『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1043

2017-05-31 07:57:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
テムパキオへ新艇納入に出航する朝が明けようとしている。頃合いは航海薄明の時間といえる。
 月はない、頭上に瞬く星の輝きは衰えていない、手探り透かし見る暗さが漂う浜、多人数の人影が動いている、凛とした声が飛んでいる。
 出航する二船に積むパンを工房より運び浜の荷積みの適地に集積している、総員90人余りが食する四日間の食糧である。
 天空が明るさをきざしてくる、夜が明けてくる、オロンテス、セレストスの顔が見える、納入新艇が姿を見せる、続いて、軍船が姿を現す、漕ぎかたの者らがすでに座について静かに櫂操作をしている。
 浜にオキテスが来る、傍らにスダヌスがいる、アエネアスがイリオネスとともに姿を見せる、パリヌルスが、ドックスが来る。アエネアス配下一族が浜に出てくる。
 浜の朝が明けた、空には一片の雲もない朝である、星たちの姿はすでにない、陽が昇るまでにはまだ間がある。
 陽の昇る地点が北に移動しているとはいうものの、陽がその輝きを見せる地点は浜の東に位置する半島岬の山の端である。
 船にパンの積み込みの開始である、浜に集う者らが手を貸す、一族総出で手伝う、オロンテス、セレストス、パン工房の者らのほうが指示に戸惑っている、彼らは海に身を浸す、船まで列をつくる、手渡し手送りで積み込む、荷を船に送り込む、航海中に入用とする食糧のパン、水、幾樽の酒等、荷積みが終わった。
 オロンテスがアエネアスらのいる場に来る、オキテスに荷積みの終了を伝える。
 『おう、オロンテス、ありがとう。えらい世話をかけた』
 『おう、オキテス、前回同様、各袋に日付けとアサ、ヒル、ヨルの札を付けてある。それを目安にして食事してくれ。それから、納入祝い用の堅パンは新艇に荷積みしておいたからな』
 『解った。安全航海で行ってくる』
 次いで、スダヌスに声をかける。
 『おう、スダヌス浜頭、今回も案内役、はなはだご苦労です、よろしく頼みます』
 『おう、解っている。任せておけ!』
 彼らの会話が終わる。
 オキテスが統領と軍団長に出航の辞を述べる。
 『オキテス、無事の帰着を待っている』
 イリオネスは、オキテスと目を合わせてうなずく、パリヌルスとドックスも目を合わせる。 
 『行ってきます!』
 オキテスとスダヌスが新艇に乗る。ギアスが軍船の舳先に立ち出航を手振りで伝えてくる。
 風はない、海は凪いでいる、陽が昇り始める、半島岬の山の端が光り輝く、オキテスが出航の指示をする。
 新艇の櫂が海を泡立てる、波を割り始める。次いで、軍船が海面を櫂でかく、泡立つ、静かに進み始める。
 浜がどよめく、居並ぶ一同からの大喊声が沸きあがった。
 船上の者らが手を振る、浜の者らが一斉に手を振って、離れ行く新艇と軍船を見送った。
 生きとし生ける者らの一体感あふれる一時であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1042

