もう、すでに作者は主人公が八田次郎だったか四郎だったかわけがわからなくなっていた。
ダストシュートの底のコンクリートの床にたたきつけられた八田四郎は動かないままだった。
「ウイーーーン、ウイーン、ドナウドナウ、ウイーン」
八田四郎の補助原子炉エンジンが再稼働を始めたのだ。
「けけっ、わてはアンドロイドや。毒饅頭なんかで死ぬわけないがな」
あたりは真っ暗だった、周囲には、前の人々の物と思われる骨が散らばっていた。
暗闇になれてくると、三方向に明るい出口があるのに気づいた。
道案内の看板まで設置されていて、その下にちゃんと係員まで座っていた。
そこは水路のようで小さな舟が波に揺れていた。
「あんたはここで焼かれて灰になるよ、そして、
真っすぐ行くと『斎場』家族とか引き取り手のいる場合はそっちだ。
左に行くと『ホームセンター』高品質の人骨は肥料として高く売れる。
孤独で値打ちの無い骨は右の『無縁仏の集積墓場』に行く。
着ている服は東南アジアに輸出するよ」
「三つに分かれているから『三途の川』というのやな
わてはどこに行けばいいのですか」
「まあ、『無縁仏の集積墓場』だね、でも金しだいじゃ、行き先変更も可能だよ」
「くそっ、死んでからの価値も金しだいなんやな
株券や土地の権利書でもいいですか」
「そりゃ、だめだね、それは生きてる人間にだけ有効なものだ、
ここを渡るには、最低、六文銭は必要だ」
「わてはそんな古い貨幣は持って無いで」
「胸元に手を入れてみろ、あんたの生きた価値分だけの一文銭が入ってるはずだ
音がしないところをみると、あんたの胸はたぶん空っぽだな」
四郎の胸には何も無かった。毎日早起きしたのに三文の得にもならなかった。
つまり生きた価値はゼロだったということだ。
格安人生でもなかった。無の人生だった。
四郎の心はビッグバン以前の宇宙と同じ状態だったのだ。
ホームセンターの前にたこ焼きの屋台が出ているのか、
ほのかなソースの匂いがこの三途の川の渡し場まで流れてきていた。
ダストシュートの底のコンクリートの床にたたきつけられた八田四郎は動かないままだった。
「ウイーーーン、ウイーン、ドナウドナウ、ウイーン」
八田四郎の補助原子炉エンジンが再稼働を始めたのだ。
「けけっ、わてはアンドロイドや。毒饅頭なんかで死ぬわけないがな」
あたりは真っ暗だった、周囲には、前の人々の物と思われる骨が散らばっていた。
暗闇になれてくると、三方向に明るい出口があるのに気づいた。
道案内の看板まで設置されていて、その下にちゃんと係員まで座っていた。
そこは水路のようで小さな舟が波に揺れていた。
「あんたはここで焼かれて灰になるよ、そして、
真っすぐ行くと『斎場』家族とか引き取り手のいる場合はそっちだ。
左に行くと『ホームセンター』高品質の人骨は肥料として高く売れる。
孤独で値打ちの無い骨は右の『無縁仏の集積墓場』に行く。
着ている服は東南アジアに輸出するよ」
「三つに分かれているから『三途の川』というのやな
わてはどこに行けばいいのですか」
「まあ、『無縁仏の集積墓場』だね、でも金しだいじゃ、行き先変更も可能だよ」
「くそっ、死んでからの価値も金しだいなんやな
株券や土地の権利書でもいいですか」
「そりゃ、だめだね、それは生きてる人間にだけ有効なものだ、
ここを渡るには、最低、六文銭は必要だ」
「わてはそんな古い貨幣は持って無いで」
「胸元に手を入れてみろ、あんたの生きた価値分だけの一文銭が入ってるはずだ
音がしないところをみると、あんたの胸はたぶん空っぽだな」
四郎の胸には何も無かった。毎日早起きしたのに三文の得にもならなかった。
つまり生きた価値はゼロだったということだ。
格安人生でもなかった。無の人生だった。
四郎の心はビッグバン以前の宇宙と同じ状態だったのだ。
ホームセンターの前にたこ焼きの屋台が出ているのか、
ほのかなソースの匂いがこの三途の川の渡し場まで流れてきていた。