■討論対象の議案は8件の議案と1件の請願
議会最終日、4常任委員会と2決算委員会の委員長報告の後、採決に先立ち討論が行われた。
討論には7人が立った。議案から最も遠い討論から、すなわち反対件数が多い順に、反対討論と賛成討論が交互に行われる。
討論に取り上げられたのは以下の8件の議案と請願1件。
議案第7号 いわき市公衆浴場条例の改正について[みゆきの湯の用途廃止]
議案第45号 いわき市議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例の改正について[期末手当の年間0.1月引き上げ]
議案第46号 いわき市長等の給与及び旅費に関する条例等の改正について[期末手当の年間0.1月引き上げ]
議案第47号 令和6年度いわき市一般会計補正予算(第6号)[議員及び特別職の期末手当の引き上げ分の予算措置が含まれる]
議案第55号 令和6年度いわき市水道事業会計補正予算(第2号)[特別職の期末手当の引き上げ分の予算措置が含まれる]
議案第57号 令和6年度いわき市病院事業会計補正予算(第2号)[特別職の期末手当の引き上げ分の予算措置が含まれる]
継続議案第1号 令和5年度いわき市一般会計歳入歳出決算の認定について
継続議案第2号 令和5年度いわき市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定について
請願第1号 令和7年3月31日付で「みゆきの湯」を廃止とする「議案第7号いわき市公衆浴場条例の改正について」の取り下げを求める請願
■討論者の論点
討論を発言順に見ていく。
1番目が共産党。上記8件の議案に反対(決算に関しては「不認定」という)、請願は採択すべきとの討論。議案7号と請願1号は、みゆきの湯の年度末での用途廃止は住民の理解がないなどと議案に反対、請願は採択を主張。人事院勧告を受けた給与等の引き上げに関する議案45、46、47、55、57号は、議員と特別職について期末手当の引き上げと関連予算が計上されており、市民の理解が得られないと反対。また継続1号と2号について、一般会計決算は個人番号関連や自衛隊入隊者の激励会の決算が含まれ、国保特会決算は国保税値上げ(討論者は「引き下げ」と読み違えていたが)が反映しているとして不認定とした。
2番目の政風会は以上の議案について賛成・認定、請願を不認定とする討論をした。
3番目、創世会は反対討論。議案第7号と請願は先の反対討論と同様。特別職、議員の期末手当引き上げに関する議案45号、46号に反対。継続1号は個人番号などの決算、国保特会は国保税値上げ分の反映で不認定とした。
4番目、日本維新の会(1人会派)は反対討論。議案第7号反対と請願採択は先の反対討論とほぼ同様。議案第45号(議員の期末手当引き上げ)とその関連予算を補正した議案第47号に反対した。
5番目に正論(1人会派)が賛成討論。議案7号を原案通り可決し、請願は不採択とする立場から討論した。討論の趣旨は、湯本温泉の客数が減少しており消滅の危機にあるという危機感の共有が必要で、土地区画整理事業はにぎわいを取り戻すラストチャンスととらえ留事が必要で、事業を短期間で実施することが地元の商店等の利益にもなるし、事業開始時期を1年延期し何度も説明会を開催するなど地元の理解醸成に努めてきた。事業の認可前で廃止時期が伝わらなかったこともあったが、利害関係者にそれが分かるように示す必要があり、情報発信のあり方を検証し、今後事業を進める上で留意すべきという内容だった。
6番目が真政会で、議案第7号に賛成し、請願は不採択の立場で討論した。その趣旨は、先の正論とほぼ同じだったかな。
そして7番目が私。私は落選後のこの4年間は市井の人の1人として生活してきた。しかし、共産党議員団の事務局から始まり市議会議員として活動した27年程、その期間ずーといわき市政をウオッチしてきた。見えていないところはいっぱいあったのだろうけれど、その間の経験を踏まえながら討論した。
■討論全文
反対したのは議案第7号で、請願については採択すべきとの立場からの討論だった。以下が私の討論内容。
議案第7号に反対し請願第1号の採択を求める討論
7番、いわき市議会拓く会の伊藤浩之です。
