三流読書人

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ドングリ小屋住人 

めずらしき海蝸牛も海茸もほろびゆくひのなかれといのる

2008年07月11日 17時47分50秒 | これは許せない
 めずらしき海蝸牛も海茸もほろびゆく日のなかれといのる

 この歌ご存じだろうか。記憶にとどめておいて欲しい。

 国営諫早湾干拓事業によって漁業被害を受けたとして、佐賀、長崎、福岡、熊本の有明海沿岸四県の漁業者ら約二千五百人が、湾を閉め切る潮受け堤防の撤去や排水門の常時開門などを国に求めた訴訟の判決が二十七日午前十時から、佐賀地裁(神山隆一裁判長)で言い渡された。
 神山隆一裁判長は諫早湾とその近郊で起きている漁業被害と閉め切りとの因果関係を一部認め、国側に5年間にわたる排水門の開門を命じた。 判決は、諫早湾とその周辺の環境変化と閉め切りの因果関係について「魚類の漁船漁業、アサリ採取・養殖の漁場環境を悪化させている」と認定した。
 「漁民らにこれ以上の立証を求めることは不可能を強いる」とした上で、「因果関係の解明に有用な中・長期開門調査を国が実施しないことは、もはや立証妨害と言っても過言ではない」と国側の姿勢を厳しく指摘。また、「判決を契機に速やかに中・長期開門調査が実施され、適切な施策が講じられることを願ってやまない」と国側に異例の注文を付けた。
 諫干を巡る一連の訴訟で、開門を命じた司法判断は初めて。
 この地裁判決は 公共工事に生活の場を奪われた漁民にとって大きな希望と喜びを与えた。
 しかし、10日、政府はこれを不服として福岡高裁に控訴した。
 漁民を守る立場にある若林正俊農水相は、談話をだし、「判決の通り(塩受け堤防の)排水門を開放することはあできない」と発表。「今後、環境省と調整した上で開門調査のためのアセスメントを行う」と述べた。
 干拓事業と漁業被害の因果関係を調査するためには、長期にわたる開門調査をしなければ意味がない。そのことを判決は「(長期の開門調査をしなかった農水相は)立証妨害であり、信義則に反する」とまで言い切っているにもかかわらず。
 
 冒頭に紹介した歌、

 めづらしき海蝸牛(うみまいまい)も海茸(うみたけ)もほろびゆく日のなかれといのる

 は、有明湾干拓について心配した昭和天皇が歌ったものである。

 天皇もまた有明海が死の海になることを恐れたのである。 
 さらなるたたかいに向けて漁民らの苦闘は始まる。否、漁民のみならず日本人すべて政府の横暴と無策、理不尽な控訴を座視することは許されない。