「俺は誰なんだ、これからどこへ行こうとしてるんだ
なぜ、宇宙の始まりの無が自分の中に存在してるんだ」
「そうだ、大学病院でホルマリン漬け標本になるんだった」
浜口町から長崎大学病院までの60段の年輪のような石段を昇りながら、俺は考えた。
人生に善悪も成功失敗も金持ちも貧乏も無い。
その人生に満足できたかどうかだ。
最後に、きれいなホルマリン標本になれるかどうかなのだ。
納得できたかどうかなのだ。
その事を、八田二郎自身は、
「N得人生」と名付けてみた。
「N徳人生」のほうが人徳が感じられて良いかもしれない。
振り向けば長崎、浦上天主堂が夕陽を受けて赤く輝き、
港のあたりで出会った女達はいつものような胸騒ぎ、
始めチョロンギ、中カッパ、カモメ鳴いても蓋取るな、
稲佐山のロープウェー乗り場も改修されて、
葉加瀬太郎のテーマソングも寂しく響く、夜景がにじむ白内障だった。
「そうだ、ガンジス川行こう」
八田二郎は遠く南シナ海に向けてつぶやいた。
なぜ、宇宙の始まりの無が自分の中に存在してるんだ」
「そうだ、大学病院でホルマリン漬け標本になるんだった」
浜口町から長崎大学病院までの60段の年輪のような石段を昇りながら、俺は考えた。
人生に善悪も成功失敗も金持ちも貧乏も無い。
その人生に満足できたかどうかだ。
最後に、きれいなホルマリン標本になれるかどうかなのだ。
納得できたかどうかなのだ。
その事を、八田二郎自身は、
「N得人生」と名付けてみた。
「N徳人生」のほうが人徳が感じられて良いかもしれない。
振り向けば長崎、浦上天主堂が夕陽を受けて赤く輝き、
港のあたりで出会った女達はいつものような胸騒ぎ、
始めチョロンギ、中カッパ、カモメ鳴いても蓋取るな、
稲佐山のロープウェー乗り場も改修されて、
葉加瀬太郎のテーマソングも寂しく響く、夜景がにじむ白内障だった。
「そうだ、ガンジス川行こう」
八田二郎は遠く南シナ海に向けてつぶやいた。
「ただいまー」
「七郎、どうしたの、血だらけじゃないの」
「は、墓場で、とお、しょお、小学生の群れに襲われたんだよ。
大丈夫だよ。たいしたことないから」
「何言ってるのよ、片目と片手が無くなってるじゃないの
さあ、早く、そのギターをきれいに拭いて、楽器屋に売ってきなさい
もっと大変な事になったのよ」
「えーっつ、僕のケガより大変な事が・・・」
「おとうさんのアンドロイド遺族年金が打ち切りになったのよ。
夢の年金生活は、もう、泡と消えたのよ。
つまり、おとうさんは人間だったってわけ。
今日、ジェームス山のホームセンターに行ったら、
『ウルヴァリンのすべて』っていうイベントをやってて、
骨格標本が展示してあったのよ。それが、猫背で足が短いところとか、
体形がうちのおとうさんにそっくりだったのよ。
それで調べてもらったら、その骨は普通の人間のもので、しかも、
うちのおとうちゃんの骨だったのよ」
「えーっつ、じゃあ、このアンドロイドの目玉は誰なんだ」
「七郎、何をわけわからないことを言ってるの
もう、ビートルズになる夢は捨てて、富岡製糸工場で働きなさい
これからは富国強兵の時代なのよ」
富国強兵の時代には音楽などの芸術は不要とされるのだった。
時代の波にほんろうされ続けた八田一家は途方に暮れていた。
時は2300年の春。時代は大きく移り変わろうとしていた。
「七郎、どうしたの、血だらけじゃないの」
「は、墓場で、とお、しょお、小学生の群れに襲われたんだよ。
大丈夫だよ。たいしたことないから」
「何言ってるのよ、片目と片手が無くなってるじゃないの
さあ、早く、そのギターをきれいに拭いて、楽器屋に売ってきなさい
もっと大変な事になったのよ」
「えーっつ、僕のケガより大変な事が・・・」
「おとうさんのアンドロイド遺族年金が打ち切りになったのよ。
夢の年金生活は、もう、泡と消えたのよ。
つまり、おとうさんは人間だったってわけ。
今日、ジェームス山のホームセンターに行ったら、
『ウルヴァリンのすべて』っていうイベントをやってて、
骨格標本が展示してあったのよ。それが、猫背で足が短いところとか、
体形がうちのおとうさんにそっくりだったのよ。
それで調べてもらったら、その骨は普通の人間のもので、しかも、
うちのおとうちゃんの骨だったのよ」
「えーっつ、じゃあ、このアンドロイドの目玉は誰なんだ」
「七郎、何をわけわからないことを言ってるの
もう、ビートルズになる夢は捨てて、富岡製糸工場で働きなさい
これからは富国強兵の時代なのよ」
富国強兵の時代には音楽などの芸術は不要とされるのだった。
時代の波にほんろうされ続けた八田一家は途方に暮れていた。
時は2300年の春。時代は大きく移り変わろうとしていた。