私の経験では、たぶん最多となる7番目の討論となりますが、まずは、私の討論に賛同していただけるようお願いして、以下発言に移ります。
私は議案第7号「公衆浴場条例の改正について」に反対し、
関連する請願第1号、令和7年3 月3 1日付で「みゆきの湯」を廃止とする「議案第7 号いわき市公衆浴場条例の改正について」の取り下げを求める請願書」を採択すべきとする立場から討論いたします。
議案第7号は、JRいわき湯本駅前にある「みゆきの湯」を来年3月31日に廃止するにあたり、本条例から「みゆきの湯」の文言を削除するなど所要の改正をするものです。一方、湯本一番町(ちょう)商店会及び湯本駅前通り商店会から提出された請願第1号は、議案第7号の取り下げを求め、開発への影響が出ないような時期までみゆきの湯の営業を継続させることを求める内容です。
まず前提として、私は今議会に提出された議案第7号に関連する湯本駅周辺土地区画整理事業の前提となる常磐地区市街地再生整備基本計画について、反対する立場ではありません。私は、基本計画が公表された際、この時は議員ではありませんでしたが、この計画をどう考えるかをある方に問われその内容を拝見しました。計画に盛り込まれた構想にそれぞれの目的やその理由、策定に携わった地元住民のみなさんのお考えを読み取ることができ、その考え方もありうると受け止めたことから、計画そのものは前向きにとらえています。
その私が本条例改正案に関して決定的な疑問を持ったのは、先に行われた一般質問でした。私は質問を聞くまでは本案への賛否で迷いをもっていました。本案の説明等から、地域あるいは利用者との意見交換はどうなっているのだろうか、合意は得られているのだろうか、という点に、もやもやした感覚を持っていたからでした。
しかし、その一般質問で、迷いはなくなりました。
この質問では、みゆきの湯の廃止に対して地元の方々から、知らなかったなど驚きの声が上がっていることが紹介されていました。とすると、みゆきの湯廃止の方向性で一致する十分な周知、意見交換が地元のみなさんとされていないことになります。
私は、本案に関しては、その点に最大の問題があると考えています。
そこでどのような周知や意見交換が図られてきたのかを振り返ってみたいと思います。
本会議での執行部の答弁では、2023年度、令和5年度以降、市温泉事業等検討協議会や湯本駅周辺のまちづくりに関する市民説明会などで、利用者が多い地域住民に説明を行い、意見交換を重ねていたとしました。また、総務常任委員会では、住民説明会が2日間にわたって4回開催され、のべ約90人が参加したとの答弁があったと聞いています。
しかし、これらの説明会は、あくまで湯本駅前再開発全般の説明会であって、みゆきの湯の本年度末での廃止という本条例の主題を掲げたものではないようです。このような場での説明が地域住民や利用者への周知を不十分なものとしてきたことは、提出された請願が裏付けています。
請願には、みゆきの湯は駅前再開発事業により「いつかは取り壊されてしまう」 との考えはあったものの、このような突然の廃止には驚きを隠せませんという、商店会のみなさんの思いが記されています。ここには、みゆきの湯の廃止を提案する以前の執行部の取り組みの重要性が浮き彫りにされています。
私は、かつて、このような取り組みの重要性を痛感する経験をしています。
上の湯の営業時間を2時間短縮する議案が全会一致で可決された時のことです。この時、私はとある利用者からおしかりの意見をいただきました。
当時を振り返り思い出してみると、この時間短縮が提案された背景に長い営業時間が職員の確保を困難にしているなどの事情もあり、私はやむをえないものと判断をしたと記憶しております。しかし利用者は、暮らしにもたらす安らぎあるいは潤い、また利用者同士の交流など、温泉利用が日々の暮らしにもたらす好ましい影響が大きいことから、その利便性が失われることへの不満を持っていました。それだけに、利用者や地域住民の信頼を損なわずに利用を継続していただく、また利用者に寄り添うことで魅力を高め利用者拡大を図る、こうしたことを具現化していくためにも、地域住民や、利用者に幅広く周知し、意見交換をしながら対話を重ね、基本的な理解の広がりをもって時間短縮に踏み切るという姿勢が行政には強く求められていたという思いを強くし、また自分自身の反省ともしたところでした。