2017-05-30 08:25:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが二枚の木板に描いた作戦図を二人に見せる、二人はのぞき込む、彼の説明は具体的である。
 『図面を見ればわかると思うが、船は陸岸に沿って海上を進んでいる。新艇のほうは、陸岸から6~7スタジオン(1.2キロくらい)くらい離岸距離を保って海上を進んでいる。軍船はというと7~8スタジオン(1.4キロくらい)くらいの海上を進む、新艇との間隔は1スタジオン余り斜めの後方に位置して進む。解るな。船速は双方とも同じくらいの速さだ。そのようなわけで外敵の発見を早くしなければいけない。当方の航走状態から考えて10スタジオンくらいの視界で外敵の発見をする、解るな。これで前方の敵であろうが、後方の敵であろうが、当方が有利に敵と交戦できる。解るな』
 オキテスは、二人と目を合わせてうなずき合う。
 『10スタジオン地点にいる外敵を発見すれば、追ってくる敵、迎える敵、そのどちらも恐れることはない。当方が余裕を持って戦闘隊形をとれる。この作戦要領で敵を制する。解ったな。二枚目の図は、敵を迎撃する海上の戦闘図だ。敵を制するには、敵の早期発見!迎撃態勢、交戦、敵を壊滅する!我々は負けてはならない、ひとりの負傷者も出さない、新艇を傷つけてはならない。いいな!心して敵と戦う』
 二人は、オキテス隊長の心情を心身のすべてを挺して受け取った。
 『隊長の言われること、よく理解しました。意に沿って成果を収めます』
 『おう、しっかりやる!その一語だ』
 オキテスは、外敵に対しての海上における作戦要務を二人に伝えた。
 『では、明朝の出航に備えて準備を整えてくれ』
 二人はオキテスのもとを離れて持ち場へと戻って行く。
 スダヌスは、オキテスに連れだって建造の場に足を向けた。
 『浜頭、聞いていた通り二人に酢酸要務は伝えた。ギアスの腕なら十分にやりこなせると考えている。これで海上における指示でやれる』
 『クレタの西の端に到る海路、西岸の南下の海路には外敵はいないはずです。外敵と遭遇するとすれば南岸を東への海路においてです』
 『ほう、そうか。浜頭、外敵の発見の事、陸岸からの離岸距離の維持について気を配ってほしい。これを頼んでおく』
 『解りました充分に気配りいたします』
 オキテスは、この時点で業務の完遂を終えたと意識した。『事はなったな』であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1041

2017-05-29 07:11:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『では、打ち合わせを続ける。先ほどの打ち合わせ事項に述べた第三の変事に対して、いかに対処するかを話し合う。これは海上において外敵と遭遇したとき、いかにしてこれを撃滅するか、その戦術、戦法について話し合っておく』
 オキテスは鋭い目つきで二人と目を合わせる。
 『海においては、航走することより止めることに方が難しい。それを念頭に意識して、海上にて敵と戦わなければならない。そのようなわけで打ち合わせておく。俺らは、二船でもって海上を進んでいる。我々に襲い掛かってくる敵は、単船か、二船か、三船か、もっと多いか、それは不明である。単船もしくは二船までは単純な戦術でこれを斥けられるが、三船以上になると、簡単にはいかない。これを斥ける確かな戦術、戦法でもって戦わなければならない、解るな。三船以上にならと船速が勝負を決する要となる。そのことを考えると軍船は図体が大きいゆえに小船のような操船は無理というものだ。解るな。そのようなわけで戦術、戦法をもってこれに挑んでいく!解るな』
 『はい、解ります』
 ギアスとテナクスは真剣にオキテスの言葉に耳を傾ける。オキテスは話を継いでいく。
 『ゆえにだ、海上においては索敵に神経を集中して、早い発見を必要とする。次は先手で挑み、必ず勝っということだ。それは戦術、戦法があるからだが、敵にも戦術、戦法があるということだ、侮ってはいけない。しかし、我々のほうがすべての諸点が優れていると自信を待って敵と戦う。俺の戦術、作戦では決して負けないと考えている。俺の場合で考えると、敵が三船くらいまでは負けるとは考えてはいない、四船になると苦戦だな、策を弄するなどそのような悠長なことは言っていられない、戦術、戦い方の基本を有しており自信を持って戦いきる。そのようなわけで、戦術、戦法、海上における作戦ということになる。その説明をする』
 オキテスは、一泊の間をとる。
 『敵を発見する、飛び道具の射程に入るや、即、攻撃を開始する。弓でもって遠隔射撃をする。俺の乗っている新艇は浜に向かって走る、敵を陸上に誘う、軍船は敵船を衝角で破砕すべく衝角攻撃に操船してたちむかい敵船を破砕してこれを沈める。海に漂う敵を射殺する。敵が二船もしくは三船の場合はこのようであろうと想像している。敵が三船の場合は、そのうちの一船がどう出てくるか不明だが浜に誘ってこれを殲滅する。新艇に乗っている漕ぎかたもすべて軍装して乗艇している。これを海上において俺が指揮する。これで海上交戦をやってのける。解ったな。それをこれから、図に描き具体的に説明する』
 オキテスは、戦術、戦法、作戦について具体的に二人に説明した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1040

