伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

いわき市議会の議会構成に関して、再度考察してみた

2020年10月16日 | 市議会
 たまたま15日につけていた報道番組の米大統領選の報道で、民主主義は多数決で決めることに意味があるのではなく、決めていく過程が納得できるものが大切で、誰もが納得できる過程で結論を出していくことにこそ力を尽くすべきなのだ、という主旨のコメントを聞いた。

 なるほどである。新議員選出後の議会構成を、誰もが納得できる課程で決めることが大切だったのか、その視点から見てみたいと思う。

 まず、先に書いた論評は次のアドレスのブログだ。



 今回の議会の構成を決めるにあたって残念だったのが、今回の議長、副議長の選出が投票で行われたことだ。法律通りであり、投票という民主的な方法であるので、問題が無いと言えば無いのだが、話し合いで一致点を見いだすことに成功しなかったということを意味することにもなる。その点が残念だったということだ。

 いずれにせよ、投票という形で決着がつけられた。その結果は結果として受け止めなければならないのだろう。ただ、私がかつて関わっていた共産党市議団の対応には疑問が残った。かつても、投票による決着も、指名推選での決着もあった。どのような形で決着がされたにしろ、その際に、考えの基準にしてきたことから外れた対応をしたと思われるからだ。

 もともと、私たちがこれまでに議会構成に関して問題にしてきたのは何だったのか考えて見た。議会が数の論理のみで動かされ、少数会派の議員が議会運営で力を発揮できないという問題だった。少数会派でも、相応しい役割を担うことが可能で、所属会派にかかわらず議会運営に関わり、議員としての役割を発揮できる議会構成を決めることができるようする。そこに一番大きな意味があった。

 おまけに、議会ポストをめぐる競争が激しくなると、後の議会運営に悪影響を残しかねない。議会運営の混乱は市民生活にとっても損失になる。地方自治法では、議長等は投票によって選出することになっているが、投票とすることによって、背後で多数派獲得に向けた競争が激しくなりかねない。従って、合理的な根拠に基づく選出方法で合意できるなら、指名推選の方法で選出した方が良い。そんな事情もあった。

 だからこそ、今回の議長・副議長の選出に、共産党としてどういう対応をするかが議会の中での会派の存在価値を推し量る物差しになるものとなった。共産党はより慎重に対応することが求められただろう。

 ところが、その対応には疑問しか湧いてこない。

 第1に、議長・副議長を選出する臨時議会が開かれる当日の朝に、突然、議長候補者、副議長候補者との協定締結を言い出したとされていることだ。

聞いたところによると、臨時議会当日の朝、共産党市議団が志帥会に「協定を結ぶなら議長選出に協力する」と申し出、「検討の時間が必要」と断られると、独自候補を立てたという。

おまけに、副議長については、「第2会派が原則だが、第2会派が出さないならば第3会派」と主張して、第3会派の副議長候補に協定を持ち込み、これが了承されたと支持を表明したという。

 実際の投票行動は掌握していないが、投票行動について様々な声を拾ってみると、ほぼ、このような投票行動がとられたと考えて良いようだ。

 あまりにも無責任な対応ではないだろうか。ここには、協定について相手方にまともに検討してもらうという姿勢を見いだすことができない上、何らかの結論ありきで、協定を持ち出したのではないかという疑惑まで浮かび上がってくるのだ。

まず、議会を構成するためのルール作りは、臨時議会の10日前に第1回目が開かれた拡大各派代表者会議で協議が始まっている。各派によるロビー活動はそれ以前から行われているだろう。

こうした事情を加味すれば、遅くとも10日前には協定の協議を求めて具体的な働きかけを始めることができたはずである。にもかかわらず何のアクションも起こさなかった。そして、当日の朝になって突然、協定を言い出した。何をしていたのだろうか。こうした行動をとるところには、後の議会の民主的運営に責任を果たそうという姿勢をみじんも感じることが出来ない。

第2に、議長は第1会派、副議長は第2会派というルールと協定の関係をどう考えるかという点だ。

まず、大前提である議長は第1、副議長は第2というルールはどういうものだろう。

このルール作りは、選挙後の議会構成をする際に、ポスト確保のための多数派工作で会派間の溝を深くして、後の議会運営にしこりが残らないようにするために行われる。先に述べたように、議会運営の混乱は市民の利益に反することになる。このため、一定の合理的根拠によるポスト配分を機械的に進め、無用な混乱を生み出さないようにすることが目的となる

さらに、第1会派、第2会派のルールは、会派の人数に根拠を置いている。会派の構成人数には、その背後に市民の支持動向が一定反映されている。従って、このルールは直近の選挙による市民の支持動向を議長、副議長の選出に反映させようとするものとも考えられる。

