河童アオミドロの断捨離世界図鑑

ザスドラス博士の弟子の河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

春の予感

2016年02月05日 | ZIZY STARDUST
「みんなには悪いが、おとうちゃんは先に保健所経由で天国に行く
八郎、おまえに、もう一度聞いておくが、
乞食と金持ちはどっちがエライと思てるんや」

「そら乞食や。まずファッションがかっこいいし、住んでる家もレトロやしな。
だいいち、おとうちゃんは、金持ちになりたいくせに、実際に金持ちになったことが無い。
そんなバーチャルな金持ちの話を、おとうちゃんから聞かされても信用できへんし、
おとうちゃんが精一杯努力した結果が今の状態やとしたら、
一生がんばってもずーっと貧乏のままやで。
なんで、その事に気がつかへんねん」

「お、親に対して、な、なにを生意気なことを言うてるねん。
持ってる株も土地も換金したら一億万円になるんやぞ」

「けど、今から保健所で毒殺されたら、その金、使う暇も無いなあ」

「くそっ、この期に及んで、自分の子供にまでバカにされるとは。
じゃあ、七郎、兄貴の七郎は、京大に行って官僚になってくれるんやな」

「いや、僕は、京大なんか行かへんで。
さっき、グヤトーンのエレキギター買うてきてん。
僕はイギリスに行ってビートルズになるねん。」


八田四郎は自分が毒殺されようというのに、息子たちときたら、
どいつもこいつも救いようのないバカばかりだと思った。

今年はいつもより季節の移り変わりが速いのか、
庭の沈丁花がかすかな春の気配を漂わせていた。

八田四郎は保健所の毒まんじゅうが、粒あんで甘ければいいのにな、と思った。