2017-05-26 09:15:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが説明を始める。
 『俺が言いたいのは、いつ遭遇するかもしれない、また、遭遇しないかもしれない、航海途上における変事だ。四日間にわたる航海、特に前半の二日間における航海についての心配りだ。俺として考えられる変事の発生に気を配っている。一番目は、天候の異変、二番目は、我々が乗っている船に発生する不具合、三番目が外敵から受ける襲撃である。軍船に乗船している70名、また、新艇に乗っている20名も軍装して乗船している。それは三番目の変事に対処するために備えてである。我々に害を与えようとする輩を排除するためである。私の考える戦術、戦法、作戦に従ってこれを実行してもらう。いいな。このあと、ギアス船長、テナクス隊長の三人で詳細を打ち合わせる。納入する新艇を注文主に引き渡すまでは、いかなる事態に遭遇しても新艇に傷をつけてはならない。また、我々に及ぶ害があってはならない。その覚悟で航海を全うする。一同よろしく頼む』、
 『解りました』
 一同から力強い返事が返る。
 『大体以上である。パリヌルス隊長、ほかに何かいっておくことがあるかな?』
 『オキテス隊長、話はよく分かった。これはちょっとした思い付きだが、船大工の一人も同行させればどうかを考えればいい』
 『ほう、そうだな、考えてみる』
 『ほかに質問、または、要望といったものがあれば聞く』
 ギアスが手を上げる。
 『おう、ギアス船長、何かな?』
 『オキテス隊長、これは私からのお願いですが、二人いる操舵担当の一人を軍船のほうに配属願えないでしょうか』
 『おう、そうだな。解った。操舵担当のグッダスを軍船に配属する。これは決定だ!他にないか』
 一同がオキテスの言うところを十分に納得する。彼らは了解したことを声をあげてオキテスに伝えた。
 『よし!これで打ち合わせを終わる。安全航海でもって業務の完遂をする。その成否は一同の双肩にある。以上』
 オキテスは、航海の要領の打ち合わせを終えた。次いでスダヌスに話しかける。
 『スダヌス浜頭、ちょっと訊ねるが、この季節、海上にもやがかかることはあるまいな?』
 『それは、ありません。海上における見通し、視野に、もやがかかることはありません』
 『浜頭も、これから三人で打ち合わせる席に同席してもらう』
 『はい、解りました』
 彼らは少々の間をとる、ギアス、テナクス、スダヌスの三人がオキテスを囲む、座について顔を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1039

2017-05-25 08:07:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが一同に告げる。
 『一同、これにて、スダヌス案内役の航海についての説明は終わる。充分に理解したであろうと察する。各自は担当している持ち場に戻り、明朝の出航の準備を整えてくれ。ギアス船長、テナクス隊長、ゴッカス操船担当、パリヌルス隊長は、二、三、打ち合わせしたいことがあるので、そのままでいてほしい。一同、ご苦労であった』
 場に残った五人は、オキテスを囲んで座をつめる、彼が鋭さの宿った目つきで一同と目を合わせる、緊張度が増す、座がシーンと静まる。
 『新艇納入の業務を遂行する責任担当として、航海について説明しておく。航走は納入する新艇が先行する。ゴッカスいいな!ギアス船長、軍船がこれを見守りながら追うといったカタチで航走する。先行する新艇についてきてほしい。スダヌス浜頭、船の航走に関しての天候、風、海の予想される状況を説明してほしい』
 『この航海の出入り4日間の考えられる天候は、安定した晴れの天気が続くと考えられる。朝、出航した船は西に向かって航走するのだが追い風は期待できない。漕ぎかたの懸命の漕ぎでクレタ島の西の端に向かう。西の端を過ぎて、船は南へと転進する。海上を吹き渡る風がある。この季節に吹く季節風が北北西より来る。海はというとゆるい潮流が南西に向かって流れている。うまくいけば帆張りして航走できるかもしれないということだ。このクレタ島の西岸に沿って南下する距離は、テムパキオまでの約4分の1の距離に相当する。帰り船においてはこれの逆である、大変だがのりきってほしい』
 スダヌスはここまで言って一同と顔を合わせた。彼は一息ついて話し続ける。
 『クレタの西岸の南端を東へ転進すれば、目指す停泊地のペレカノスは間近の地点である。停泊地からテムパキオへは、ゆるい潮の流れ、ほどいい西風が船を押してくれる。航走が追い風を受けて順調であれば、昼を過ぎて一刻半くらいでテムパキオの港に着く。ギアス船長、ここで君に言っておく、帰り船では一日中、船を漕がねばならない、二日目は半日、船を漕ぐ、漕ぎかたが交替して船を漕がなければならない、漕ぎかたの交替計画をしっかり立てておくこと、クレタ島の西岸を走りきるまでは、漕走でのりきらねばならない。心せよだ。以上が航海に関しての留意事項である』
 静まっている座、五人はスダヌスの言葉をうけとめる、オキテスが口を開いた。
 『一同、航海に関する条件、状況について理解してくれたな。次は俺からだが』と言って一同と目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1038