その時に、第2が出さないなら第3会派だという考えを持ち込んだことの意味はどこにあるのだろう。

そもそも第1会派、第2会派とすることはなぜか。議長を務める議員は採決に加わらないことから、人数が多い会派から議長・副議長をだすことが、採決に対する影響を最小にできる等様々な理由が考えられる。しかし、最も大きい動機は、議会内で占める構成人数にふさわしく議会の民主的運営に力を尽くすことを期待してのものと考えられる。

 議員一人ひとりにその責任があることは論を待たないが、最終的には大会派の意見が議会の多数を占める現実を考えれば、それらの会派にふさわしい責任を期待することは当然ともいえる。

仮に、第2が出さないなら第3とする考え方を持ち込むならば、第3が出さないなら第4、第4が出さないなら第5としても構わないという考え方を否定できなくなる。つまり議長、副議長は、その規模にかかわらずどの会派から出しても良いという考え方となってしまう。

となれば、議長、副議長選出で第1会派、第2会派とルールを決めることに、意味を見いだせなくなってしまう。どの会派でもいいという決め方になる結果、多数派獲得競争で多数を握ったところが、議長、副議長の候補を出せばよいという事になる。候補者を出さない会派は、多数派獲得競争で浮上した候補者に投票することによって、多数派工作の結果を追認することになってしまう。第2が出さないなら第3という独特のルールは、一定の合理的根拠を持ったルールを作ろうとする努力を破壊してしまうのではないだろうか。ここに一つ目の問題がある。

 会派の規模を考慮したルール作りは、最大会派、2番目の会派を対象にする点にこそ意味があることを知るべきではないか。

今回の場合は、第1会派が議長、第2会派が副議長というルール作りは行われず、いわば第1会派連合と第2会派連合という形で、多数派獲得が競われていたと見られる。第1会派連合は、第1会派から議長候補を、第5会派から副議長候補を出している。第2会派連合は、第2会派から議長候補を、第3会派から副議長候補を出している。この役職の配分を軸に多数派獲得競争が行われたことになる。

 この結果、議長の投票では、
大峰議員(志帥会・第1会派)が19票、
赤津議員(一世会・第2会派)が16票、
菅野議員(共産党・第6会派)が2票で、
多数を第1会派連合が抑えた。

 副議長の投票では、
佐藤議員(創世会・第3会派)が18票、
安田議員(つつじの会・第5会派)が17票、
無効が2票となった。

 立候補の動向に見られるように、第2会派は議長をとりたかったようだ。結果、多数派獲得が競われ、投票に至ったと見られる。共産党の第2会派が出さないなら、第3の主張は、結果として第2会派連合を支援する形で多数派獲得の競争を追認するものとなったことは間違いない。

共産党議員団が、かつて全ての会派が議会運営に責任を果たすために、その規模に応じて必要な役職を務めるよう求めてきた主張――別の言い方をするなら議会運営から少数会派が排除されない議会構成の求めて来たルール作りの主張は、今回の独特なルールの主張によって自らで葬り去る結果になった。この独特のルールは、今後、第1、第2という合理的な根拠を持ったルールを主張することの足かせになることは間違いない。仮に今後、以前と同じ主張をしようとするとするなら、第2が出さないなら第3とした主張が誤りだったことを各会派に説明し、撤回する必要が生じる。しかし、私が離党に至った問題で、いまだにきちんと反省できない人たちが行ったことである。この場面でも真摯に反省しながら前向きに進むことは難しいだろうと思う。

2つ目の問題は、第1、第2会派のルールと協定の関係だ。
先に書いたように第1、第2のルールは、会派所属議員数を根拠にした議長、副議長の選出方法となる。この方法による選出の前提は、それぞれに該当する会派が推薦する議長、副議長候補を無条件に支持するというものでなければならない。推薦される候補者に条件を付けることが前提になるなら、そもそもこのような大ざっぱな決め方はできない。もし、無条件で支持できないのであれば、第1、第2というルールは拒否し、別のルールを提案するか、あるいは、法律通りに投票による選出をするしかない。

実際、4年前の議会構成を検討する際に、共産党市議団としては、第1、第2のルールを主張し、それぞれが推薦する候補者を無条件で支持することにしていた。第1会派からは、第2会派が推薦する副議長候補が過去において「監査委員となった議員は議会で発言しない」旨の発言をしてきたこと等から、第2会派の人選の可否を問われた。当会派としては、直近の選挙で市民に支持されて当選した議員であり、議長、副議長選挙でその市民の支持を排除することはできないとの観点から、第1、第2会派が推薦する候補者を無条件で支持する旨の対応をとろうとしていた。

