12月9日付『毎日新聞』 コラム「発信箱」より 松井宏員氏
【「愛国心」
「日本人の口にする愛国心は田舎者のお国自慢に異ならず。その短所欠点はゆめゆめ口外すまじきことなり(中略)此国に生まれしからは嘘でかためて決して真情を吐露すべからず」
永井荷風が昭和18年7月5日の日記「断腸亭日乗」に記した文章だ。「永井荷風という生き方」(集英社新書)からの孫引きだが……。
NIE(教育に新聞を)授業で教育基本法改正案を学んだ中学生たちが、自主的に首相あてに反対の意見を送ったところ、ネットや学校で担任が攻撃される騒ぎになった。荷風先生が戦時中の風潮を皮肉交じりに嘆いたように「短所欠点は口外せず、決して真情を吐露すべからず」世の中になっているのだとしたら、そんな国を愛せるものか。
大体、国が愛国心なんて言い出すと、ろくなことはない。
荷風先生は昭和18年の大みそか、軍のファッショを批判してこう書いている。 「親は四十五才にて先祖伝来の稼業を失ひて職工となり、其子は十六才より学業を捨て職工より兵卒となりて戦地に死し、母は食物なく幼子の養育に苦しむ。国を挙げて各人皆重税の負担に堪えざらむとす」
今の世を荷風先生風に書くと、こんな具合か。
「親はリストラで職を失い、その子は学業を捨ていじめを苦に自ら死し、母は子育ての意欲なく幼子を虐待し苦しめる」
改革の名のもとに重税を強い、格差社会という名の差別社会を生んだ責任は政府にある。そんな日本にしておいて「国を愛せ」とはどの口が言えるのか。愛せる国をつくるのが先ではないか。 (社会部) 】
全く同感である。他に言うことは無い。
社会部の記者がここまで率直に言うかという感想、腹に据えかねているらしい。頑張ってもらいたい。
【「愛国心」
「日本人の口にする愛国心は田舎者のお国自慢に異ならず。その短所欠点はゆめゆめ口外すまじきことなり(中略)此国に生まれしからは嘘でかためて決して真情を吐露すべからず」
永井荷風が昭和18年7月5日の日記「断腸亭日乗」に記した文章だ。「永井荷風という生き方」(集英社新書)からの孫引きだが……。
NIE(教育に新聞を)授業で教育基本法改正案を学んだ中学生たちが、自主的に首相あてに反対の意見を送ったところ、ネットや学校で担任が攻撃される騒ぎになった。荷風先生が戦時中の風潮を皮肉交じりに嘆いたように「短所欠点は口外せず、決して真情を吐露すべからず」世の中になっているのだとしたら、そんな国を愛せるものか。
大体、国が愛国心なんて言い出すと、ろくなことはない。
荷風先生は昭和18年の大みそか、軍のファッショを批判してこう書いている。 「親は四十五才にて先祖伝来の稼業を失ひて職工となり、其子は十六才より学業を捨て職工より兵卒となりて戦地に死し、母は食物なく幼子の養育に苦しむ。国を挙げて各人皆重税の負担に堪えざらむとす」
今の世を荷風先生風に書くと、こんな具合か。
「親はリストラで職を失い、その子は学業を捨ていじめを苦に自ら死し、母は子育ての意欲なく幼子を虐待し苦しめる」
改革の名のもとに重税を強い、格差社会という名の差別社会を生んだ責任は政府にある。そんな日本にしておいて「国を愛せ」とはどの口が言えるのか。愛せる国をつくるのが先ではないか。 (社会部) 】
全く同感である。他に言うことは無い。
社会部の記者がここまで率直に言うかという感想、腹に据えかねているらしい。頑張ってもらいたい。