2017-05-24 10:00:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 脱字一か所の訂正をいたします。14行目です。

 『解りました。言われる通り指示に従って航海のぞみます』
 『解りました。言われた通り指示に従って航海にのぞみます』
 
 脱字のお詫びを申し上げ、訂正いたします。
                      山田 秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FRPM TROY   第7章  築砦  1038

2017-05-24 08:21:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスがギアスに声をかける。
 『おう、ギアス、今度は船長役の拝命か。お前なら何でもできる。しかし、今度は軍船なる大船だ。いい風が吹いてくれるように祈ることだな』
 『はい、そのようにします。祈ってできるなんて考えてはいません』
 『この航海の懸念するところは、立案した時間通りに停泊地に着けるかどうかである。二日目は、いい西風が船を押してくれれば、ゆるいとはいえ潮流は東に向かって流れている。目的地のテムパキオには昼が過ぎて一刻半から二刻後には着港する。以上だ。質問があれば聞いてくれ。俺の言っているのは、あくまでも予定だ。計画通りに行けるか、行けないか、その日の天気具合、海の状況にかかっている』
 『スダヌス浜頭、問題は、第一日目の停泊地をどこにするかで、引き渡し日の第二日目の昼過ぎに着くか、夕方に着くかですね』
 『それはそうだが、停泊地に決めているペレカノスはテムパキオへのちょうど中間地点である。これより先の停泊適地は200スタジオンあまり(約40キロ)東になる。我らが航走する速度で二刻(4時間)くらいかかる。海路の都合もあるが第一日目の停泊地に到着するのが遅れることがあっても早まることはないと覚悟の航海になる。第一日目の停泊予定地であるペレカノスは、安心のできる停泊地である。計画海路、計画日程及び停泊地の変更はしない。そのようにオキテス隊長とも打ち合わせ済みである。一同、そのように心得られたい』
 『解りました。言われる通り指示に従って航海のぞみます』
 『航海は、安全航海であるように心がける。これを第一として、俺は、俺に課された案内役を務める。一同よろしくお願いする。なお、復路については、帰り船出航の際に説明する』
 スダヌスは話し終えて一同と目を合わせる。彼は何かを話そうか話すまいかと迷っている、スダヌスが口を開いた。
 『一同に伝えておこうか、おかないかを迷った。話しておく。我々の航海途上において、海で悪さを働く輩のことだ。この海路には、海賊、海の民等、そのような輩が引き起こす変事、騒動は多くはない。それがないということではない。そのような状況であることを伝えておく。軍船を伴走船に引き連れての航海である。安心度の高い航海である』
 スダヌスの案内役としての航海に関する説明は終わった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1037