翻って今回のみゆきの湯廃止提案に至る経過をみると、請願には、みゆきの湯はいつかなくなるという地域のみなさんの一般的な理解が見られます。しかし、一方で肝心の本年度末の廃止が利用者や地域住民のみなさんに分け入って周知されず、その意見を十分に聞くことがないままに提案されてしまっていることが浮き彫りになっています。地域以外の利用者のみなさんのことを考えれば、一般的な理解でさえされているのかどうか、非常に疑わしい状況と言わざるをえません。
本案の問題はここにあります。
説明する機会は、本市が土地区画整理事業を都市計画として決定した段階など、みゆきの湯廃止が、その時期も含めてより具体的になっていく過程で、何度もあったはずです。それが実行されていないことが残念でなりません。
加えて、私には、こうして提案された議案の可決が、今後に何をもたらすのかの点での懸念も浮かんでいます。
私は市議選で当選させていただいた後に、湯本に住む方とお話をする機会がありました。この方は再開発事業をどう思いますかと私に問いながら、支所等公共施設の移転に頼った地域の賑わいづくりが成功した事例を聞いたことがないと、土地区画整理事業の内容に疑問を呈していらっしゃいました。
繰り返しになりますが、私は基本計画に反対する立場ではありません。
しかし、土地区画整理事業に対して地元にこういう異論がある現状を考えるに、この事業の成功、ひいては常磐地区市街地再生整備基本計画を具現化しまちの賑わいに結び付けていくためには、地域住民のみなさんと意見交換を積み上げながら、その方向性を共有していくためのアプローチがさらに厚く必要ではないのか。提出された請願を拝見しながらそのような思いを深めています。
「いつかは廃止」と理解しながら、今回、多くの地域住民から見れば突然のみゆきの湯廃止がこのままで進んでしまうならば、一定の地域住民のみなさんに禍根を残し、今後に悪影響さえ及ぼしてしまうのではないか。そういう懸念さえ覚えます。
報道を見ると、レジオネラ菌が検出されてみゆきの湯が臨時休業になった際、お店にくる人が目に見えて減ったという地元からの証言が紹介されています。みゆきの湯の廃止によって、人の行き交いも減少し、商店を営む各店の売り上げも減少することは間違いないという請願の指摘は、こうした実際の体験を踏まえたものに違いありません。こうした不安をなくして事業を継続するためにも、行政側にも、いっしょに考え対応していくことが求められているのではないでしょうか。
土地区画整理事業の前提となる市街地再生整備基本計画にはにぎわい再生事業として空き店舗の活用などが描かれています。仮にみゆきの湯廃止をはじめ土地区画整理事業の影響を受け、商店街の商店や事業者が廃業する事態が発生し空き店舗が増えてしまえば、もちろん、そうなることを願っているわけではありませんが、万が一、万が一にそういう事態が発生すれば、この基本計画の目的達成への逆噴射という結果をもたらすことになりかねません。意欲をもって前向きに進もうという関連商店、事業者に向き合い、この意欲を支えるために行政としてしっかり対応していくことが求められていると思います。
以上のようなことをから、現時点での年度末でのみゆきの湯廃止を含んだ本案を可決せずに、まずは請願者をはじめ住民のみなさん、利用者のみなさんへの十分な説明と意見交換をはかる取り組みと努力を重ねて、住民、利用者のみなさんのおおむねの理解を得ながら前にすすめていくことを、市議会として執行部に求めていく必要があります。また、こうした進め方をすることが、今後の基本計画の具現化をすすめるにあたって好影響を与える、私はそのように考えています。
以上の理由から私は議案第7号に反対し、請願第1号を採択すべきと考えます。
みなさんのご賛同を重ねて心からお願いし、討論とさせていただきます。
要約すれば、住民参加の下に策定された常磐地区市街地再生整備基本計画を前向きに捉えており、その計画に位置づけられた湯本駅周辺土地区画整理事業は理解するものの、その推進のために必要とは言え、基本計画の説明会等の中でみゆきの湯の廃止を説明していたとはいえ今年度末での廃止は説明がされておらず、このため周辺住民が理解していないもとでの議案代7号の用途廃止には反対であり、その議案の取り下げを求める請願を採択すべき、というもの。