現実には、副議長候補となる議員が、議会構成のルールを話し合う会議に出席し「監査委員は発言しない」旨を再度発言した。私は、その場で発言の撤回を求めたが口をつぐんでしまった。この候補が持っている、議員活動に制限を加えるのが当然という持論が現在進行形の問題になってしまったのだ。

この特別の事情が生じたため、共産党議員団としては副議長候補の差し替えを第2会派に要求した。しかし、この要求には答えがなかった。このため、やむなく本会議では会派独自の候補者に投票した。議長は第1会派、副議長は第2会派とする主張から外れた行動をとったのは、あくまでも特殊な事情によるものだ。

同時に、協定を締結する意味も理解しておく必要がある。
議長、副議長選出に関わる協定は、会派以外の者に投票する合理的根拠を据えるために必要なものとなる。それはとりもなおさず、議会運営に会派としての責任を果たすために必要な行為となる。

先程第1、第2のルールは、それぞれの推薦候補を無条件に支持することが前提になると書いた。協定を支持の前提とすることは、無条件な支持とは別次元の問題となる。この2つを同時に主張するのは矛盾すると言わざるをえないのだ。

第1会派から議長を出すべきだから協定が必要だ。
第2会派が出さないなら、第3会派から副議長をだすべきだから協定が必要だ。
この主張を突きつけられた会派は、どう考えただろうか。筋が通っているようで、実は筋が通らないこの主張は、相手側を混乱させるばかりになる。真意を推し量ることができない当該会派は、共産党議員団に対する信頼感を崩壊させたのではないだろうか。実際に、共産党も何を考えているのか分からないという、他会派議員の声を聞いた。

今回の状況下で第1、第2というルールを主張し、ルールが確立できなかったもとでもこの主張を貫くとするならば、共産党議員団としてとり得た行動は一つしかない。第1会派が出す議長候補者に無条件に投票し、第2会派が候補者出さないならば、共産党独自の副議長候補者に投票するという行動だ。

仮に、今回の状況下で第1、第2のルールを大切にするという考えを踏まえて、協定の締結を持ち出すためにありうる主張としては、
「今回、議長、副議長選出で投票以外のルールが合意できなかったもとではあるが、共産党としては第1会派の議長候補、第2会派の副議長候補というルールを大切にしたいの。しかし、合意されたルールがないもとであるので、それぞれの会派が出す候補者と協定を結んだ上で投票したい」
しかないと思う。

今回のように投票以外のルールを作ることができなかった現実を踏まえて、それぞれの会派が多数派獲得に向けて行動をしているもとで、協定締結を投票の前提とするならば別の対応になるだろう。

今回のケースでは、議長、副議長に、それぞれ2名ずつの候補者がいた。それぞれの候補者と協議し、より良い協定を結べる候補者を支持し、投票するだけである。第1、第2から議長、副議長を選出するなどという考え方を持ち出す必要は全くない。

 第1会派から議長、第2会派が出さないなら副議長は第3会派から出して、それぞれと協定を結ぶ。この共産党市議団の主張の道理はいったいどこにあるのだろう。私にはさっぱり分からない。

 共産党の場合、その思いやめざすものがどれほど高尚であろうと、残念ながら少数派に止まっている。いわき市議会においても定数40のもとで5議席の市議団が約12%の議席占有、定数37のもとでの4議席は約11%となるし、今回は2人の候補しか出せず、議席占有は5%程度に止まっている。

こうした状況のもとで共産党市議団が、実際の決定事項に影響をもたらすためには、少数であっても、その主張と理由に道理があって、他の会派が反対することをためらうという状況を作り出すことが必要だと思う。

 ところが、今回の議長選等においての共産党議員団の役割は、道理的にも、道義的にも、信頼できるようなものではない。

共産党の会派は2人しかおらず、交渉会派からも外れてしまった。このように、議会への関与力が弱くなっている上に、他の会派の信頼も崩れるとなれば、今後、会派としての影響力を行使することは難しいものになるだろう。共産党というか、おそらく地区専従者等の価値観だけを前面に押し立てた自己満足的な議会活動はできるだろう。しかし、他の会派と共闘して市民の利益になる議会活動を進めることはできないのではないかと大いに危惧を覚える。

 新しい任期の中で、共産党議員団がとった対応は、疑問符がともなうものだった。任期はこれから4年。今後、何か違ったアプローチがあるのかもしれない。さて、これからどんな対応をするのか。他の党派の動向も含め、注意深く見守っていきたい。


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