗り組む、アエネアス、イリオネス、パリヌルス、オキテスの四人はハシケで試走軍船に向かう、乗船する。
 『統領、軍団長。出走します』
 軍船の碇石があげられる、パリヌルスの声が飛ぶ。
 『改造した軍船の試験試走をする!漕ぎかた、いいな!』
 『おうっ!』
 『漕ぎかたはじめ!』
 両舷の櫂が海面を泡立てる、軍船が波を割る、浜沖を目指して進む。
 夕陽が西の水平線に接するころまでに改造造作を終えた4隻の軍船の試験試走を終える。
 パリヌルスは、試験試走に参加した者らを集めて、試走した軍船の評価を一同にたずねる、彼らの話を聞き終わる。
 軍船の改造造作を慎重に進めたことにより修正しなければいけない点が極めてというくらいに少なかった。
 走行具合については意外に好評である。
 パリヌルスは安堵するがいちおうである、我々が航海する海は地中海であるであった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  117

2019-09-24 06:13:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、イリオネスから受け取った木板に見入る。
 1枚目の木板には、出航に際して持参するトロイ時代から保有している黄金の量、そして、クレタ島に居住して、一年有余の期間に蓄えたドラクマ銀貨の量が詳しく書き記してある。
 2枚目の木板には、都市国家建設に引き継ぐドラクマ銀貨の量と各事業部が得た集散所の木札の量が詳しく書き記してある。
 3枚目の木板には、発足するポリスの初年度の財務計画が書かれている。
 二人は話し合う、
 『おう、イリオネス、お前、よくぞここまでやってくれた。1枚目の木板だが、俺がもらっておいていいな。そこでだが、ポリスに引き継ぐ財務及びここに書いてあるポリスの初年度の財務計画について意見交換をする』
 『はい、解りました』
 『この2枚目に書かれている引き継ぐ財貨の量だが、少し少ないように思うがどうだ?』
 『私の考えでは、この財貨の量でも多いと考えています。3枚目の財務計画に書き記したように集散所より、引き渡した船舶の未収金が過分に存在しています。それで充分に有り余る財務の金額であると算段しています』
 『そうかそれなら、充分であると考えられる。集散所の船舶の未収分だが、でっかいな』
 『そうです。このほかにスダヌス浜頭から、いただく分が加算されます』
 『イリオネス、この件、納得!それで実行してくれ』
 『了解しました。これからも私が統領のそばにいて財務の管理をやっていこうと考えています。よろしいですね』
 『そうであってほしい!俺にお前、お前に俺、ユーレイズミーアップの絆だ!よろしく頼む。お前あっての俺だ』
 『了解しました。統領の気持ち、シッカといただきました』
 二人はhさ為し続ける。
 『なあ~、イリオネス、財務の引継ぎを言い渡す時だが、収入の状態によって業務の動きを察知して、手を打っていくことの説明を忘れないようにな』
 『解りました。その件については、よく説明します。ドックスがこの件を誰にゆだねるのかを聞きます。私としてはクリテスが適任ではないかと考えています。これについてのドックスと事前に打ち合わせたうえで引継ぎをします』
 『イリオネス、お前がやることに抜かりはない。クリテスの採用は安心できる。彼の存在は、ポリスの建設と維持に欠かせない存在だ。必ずうまくいく、そのやり方に大賛成だ!スダヌス浜頭とのつながりもうまくいく、クリテスに自覚と守秘義務について話しておけよ。奴なら理解できるはずだ。正しい己のありかたをだ』
 『解りました』
 イリオネスは、最後のアエネアスの言葉の結びに留意すべきを感じる。二人の間で話し合われた財務の話し合いが終わる。
 『いや、イリオネス、財務のことだがよくやってくれた!お前の才覚手腕は偉大なりだ!まさに経世済民、お前がいれば大安心だ。今後もよろしく頼む』
 『解りました』
 『建国については俺に任せておいてくれ。ただし、舵とりお前だ、頼むぞ』
 この時代、民族といった集団で衣と食が足りさえすれば、働く者らに給料を支払うといった体制がなかったであろうと考えられる。トロイ民族でもそれはない。彼らが生産したものに支払われる財貨の全てが民族の収入として、イリオネスの許に蓄えられていたのである。膨大な収入といえたのではなかろうかと考えられる。
 話し終えた二人は、会所へと歩を向ける、会所にはパリヌルスが待っていた。
 『あっ!統領に軍団長、軍船の改造造作が完了しました。午後には試験試走をやります。乗られますか?』
 『おう、そうか。改造が出来あがったか。よしっ!乗る!』
 『軍船の浜だ待っています』
 二人はパリヌルスの要請に応じた。

 *昨日の投稿で誤字をしました。お詫びして訂正いたします。11行目です。  もだ見ぬ   を  まだ見ぬ  と訂正いたします。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  116

2019-09-23 08:26:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日を終えたアエネアスが宿舎に帰ってくる。
 床についてすでに眠りについているユールスの寝顔に見入る、つぶやく。
 『これが俺の希望か!』
 ユールスの寝顔に穴を穿つように見つめる。
 アエネアスは、息子ユールスに託する希望を心いっぱいに想いうかべる。想いうかべた希望に荒れた海の大波が覆いかぶさってくる、さえぎるもののない海、その海が手を広げてアエネアスの行く手を阻む。
 
 広大なりし海 荒立てる風 
 自然の猛威 アエネアスの行く先をたちふさぐ
 なすすべがない 気がめいる 心がゆれる
 これを超えたい 気がはやる 心がはやる

 もだ見ぬ建国の地 俺には見えている
 日はさんさんと照り輝く 快適な日々の連なり
 鳥さえづりうたう樹木の森 草茂る数ある丘 開けた大地
 ほど遠くない海 海にそそぐ清流流れる地
 素晴らしきかな 風光明媚の地

 アエネアスは床に就く、眠れない、闇を見つめる、幾度となく寝返りをする、やがて眠りがおとずれた。

 朝が明ける、陽の出前の薄明、ユールスを連れて朝行事の浜におもむく、残照の星を数えながら海に身を浸す。
 体が目覚めてくる、意識が覚醒する、モチベートが高まる、鋭なる気を惹起させる、浜にあがる。
 集い来る者らと朝の挨拶を交わす。
 『統領、おはようございます。いい朝です』
 『おう、おはよう。いい朝だ』
 『統領、溌溂の気が満ちていますね!』
 『一矢をもって、事を制するだ』 
 『そうですね!その意気、その力です!今日も感覚を研ぎ澄ませて事に対処します』
 イリオネスが彼らと今日を打ち合わせる、朝行事の浜のミーテングを終える。
 『了解しました』と応えて持ち場へと歩を向けて散っていく。
 彼らを見送るアエネアスとイリオネス、二人が合わせる目は輝いていた。
 会所で朝食を終えた二人は、イリオネスの宿舎へと歩を運ぶ、二人がテーブルをはさんで席に就く、テーブルの上には、数字の書き込まれた木板、新しい木板が10枚余り積み重ねられている、部屋の雰囲気が二人を緊張させる。
 イリオネスは、こまかく書き記した三枚の木板をアエネアスに提示して説明を始めた。

*一昨日の投稿で脱字しました。深くお詫びします。1行目です。 6日  を  6日後 と訂正します。  山田秀雄