2017-05-23 08:25:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『解りました。軍船に乗り組む総勢は何人ですか?』
 『軍船に乗り組むのは総勢70人、隊長役を担当するのはテナクス、班長は6名だ。なお、彼らは、航海途中の変事に備えて、一同は軍装している。よろしく頼む』
 『了解しました。明日、朝からその任につきます。それでいいですか?』
 『おう、それでいい。明日、隊の者らとミーテングしてくれ』
 『解りました』
 今日一日が終わろうとしている、太陽が海に身を沈めていく、宵が浜に幕を下ろす、日は暮れていった。
 
 ギアスが建造の場に来る。
 『オキテス隊長、おはようございます』
 『おう、おはよう』
 『ただいまより、納入航海を終えて帰着するまで、オキテス隊長のもとで三番船の船長の任務に就きます。何なりと用命ください』
 『おう、解った。今日の用務は、軍船に乗り組む者らとミーテングをする。お前の紹介と役務については俺が説明する。午後は、スダヌス浜頭と主要なメンバーを招集して、航海日程、海路行程の打ち合わせを行う。それに基づいて明朝の出航要領を打ち合わせる。以上だ。ギアス船長、天候について、お前なりの予想を持っていてくれ』
 『はい、解りました』
 ギアスは軍船に乗り組む全員とミーテングを行う、航海日程、船上における作業用務等の説明をした。
 アレテスの昼便の帰り船でスダヌスが到着する。
 『スダヌス浜頭、ようこそ!先日は世話になりました。今日はご苦労です、早かったですな』
 『いやいや、遅くなりました。恐縮です。準備のほうは進んでいますかな?』
 『納入新艇、伴走船の軍船、乗り組みメンバー等、食糧の件を除いてすべて完了している。このあと、浜頭を囲んで航海日程、海路行程の打ち合わせをやる段取りになっている』
 『解りました。早速やりましょう』
 オキテスがギアスに指示を出す。
 『ギアス船長、関係者一同を招集して打ち合わせの場を作ってくれ』
 スダヌスは、オキテスから大き目の木板を受け取り、テムパキオへの海路を描いて待機した。
 ギアスが関係者一同を招集する、浜の一隅に場を作る。
 オキテス以下13人、パリヌルスを加えて14人が顔をそろえた。
 スダヌスが自己紹介をする、続いて、各自が自己紹介する。
 スダヌスが海路図を描いた木板をかざして、航海日程、海路行程を示し、往路が200キロに及ぶ海路を詳しく説明する。
 スダヌスを除いて、会する一同が初めて航海する海路である。クレタ島西岸及び南岸の潮流、この季節に吹く季節風のことにまで及んで説明した。

『トロイからの落人』  FUGITOVES FROM TROY   第7章  築砦  1036

2017-05-22 07:37:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜に活気があふれている、声が飛び交っている、人が激しく動いている、明後日に新艇の納入航海の出航を控えて多忙を極めていた。
 オキテスは、三番船組の者らでもって、隊長をテナクスに任命し、六名の班長を決め、総勢70名の隊を編成した。
 彼は、隊長テナクスと班長を集めて、航海日程、四日間の役務と作業、そして、その要領について打ち合わせた。
 ギアスは、オキテスより指示のあった、納入新艇に乗り組むメンバーを編成してオキテス隊長に引き継いだ。
 午後においては、納入航海に就役する三番船の整備具合の仕上がりをパリヌルスとともに入念にチエックした。
 『おう、パリヌルス、三番船をいたりつくせりで整備してくれて、ありがとう。これで安心航海ができるというものだ。ここにいるのが隊長のテナクスと六名の班長だ。軍船の操船に関する留意点をを説明してやってくれ。往路では、俺は納入新艇に乗っていて、軍船には乗っていない。彼らの役務と要領については一応、説明してある』
 『解った。それからだな、オキテス。今日の業務を終えたら最終打ち合わせを行っておく』
 『了解。俺はこれから納入新艇の整備具合の点検と引き渡し準備を整える』
 『おう、そうか。ではな』
 オキテスは建造の場へと歩を向ける、パリヌルスは軍船の操船要領をテナクスらに説明する。
 二人は、それぞれにやるべき業務、作業を終える、終業の頃合いにいたって建造の場で顔を合わせた。
 『おう、オキテス、作業は終わったかな?』
 『おう、終わった。万全を自分の目で確かめておかないとな』
 『おう、お前の方は?』
 『俺のほうか、少し気にかかることがある。テナクス隊長のことだが、彼は、隊長の役務は充分に遂行できるが、軍船の操船とならと、少々、心もとないところがある。これは多人数の命を預かっての航海だ。ギアスを連れて行け!その方がお前も安心、俺も安心出来る。天気模様、風を読んだり、海の状態に対応した操船、ギアスは船長としての役務を十分に遂行できる』
 『そうか、やっぱりな?!解った、ギアスを連れていく!俺としての泥縄決定を許せ!』
 『解った。軍船という規模の船を操船するには、それなりの技術を要する。ギアスを呼ぶ』
 パリヌルスは、傍らにいる建造の場の者にギアスを呼びに向かわせる、間をおかずに顔を見せるギアス。
 『おう、ギアス、来たか。話がある。そこに座れ』
 『おう、パリヌルス、お前から彼に話してくれ』
 『おう、ギアス、急きょ決定だ。テムパキオへ行ってくれ』
 『解りました』
 『役務は、軍船の船長役だ。軍船の操船を頼む。以上だ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1035

