12月6日付 『毎日新聞』コラム「発信箱」 元村有希子氏
「科学と芸術の再開」
モーツアルトは1791年12月5日、35才で死んだ。その作品は今も多くの人を引きつける。
小柴昌俊・東京大特別栄誉教授が「モーツアルトとアインシュタインはどちらが天才か」について語っていた。
アインシュタインの相対性理論は世界観を変えたが、もし彼がいなかったとしても誰かが同じことを考えついただろう。しかしモーツアルトの旋律は他の誰にも生み出せない。だから「モーツアルトの方が天才だ」という。
芸術作品は絶対不可侵の価値を持つ。一方、科学は成果が試され、否定されたり修正されながら進歩していくから、単純な比較は難しい。当のアインシュタインは「死ぬことはモーツアルトが聴けなくなることさ」という言葉を残している。
近年、科学と芸術の出会いを目指す取り組みが増えてきた。 9回目の「ロレアル色の科学と芸術賞」金賞を受賞した北岡明佳・立命館大学教授は錯覚の研究者だ。「目の錯覚」がなぜ起きるのか、脳科学の視点から解明しながら、原理を応用した錯視デザイン画を描いている。
とぐろを巻いた蛇の模様がぐるぐると回る「蛇の回転」は代表作の一つだ。
考えてみれば科学も芸術も、感動から入ってその背景にある真理を見つめる仕事である。対立的にとらえる必要はないのかもしれない。
レオナルド・ダヴィンチは画家であり、科学者だった。学問が今日ほど細分化されていない時代の天才だ。「枠」にとらわれず科学と芸術の間を自在に行き来する人が増えれば、科学はもっと身近で魅力的になると思う。(環境科学部)
科学が人間を絶望させる時代が続いてきたと思う。
人間に夢をあたえる科学であって欲しい。
そうすれば科学は芸術に近づく、あるいは歩みよる。
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