テムパキオへ新艇納入に出航する朝が明けようとしている。頃合いは航海薄明の時間といえる。
月はない、頭上に瞬く星の輝きは衰えていない、手探り透かし見る暗さが漂う浜、多人数の人影が動いている、凛とした声が飛んでいる。
出航する二船に積むパンを工房より運び浜の荷積みの適地に集積している、総員90人余りが食する四日間の食糧である。
天空が明るさをきざしてくる、夜が明けてくる、オロンテス、セレストスの顔が見える、納入新艇が姿を見せる、続いて、軍船が姿を現す、漕ぎかたの者らがすでに座について静かに櫂操作をしている。
浜にオキテスが来る、傍らにスダヌスがいる、アエネアスがイリオネスとともに姿を見せる、パリヌルスが、ドックスが来る。アエネアス配下一族が浜に出てくる。
浜の朝が明けた、空には一片の雲もない朝である、星たちの姿はすでにない、陽が昇るまでにはまだ間がある。
陽の昇る地点が北に移動しているとはいうものの、陽がその輝きを見せる地点は浜の東に位置する半島岬の山の端である。
船にパンの積み込みの開始である、浜に集う者らが手を貸す、一族総出で手伝う、オロンテス、セレストス、パン工房の者らのほうが指示に戸惑っている、彼らは海に身を浸す、船まで列をつくる、手渡し手送りで積み込む、荷を船に送り込む、航海中に入用とする食糧のパン、水、幾樽の酒等、荷積みが終わった。
オロンテスがアエネアスらのいる場に来る、オキテスに荷積みの終了を伝える。
『おう、オロンテス、ありがとう。えらい世話をかけた』
『おう、オキテス、前回同様、各袋に日付けとアサ、ヒル、ヨルの札を付けてある。それを目安にして食事してくれ。それから、納入祝い用の堅パンは新艇に荷積みしておいたからな』
『解った。安全航海で行ってくる』
次いで、スダヌスに声をかける。
『おう、スダヌス浜頭、今回も案内役、はなはだご苦労です、よろしく頼みます』
『おう、解っている。任せておけ!』
彼らの会話が終わる。
オキテスが統領と軍団長に出航の辞を述べる。
『オキテス、無事の帰着を待っている』
イリオネスは、オキテスと目を合わせてうなずく、パリヌルスとドックスも目を合わせる。
『行ってきます!』
オキテスとスダヌスが新艇に乗る。ギアスが軍船の舳先に立ち出航を手振りで伝えてくる。
風はない、海は凪いでいる、陽が昇り始める、半島岬の山の端が光り輝く、オキテスが出航の指示をする。
新艇の櫂が海を泡立てる、波を割り始める。次いで、軍船が海面を櫂でかく、泡立つ、静かに進み始める。
浜がどよめく、居並ぶ一同からの大喊声が沸きあがった。
船上の者らが手を振る、浜の者らが一斉に手を振って、離れ行く新艇と軍船を見送った。
生きとし生ける者らの一体感あふれる一時であった。
月はない、頭上に瞬く星の輝きは衰えていない、手探り透かし見る暗さが漂う浜、多人数の人影が動いている、凛とした声が飛んでいる。
出航する二船に積むパンを工房より運び浜の荷積みの適地に集積している、総員90人余りが食する四日間の食糧である。
天空が明るさをきざしてくる、夜が明けてくる、オロンテス、セレストスの顔が見える、納入新艇が姿を見せる、続いて、軍船が姿を現す、漕ぎかたの者らがすでに座について静かに櫂操作をしている。
浜にオキテスが来る、傍らにスダヌスがいる、アエネアスがイリオネスとともに姿を見せる、パリヌルスが、ドックスが来る。アエネアス配下一族が浜に出てくる。
浜の朝が明けた、空には一片の雲もない朝である、星たちの姿はすでにない、陽が昇るまでにはまだ間がある。
陽の昇る地点が北に移動しているとはいうものの、陽がその輝きを見せる地点は浜の東に位置する半島岬の山の端である。
船にパンの積み込みの開始である、浜に集う者らが手を貸す、一族総出で手伝う、オロンテス、セレストス、パン工房の者らのほうが指示に戸惑っている、彼らは海に身を浸す、船まで列をつくる、手渡し手送りで積み込む、荷を船に送り込む、航海中に入用とする食糧のパン、水、幾樽の酒等、荷積みが終わった。
オロンテスがアエネアスらのいる場に来る、オキテスに荷積みの終了を伝える。
『おう、オロンテス、ありがとう。えらい世話をかけた』
『おう、オキテス、前回同様、各袋に日付けとアサ、ヒル、ヨルの札を付けてある。それを目安にして食事してくれ。それから、納入祝い用の堅パンは新艇に荷積みしておいたからな』
『解った。安全航海で行ってくる』
次いで、スダヌスに声をかける。
『おう、スダヌス浜頭、今回も案内役、はなはだご苦労です、よろしく頼みます』
『おう、解っている。任せておけ!』
彼らの会話が終わる。
オキテスが統領と軍団長に出航の辞を述べる。
『オキテス、無事の帰着を待っている』
イリオネスは、オキテスと目を合わせてうなずく、パリヌルスとドックスも目を合わせる。
『行ってきます!』
オキテスとスダヌスが新艇に乗る。ギアスが軍船の舳先に立ち出航を手振りで伝えてくる。
風はない、海は凪いでいる、陽が昇り始める、半島岬の山の端が光り輝く、オキテスが出航の指示をする。
新艇の櫂が海を泡立てる、波を割り始める。次いで、軍船が海面を櫂でかく、泡立つ、静かに進み始める。
浜がどよめく、居並ぶ一同からの大喊声が沸きあがった。
船上の者らが手を振る、浜の者らが一斉に手を振って、離れ行く新艇と軍船を見送った。
生きとし生ける者らの一体感あふれる一時であった。