2017-05-19 07:43:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『あ~あ、ギアス、メンバー構成の中にグッダスを入れておいてくれ。それで操舵担当が2名だ。心強い。以上だ』
 打ち合わせの終了を見計らっていたようにゴッカスが連絡に姿を見せる、ギアスが腰をあげる、ゴッカスとともに艇を揚陸した現場へと向かう。
 艇を前に、波打ち際を背にして、漕ぎかた一同が並んでいる、ギアスが並列している中央あたり、艇に向かって立つ、口を開く。
 『一同!起立!総員38名、安全航海を終え、無事帰着しました。ありがとうございました。礼!』
 ギアスが艇に向かって低頭する、一同がそれに倣う。
 『安全航海を終え、無事帰着しました。ありがとうございました』と唱和しして低頭した。
 彼ら一同が低頭から頭をあげる。
 建造の場の者らが、この光景を注視している、彼らが頭をあげる、建造の場に盛大に拍手が起きる、漕ぎかた一同が彼らに軽く頭をさげ、答礼した。
 ギアスら一同は、艇の揚陸を終え、礼を尽くし、建造の場をあとにした。

 オロンテスの声が聞こえてくる、建造の場に姿を見せる、オキテスの姿を見て駆け寄る。
 『おう、オキテス、無事に帰ったか、よかった!よかった!』
 彼の肩を抱く、互いにじい~っと見つめ合う、オロンテスはオキテスの無事帰着を喜んだ。
 『おう、オロンテス、新艇納入の件、全てうまくいった、喜んでくれ。それから、戦闘艇の受注の件もある。パリヌルスと話していたのだが、テムパキオの新艇引き渡しを終えてのちに詳しく話し合いたいと考えている』
 『おう、そうか。新艇の引き渡し業務がうまくいった、重畳!重畳!集散所のほうも我々の納入航海を気にかけていた。明日、この旨を集散所方へ伝える。彼ら喜ぶぞ』
 『テムノス方への新艇引き渡し業務の完了の件、集散所方へよろしく伝えておいてくれ。テムパキオの新艇の引き渡しを終えてから、俺も集散所に出向く』
 『おう、解った』
 『言い遅れたが、航海中の食糧の件、オロンテス、お前に大感謝だ、ありがとう!今度のテムパキオへは、総勢95人だ、世話をかける』
 『おう、その件、了解している。今度の航海は四日間だな、任せておいてくれ』
 『テムパキオまでは二日間、乗り組みは新艇に25人軍船に70人だ。よろしく頼む。あの日付別の梱包はいい!あれには感心した』
 『アエネアス暦7月19日の早朝に出航だな。了解した』
 オロンテスは建造の場を見渡す、イリオネスの姿が見えないことを確認する。
 彼はイリオネスの宿舎へと歩を向けて場をあとにする。
 ニューキドニアの浜は、今日の終業の頃合いとなろうとしていた。