賛成の立場からは、みゆきの湯の廃止は各種説明会で何度も説明されており、湯本駅周辺土地区画整理事業の着工が遅れ、事業全体が遅延することになれば請願者も含め権利者(事業用地内に土地等を所有する方々)の不利益になり、市の施設であるみゆきの湯の跡地を事業をすすめるための土場として利用することは合理的な判断であり、計画通りの着工や仮に事業期間を少しでも短くすることが出来れば商店をはじめとした住民の利益になる、とするなどの討論がされた。
討論後に当日体調不良で欠席1人(真正会)と議長を除く35人で採決に付され、議案第7号が賛成多数で可決された。反対は、私(拓く会=1人)、日本維新の会(1人)、創世会(6人)、共産党(3人)の合計11人だった。請願第1号は、原案の議案第7号が可決されたため、みなし不採択となった。
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■7号議案以外は賛成・認定の私の考え方
なお、討論で他の会派が反対・不認定として取り上げた7号議案以外に、私は賛成あるいは認定する立場で臨んだ。
まず、市議会議員及び市長等特別職の期末手当の引き上げに関する議案第45号、議案第46号(これとは別に職員の給与と期末手当に関する条例改正案は全会一致で可決している)、条例の可決を前提として関連予算を措置した補正予算である議案第47号、議案第55号、議案第57号については、公務員の給与改定等に関する人事院や県人事委員会の勧告を踏まえたもので、勧告制度を前提とする職員の期末手当のあり方を踏まえての提案であるためだ。以前所属していた共産党市議団としても同様の考えから賛成してきた。
なお、補正予算案に関しては、条例案に反対した共産党と創世会では対応が分かれている。共産党は補正予算に反対、創世会は賛成をした。
どうしてだろう。考えて見た。
補正予算には職員の給与と期末手当の予算措置が含まれている。仮に補正予算が否決されると、職員の給与や期末手当の改定分も支払うことができなくなってしまう現実の問題が発生する。議員等の期末手当に関しては、条例が否決されれば補正予算で措置した予算を使わなければいい。創世会の補正予算賛成は、こうした事情を考慮したのかな。あくまで推察だが。議員の期末手当改定に反対した維新の会も、関連補正予算に反対した。
決算の認定に関する継続議案第1号と継続議案第2号に関しては、今回認定としたその前提の考え方を紹介したい。
決算は議決された予算の執行に問題がないかどうかを審査し、認定・不認定の評価をするものだ。その効果は、あくまで首長に対する政治的、道義的責任を問うものであり、すでに行われた予算執行の効力には何ら影響しないものと解されている。
以前から決算にどういう姿勢で臨むかの議論があった。
以前会派の長をつとめてきた共産党市議団(後に、私が離党して共産党・市民共同)では、予算を計上した段階で問題ある政策の予算化だとして反対したのだから、その予算執行にも問題ありとして決算を不認定としていた。予算の政策目的に着目した立場だ。
一方、予算への賛否にはこだわらず、いったん議決された予算であることを踏まえて、法令違反や不正な執行などの有無に着目して審査をし、適切な執行がされていれば認定、不適切な執行があれば不認定と認定するという考え方もある。
今回、私は後者の立場から決算を見ることにした。
討論を聞いても、政策目的に着目した立場からの尊んで、不適切な執行があったとする内容からの不認定理由は見当たらなかったので、私自身は認定とする立場で採決に臨んだ。
■一般質問等はできあがり次第アップ
さて、12月定例会に関しては、議案の内容紹介や一般質問などもブログ上で紹介したかったのだが、なかなかまとめることが出来ないできた。
一般質問については、すでにいわき市議会の中継録画で視聴していただける状態になっているが、ブログ上文字でも紹介したい。まとまり次第、後日アップしたいと思う。
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